隙間は未知数
DPZ読者の皆様に新しい石井公二を見せることができて感無量である。林編集長には最初からこの展開が見えていたのかと思うと、畏怖の念を抱く。
…ただ、元々なんの話しようとしてたんだっけ?
堅牢で逞しく、同時に美しくもある東京タワーやスカイツリー。近くでも遠くから見ても良いのだが、最近新たなタワーの楽しみ方に気づいた。それは「隙間タワー」だ。
東京に生まれ育って45年。東京タワーには数えるくらいしか行ったことがない。しかしごく稀に近くで見ると、毎回新鮮な気持ちで思う。
近くで見るといつも想定よりデカい。だから毎回素朴に「デカいな!」と口にしてしまう。だがあれだけデカくても鉄骨の赤と隙間から見える空の青の対比が美しいので、威圧的どころか優しい印象すら抱く。いや、優しいというより自由。屹立する東京タワーを邪魔できるものなど、何もないのだ。
私は東京で飲食店を営んでいるので、週に一回必ず河岸に仕入れに行く。2018年までは築地場内市場、移転以降は豊洲に通っている。築地場内は大好きな場所だったので、移転してからも更地になっていく様子がなんだか気になる。先日も勝鬨橋から工事の進捗を眺めていた。
なんとなく橋の中央付近まで歩を進めていた時、見えたのである。
近くだと他の何にも邪魔されない東京タワーの圧倒的な存在感も、ちょっと離れてしまえば「その他大勢」に紛れてしまう。それが東京という都市の今なのだ。なんて悲しいんだ…とは意外にもならず、むしろちょっと良いと思った。何故だろう?
勝鬨橋の上を歩き回ってみると、少し位置がずれるだけでも東京タワーは見えない。
このレア感、あるいは、あるべきところにピタッと収まっている気持ち良さ。これはこれで面白い風景だ。私は「隙間タワー」の魅力に目覚めてしまったのだ。
いや、正確に言うと目覚めたのではない。考えてみれば、私は以前から隙間タワーの魅力に気付いていた。
スカイツリー、開業当初は「東京タワーに比べて…」みたいな意見もよく聞いたが、完成までの過程を見られたこともあって個人的にはすっかり愛着を抱いている。そして近くまで行った時の「あ、デカイ!」は、さすがに東京タワーをもしのぐ。
そして私の住んでいる東京の谷根千地域には、スカイツリーを「隙間タワー」として眺められる最高のスポットがあるのだ。
以前からこの場所が好きだった私は、既に隙間タワーの魅力に気付いていたのだ。
きっと東京タワーやスカイツリーを隙間タワーとして楽しめるスポットは、他にもたくさんあるのだろう。
築地場内の跡地には全天候型のドーム球場ができるそうだが、球場や周辺に建つビルの立地や形状によっては勝鬨橋から東京タワーを望めなくなるのかもしれない。そう、隙間タワーはいつなくなってもおかしくない眺めなのだ。全国には無数のタワーが建っている。皆さんも是非、自分だけの隙間タワースポットを探してみて欲しい。
…と、ここまでの内容をある日のDPZ企画会議で提案した。我ながら良い企画だと思った。しかし林編集長から飛び出したのは、意外なひと言だった。
正直、意味が分からなかった。しかしDPZに参加するようになってからの4年間、林編集長のアドバイスに間違いがあっただろうか?いや、ない。
今回ばかりは撮影をお願いした妻に自分でも企画意図が説明できなかった。「林さんがさ、見たいらしいのよ。隙間に挟まった俺をさ」と言うと、妻は「ふ~ん」とだけ返事した。
しかし、どうだろう?色々な隙間に挟まるうち、なんだか利点が見えてきた。東京タワーやスカイツリーと違って、石井公二は近くで見ても堅牢でも、逞しくも、美しくもない。
しかし、隙間に入るとそれが一変する。自分の両サイドに物体があることで、自分がいるべき、立つべき場所がハッキリと分かる。居場所を見つけた人間は強い。自然と自信に溢れたポーズが飛び出してくる。
噴水の写真を撮った時に妻が「私、分かってきたわ」とつぶやいた。分かっちゃった!
隙間産業、スキマバイト、スキマスイッチ。思えばいつだって隙間が時代を動かしてきた。ならばこれからは隙間撮影。写真を撮られるのが苦手だったり、写真映りに自信がない方。どうか騙されたと思って試してみて欲しい。今まで見たことないあなたが、きっとそこにいる。
DPZ読者の皆様に新しい石井公二を見せることができて感無量である。林編集長には最初からこの展開が見えていたのかと思うと、畏怖の念を抱く。
…ただ、元々なんの話しようとしてたんだっけ?
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