というわけで、「やってみなければわからないことをやってみたところ、やってみなくてもいいことがわかった」という結果になった今回の企画。それを知れただけでも個人的には満足。なんですが、最後に残りのチャーハンをワサビと一緒に食べてみたところ、
ということが再確認できるという、嬉しい収穫もありました。よろしければお試しあれ!
以前、名作料理漫画『クッキングパパ』に、余ってしまった寿司を炒めてチャーハンにする、というレシピが登場し、WEB上にも「作ってみた!」なんて記事や、実際のレシピがあふれています。
ではその逆。「余ったチャーハンで寿司をにぎる」はどうか? と気になって検索したところ、特に結果はヒットしません。
よし、やってみっか。
そもそもさ、寿司って余る? あんなにめったにありつけないごちそうが、そうそう。むしろチャーハン食べたいなと思ってつい作りすぎ、余らせてしまうことのほうが多くない? つまり、そっちのほうがリアルじゃない? じゃあなぜ誰もやってないんだろう。
実は、この企画を思いついたのには、もうひとつきっかけがありました。
以前とある居酒屋で数人で飲んでいて、お刺身についてきたのがおろしたての「本ワサビ」だった。それがお皿にたっぷりと残っていた。また、誰かが頼んだチャーハンもテーブル上にあって、少しお皿にもらってつまみにしていた。
で、ほら、ワサビって、そのまま舐めるとめちゃくちゃツーンとくるけど、脂の強いネタと合わせるとその刺激がぜんぜんなかったりするじゃないですか。そこで本当に何気なく、油っこいチャーハンと合わさるとどうなんだろう? と興味本位で、一緒に食べてみたんです。
そしたらこれが、予想外の美味しさ! 予想どおりあんまりツンとはこない。けどそんなことはどうでもいい。油っこくて香ばしくてしょぱい米と、爽やかなワサビの風味がものすごく合う! ワサビチャーハン、めちゃくちゃあり! ということがあったんですね。
つまり、「寿司」と「チャーハン」は、ワサビを媒介にしてお互いを自由に行き来できるんじゃないか? 本当はものすごく仲良くできるんじゃないか? と考えたわけです。
それでは始めていきましょう。まずはクッキングパパのレシピを参照に、「寿司チャーハン」を作ってみます。「リアルじゃない」なんて批判しておいて、実際に作ったことがないんじゃあ超ダサいですからね。
スーパーで買ってきたパック寿司を解体し、フライパンでシャリを炒めていきます。なかなかほぐれてくれない酢飯を木べらで崩していると、キッチンにお酢の香りがパッと広がり、「自分は何をやってるんだろう?」という気になってきます。
う、うわぁ~! 心が痛い! ちょっと鮮度が落ちてしまったものならまだしも、これは買ってきたばっかりのお寿司。自分でやり始めた実験なのでしかたないとはいえ、本音はそのまま食べたかった!
あとは、塩コショウ、醤油などで味をつけ、クッキングパパの作中で荒岩係長が「コチュジャンが酢めしの酢を中和してうまいチャーハンができるぞ!!」と言っていたのを信じ、それも素直に加えて、寿司チャーハン、無事完成。
さっそく味見をしてみます。1口、2口。なるほど、こういうものか。
3口、4口。あれ? なんかクセになってくるな。
5口、6口。うわ、これ、むちゃくちゃうまくないか!?
さすが荒岩係長。さすがうえやまとち先生。元が寿司なので酸味は残っているんですが、確かにコチュジャンの風味とマッチしてぜんぜん気にならない。そのほのかな酸味が、どこかチキンライスのような懐かしさも想像させ、普段とは一味違う海鮮チャーハンという感じで、本気で美味しいです。ということはこれ、オムライスにしてもいいような気がする。それもこんど作ってみよう。が、今日は先を急いで「チャーハン寿司」をにぎらなければいけません。
具は刻んだネギと玉子だけ、味つけも塩コショウ醤油のみのシンプルなもの。パラパラっとしていると握りずらそうなので、炊きたてのふっくらとしたお米を使い、油多めも意識して、若干べちゃっとした仕上がりになるように作ってみました。
さてさて、これをシャリ代わりに寿司をにぎっていきましょう。
これが当然のことながら、なかなか難しい。こんなに力いっぱいシャリにぎってる寿司職人、いる? ってくらい、えいやっと力をこめ、ギュッギュッギュッと圧力をかけて、やっとなんとかまとまる程度。冷めきって少し固くなったチャーハンだとまた違うのかな。
そこへ、シャリをくずさないよう慎重に、バターナイフでワサビをとって塗りつけたのが上の状態なんですが、
ということに、何個めかで気がつきました。というか、寿司をにぎる人はみんなそうやってるよね。理にかなってる。今思えば、寿司のにぎりかたくらい先に調べておくべきでした。「チャーハン寿司を作りたい!」という思いつきに浮かれすぎていた。
とまぁ、そんな経緯もありつつ、なんとか形にはなりました。
手前から、タイ、マグロ、エビ、イカ、サーモン。
個人的には、この間違い探しのような違和感たっぷりの写真が撮れた時点で、けっこう満足してしまっています。
うまそうではあるけれども、実際どうか。いよいよ実食。
チャーハンのシャリはやはり通常のものよりも崩れやすく、やむをえず上から醤油をたらして、手でそーっとつかんで口へと運ぶ作戦を採用。
まずはタイ。ぱくり。モグモグモグ……。
うわ~、ええとこれは……「チャハーンと刺身」だ!
美味しいチャーハンと美味しいお刺身のふたつが同時に口中にある状態。決して「チャーハン寿司」というひとつの料理ではない。当然、まずくはない。美味しい。けれども、形状が寿司なので、食べてるとものすご~く酢飯が恋しくなってきます。
感想としてはどのネタも同じで、チャーハン部分が下にくるように食べれば「チャーハンと刺身」。刺身部分が下にくるように食べれば「刺身とチャーハン」。そう感じかたが変わるくらい。最後まで美味しくは食べられましたが、チャーハンが余ったからってわざわざ作る必要はないように思います。
というかそもそも、冒頭で僕、「寿司よりチャーハンが余りがちなんだからこっちのほうがリアル」とか言いましたけど、例えチャーハンが余ってしまったとして、冷蔵庫に寿司ネタがあるという状況がほぼありえないですよね、よく考えてみると。何ひとつリアルじゃなかった。おじさんが想像した若者のリアル、みたいな。
というわけで、「やってみなければわからないことをやってみたところ、やってみなくてもいいことがわかった」という結果になった今回の企画。それを知れただけでも個人的には満足。なんですが、最後に残りのチャーハンをワサビと一緒に食べてみたところ、
ということが再確認できるという、嬉しい収穫もありました。よろしければお試しあれ!
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