特集 2021年4月7日

砂の壁が波で溶けていくのを見る遊び

溶けていく砂の城を眺める遊びです。

僕は千葉県の南の方にある小湊(今は鴨川市と合併した)という港町で生まれ育ったんですが、家の目の前が海だったので小学生のころ(1980年代)は毎日のように海で遊んでいました。

どういう遊びをしていたかというと、砂で城壁を作って、潮が満ちてくるに従って波に洗われて壊れていく様子を眺めたり、時には波に負けないように補修したりするという遊びです。

なんだそりゃ?と思うかもしれませんが、その良さを紹介させてください。

あばよ涙、よろしく勇気、こんにちは松本です。

1976年千葉県鴨川市(内浦)生まれ。システムエンジニアなどやってましたが、2010年にライター兼アプリ作家として自由業化。iPhoneアプリはDIY GPS、速攻乗換案内、立体録音部、Here.info、雨かしら?などを開発しました。著書は「チェーン店B級グルメ メニュー別ガチンコ食べ比べ」「30日間マクドナルド生活」の2冊。買ってくだされ。(動画インタビュー)

前の記事:ふつうのカップヌードル9種類食べ比べ

> 個人サイト keiziweb DIY GPS 速攻乗換案内

まずは潮見表で満ち引きを見る

効率よくこの遊びをするためには、大潮の干潮から城壁を作りはじめる必要があります。完成したら満潮と共に壁が壊れていくのを鑑賞する。

子供の頃は潮の満ち引きを細かくは知らず『今日の放課後は良さそうだ』なんて感じで海に繰り出していました。でも大人になった今は潮見表というものがあることを知っています。しかもスマホのアプリもあります。

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サーフィンをしている元ボスが作った潮見表アプリ。iPhoneはコチラ Androidはコチラ
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アプリを使って大潮の干潮を調べます。なるほど、この日の干潮は12時40分。昼過ぎに出かけて城壁をこさえれば満潮に間に合うでしょう。

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めっちゃ潮引いてる

普段、潮が満ちているときは普通に水中ですが、干潮に来るとしっかり海底が見えています。改めて考えると潮の満ち引きってすごい。この広大な面積の水が消える!そしてまた押し寄せてくる!

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潮干狩りとか水遊びの人がけっこういました。

壁を作るのに適当な場所を決めます。 潮が満ちたときにちゃんと海に沈む場所で、かつ満潮まで十分な時間がありそうな場所がいい。

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ここをキャンプ地とする!(ちがう)

ここでやることにします。

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いざ、築城

それでは城壁を作っていきましょう。城壁って言ってもそんな大げさなものではなく、高さ20cmくらいのものです。アニメーションで一気にご覧ください。

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1時間くらいで作りました。

今回は3重の壁として作りましたが、1枚の壁を分厚く高く作るという戦略もあります。

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当然ですが、内側から作っていきます。

または、地面を嵩上げしてその上に壁を作るとか。どう作るかは自由です。

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内側は小さいけど、外の壁になるほど作る長さが増えて大変です。よく考えて直径を決めましょう。
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だいたい満足したら完成とします。

あとは潮が満ちてくるのを待ちます。

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なんでやりはじめたのかは覚えてない

これをやっていたのは主に小学生の頃。家のファミコンで遊んだり釣りをしたり山に分け入ったりもしていたので、壁作りばかりやっていたわけではありません。その日の気分や潮の満ち引きで何をするか選んでいました。

そもそもなんでこれをやり始めたのかは覚えてないんだけど、砂の城が波の侵食で崩れていくさまが子供心にグッと来たのでしょう。他にも、砂浜に流れこむ川をせき止めたり、ミニ土木的な遊びをしていました。

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潮が満ちてきた

壁の完成から1時間弱、いよいよ潮が満ちて壁に迫ってきたじゃあ~りませんか。タイムラプス動画で一気にご覧くさい。

 

茶色い泡みたいなものが押し寄せてきますが、干潟の満ち潮はこういうのが出るもので、汚いものではありません。東京湾の最奥なので超キレイとは言わないけど、足を入れても嫌じゃない程度にはキレイな海水です。

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ここからが本番なのです

さぁ潮が上がってきた。テンションも上がってきます。人類も思い出します。

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潮が満ちてくると壁の内側に水が湧いてきます。

満ちてくる潮と押し寄せる波。ジワジワ溶ける砂の壁。

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城壁の周りはすっかり水に沈みました。

潮満ち引きのすごさって、これが毎日起きてるってことだと思います。特別なことではなく、自然に海面の高さが数メートル変わる。月の引力ってすごくないですか。

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壁の下がえぐれてきました。

小学生の頃は、ただ見ているだけじゃなくて崩れた壁を補修して満ち潮と波に抗っていました。今はただ溶けるのを見るのみです。これが年齢を重ねるということかもしれません。

ボーッと見ていると、ついに一番外側の壁(進撃の巨人で言うところのウォール・マリア)が崩れました。

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ドワーっと一気に海水が流れ込んでくる。

でもまだ壁は2枚あるから大丈夫。

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まだまだ終わらんよー!

しかしここからの展開は早かった。これが大潮の満潮か…。

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2枚目の壁(つまりウォール・ローゼ)もあっさり陥落。

最後の壁はすこし厚めに作ってあるのでもうちょっと大丈夫。

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文明崩壊後の遺構っぽい良さがあると思うんですがいかがですか。

押し寄せる波によって3枚目の壁(ウォール・シーナ)も陥落しました。

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チーン。

壁の先端に波が達してからここまでわずか7分。1時間掛けて作った壁が7分で溶けました。潮の満ち引きには勝てません。潮、まじヤバい。

タイムラプスでも撮ったので早送りでご覧くさい。

 

さっきまで砂浜だったのに、完全に水没しました。

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7分間で感じる文明の儚さ。

国破れて干潟あり、城春にして水深しですよ。

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7分で遺跡化。

干潟はすっかり海に没し、遠くでは高校生が青春してました。

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制服で海に入るって、さすが東京の高校生はすげぇ。

どうでもいい話ですが、チャーリー浜さんっぽい語尾になっている部分は、砂"浜"と チャーリー浜を掛けたアレです。


アリだな、これ

改めて35年ぶりくらいにやってみましたが、この遊び、アリだなと思いました。当時は素手で砂の城を作ってたし壁の規模もかなり小さかったのですが、大人の力とシャベルがあると短時間でそれなりの壁を作れます。

本文にも書いたように土台を嵩上げするとか1枚の壁を分厚く作るとか根本の設計次第で楽しみ方も変わります。中央に旗を立てて追加補修ありにして、壁の寿命で競うとゲーム性も増します。

どうですか、これ。

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