3人ともデイリーポータルZのパズルだった
米田さんのパズルを組み立てながら、大変まずいことになったと思っていた。なぜなら私のパズルはデイリーポータルZのネタで被っていた上、阿呆な顔をした私の写真だったからだ。米田さんの大作とまったく見合わないのだ。
もう記事に載せないことにしよう。そう思って「いつ完成させてもさせなくてもいい」という旨を伝えた。
しかしその日の夜に完成したパズルの写真が送られてきた。
これから誠実に生きていこうと思った。
卒業写真や赤ちゃんの頃の写真など、思い出の写真をジグソーパズルにして残すサービスがある。ジグソーパズルにすることによって特別感が増し、より大事にできるのだろう。だが思い出の写真でなくともジグソーパズルにしてもいいのではないだろうか。そういう自由が人間には許されているのだ。
私が一人で好きな画像をジグソーパズルにして楽しんでもいいのだが、せっかくなので他の人にも自分なりのジグソーパズルを作ってもらいたい。そう思ったので今回はライターのほりさんと米田さんにご協力いただいた。
事前に各々で好きな画像をジグソーパズルにしてもらい、それを交換して組み立てて楽しもうという算段である。
ジグソーパズルの作成にあたっては手作りキットなどを用いたわけではなく、それはもう素直にインターネット上のサービスに発注した。発注した方が楽だしクオリティも高いのだ。自由なのだ。
お二人には「ジグソーパズルを皆で送り合いたいので、サプライズな画像をジグソーパズルにしてきてください」と伝えている。一体どんなものが出てくるのか楽しみだ。
そう思っていたのだが、
いいと思う。なぜなら自由だから。
聞けば飾るためにのりまですでに買っているという。最初から持って帰る気満々なのだ。組む部分だけ楽しませてもらおう。
まずはそんなほりさんの作ったジグソーパズルを組み立てていきたい。
組み立てにあたってはいくつかルールを設けることとした。
親に向かってなんだその③は、と言われそうなので言い訳をさせてほしい。
今回ジグソーパズルを作るにあたり、ピースをぱっと見ただけでどんな画像か分かっては面白くないと思い、約300ピースと比較的細かめのピース数で発注してもらった。
しかし集まる当日に知ったのだが、300ピースのパズルを完成させるにはだいたい3時間以上かかるというのだ。3つで合わせて9時間以上。撮影にあたってレンタルスペースを借りたのだが、2時間しか取っていないのだ。いきなり9時間と言われても困るのだ。
そのため対策として、画像のおおよそが見えてきたらそこで終わりとしようとなったのだ。言いかえれば空とか地面とか、似たようなピースが続く難しいところを飛ばそうということである。楽しいところだけやろう。甘い部分だけ食べよう。
気を取り直してほりさんのジグソーパズルをやっていこう。
一体どのタイミングで何の画像か分かるのだろうか。楽しみだ。
「完全にネタばれのピースが1つあるので、奥底の方に混ぜてからきました」とほりさん。どうやらこれだけ細かくしても何の画像か分かってしまうピースがあるらしい。すごく気になる。
なんとなく全体的に紺か白のピースが多い。何の画像だろう。
なんだろうなんだろうと言いながらピースを漁っていたところ、何やら文字が書いてあるピースがでてきた。
このピース、重要なんだ。ほりさん曰く画像のメインとなる部分の一部らしい。
しかし文字があるというだけではまだ何も分からない。看板の可能性もあるし、何かのマークということも考えられる。
いくつか組み合わせられそうなピースを集めてみたところ、こんなものも出てきた。
靴ということは人が写っているということである。そしてまわりの紺色のピースは路上だったんだ。
一体誰が写っているんだ。これを読んでいるみなさま方はいかがですか。ひょっとしてもうお分かりですか。
さらに続けて外枠を埋めるなどしていたところ、私がこんなピースを見つけてしまった。
この勢いのある口は!
米田さんも「この口は見覚えがある」と言っている。これ、あの人の口ですよね!?
こうなってしまっては顔や体の部分も探さざるを得ない。もうこの人の正体は目前だ。
そうしてついに「完全にネタばれのピース」を見つけてしまった。
安藤さんだ。しかも両腕をあげている安藤さんだ。
もう外枠なんて知ったことではない。安藤さんを完成させよう。
赤い部分は安藤さんのパンツだったのだ。だから赤いピースは少ししかなかったのか。
今更ながら考えてみれば、完成系を知らずにジグソーパズルを組み立てるのは初めてである。何の画像か分かって、しかも知っている人だと理解した瞬間こんなにもテンションが上がるものなのか。安藤さんはすごい勢いで組み上がっていく。
もちろんピースの分かりやすさの違いはあるが、外枠を組み立てていた時間と比べ物にならない早さで安藤さんが完成した。堂々とした安藤さんの画像だ。
もうこれはジグソーパズル自体も完成と言って過言ではないだろう。そう思いませんか。
残りはほりさんにおうちで組み立ててもらうことにしよう。地面の部分とか。
ちなみにここまでで1時間。まあまあなスピードである。
続いては米田さんのジグソーパズルである。せっかくなのでこちらは私の作ったパズルと交換することにした。
つまりは私が持って帰るパズルである。そう考えるとますますどんな画像かドキドキする。
まずは再び広げてみよう。
さあどんな画像なんだ、というわくわくはある。あるのだが、それ以上に「また最初から組んでいくのか」という気持ちなのだ。賽の河原という言葉がつい頭に浮かんでしまったが、たのしい事をしているのでその慣用句は間違いです。
とはいえそんな弱音を吐いていても仕方ない。どんな画像か確かめるべく組んでいこう。
広げてみてすぐに気づいたのだが、米田さんのパズルは写真ではない。
「準備に時間がかかりました」と米田さん。なんとこのジグソーパズルのために絵を書いてきたというのだ。自作の絵をジグソーパズルにするのはさぞ楽しいことだろう。絵を描けない私にとっては羨ましい限りである。
しかし、絵のパズルとなると難易度は急上昇である。なにせ何が書いてあるのか、どこに何が配置されているのか皆目検討がつかないのだ。これはまいったぞ。
ピースを選り分けながら漁っていくと、なんだか人の手がたくさん見つかってきた。
手が10本ある人間の絵とか、この世にないものが完成形だったら組み立てに時間かかるだろうな。そんな不安をぼやいたところ「そんなことはないです」と米田さんに即座に否定された。
安心した。普通の人間らしい。ということは複数の人の絵が書かれているということか。
私が赤のピースをじっと見つめていると、ほりさんが「これ文字じゃない?」と声を上げた。えっ、どれどれ?
なんとなく「デ」や「ポ」が見える。さらにいえば「リ」っぽいものもあるし、「ー」っぽい直線もある。ははあ、なるほど。アレだ。
そうだ、絶対にそうだ。他にも文字のようなピースがあったので少し組み立ててみたところこうなった。
期せずして安藤さんに続きデイリーポータルZの画像が2連続である。3人の共通項がデイリーポータルZなので、分け隔てなく楽しめるものをチョイスするとこうなるのだろう。これはほりさんと米田さんの優しさなのだ。
デイリーポータルZのイラスト。そう思うとよく分からなかったピースにもなんとなく意味が見えてきた。
どうやらデイリーポータルZ関係の人達の似顔絵が書かれているようだ。編集部の方々だろうか?
この後しばらく試行錯誤してみたのだが、人のパーツが多く思うように組み立てられなかったため、最終手段として米田さんに先導してもらうことにした。
先導するや否やテキパキと人を分けていく米田さん。さすが作者だ。
あっ、編集部の方だけでなく私もいるんだ。ひょっとして米田さん、すごい大作を仕上げてこられました......?
米田さん曰く前々から色んな人の似顔絵を描きたかったが機会がなかったため、ここぞとばかりに描き込んできたらしい。一人だけ労力が違いすぎる。
そしてほぼ組み上がったのがこちら。
すごい。これはもう商品じゃないのか。好きな画像をジグソーパズルにするってこういう形にも成り得るんだ。
ここまで来たら最後まで完成させたいところだが、そろそろ解散しなくてはならなかったためここで完成とした。残りの難しい部分は私の宿題である。
知っている人の写真でも、オリジナルのイラストでもジグソーパズルにすることによって大変楽しめることができた。やはり思い出の写真でなくともジグソーパズルにしてよいのだ。
身近な人と知っている画像で作ってみると盛り上がること請け合いなので、ぜひ気軽に試してみてほしい。
米田さんのパズルを組み立てながら、大変まずいことになったと思っていた。なぜなら私のパズルはデイリーポータルZのネタで被っていた上、阿呆な顔をした私の写真だったからだ。米田さんの大作とまったく見合わないのだ。
もう記事に載せないことにしよう。そう思って「いつ完成させてもさせなくてもいい」という旨を伝えた。
しかしその日の夜に完成したパズルの写真が送られてきた。
これから誠実に生きていこうと思った。
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