特集 2019年8月15日

「主語の大きさ」をくじ引きで決めるとどうなるか

主語をランダムで選んで喋ります。

「主語が大きい」という表現がある。

このあいだ、故郷のお菓子を説明する時に「地元の人は全員好き」と説明したら「全員じゃない むしろそうでもない人の方が多い」とおこられた。ただおいしいと言いたかっただけなのに…。

と、無意識に主語の大きさを変えているらしいのでいっそくじ引きで指定してみたらどうなるかと考えた。実験してみます。

 

 

1990年沖縄生まれ。営業日のお昼休みに(ほぼ)毎日更新する「今日の休憩」というブログを運営しています。

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言えそうな「主語」を洗い出してみる

今回は大小さまざまな「主語」を箱に入れ、引いた言葉を主語として話してみるという実験である。

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「パフェをおごる」というので来た友人の郡司さん。「いつもは『私』か『僕』だけど、主語大きい時…あるかな…?」
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こちらは山宮さん。「『俺』って言っちゃうけど、他の主語意識したことない」という。

 とりあえず、箱に入れる「主語」を洗い出すことにした。

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「『私は』が最小かな?」「いや『沖縄県出身のよざひかるは〜』が最小じゃない?」「最大はじゃあ『宇宙人的には〜』になる?」と言葉の大小を考えつつ書いていく。
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できた。これが「レベル別主語一覧」である。「私は〜」「ひかるは〜」は小さく、「人間的には〜」「男・女は〜」は中間、「万物的には〜」を最大とした。
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そして、できた単語をカードに書いて
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箱に入れてくじ引きにしたら完成である。

 

実験①:まずは主語を隠し、後半で明かしてみる 

くじは作ったがどうなるか全くわからない。

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まず引きます。もう左の人が笑っている。何を引いたのだろう。
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自分も引く。これ結構緊張する!
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「動物」がでた。「動物は〜こう思う」というスタンスで話さなければならない。

トークテーマを「最近の悩み」に決め、最初は無理に主語をねじこまず、自然に会話してみることにした。

3分タイマーをセットして、スタート! 

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郡司「あれかな、お金が悩みかな。もう少し世代として賃金をあげて欲しいとか、社会全体に対して不満があるかも」
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山宮「うーん、立地とか、いまいる周囲の環境が悩みかな。本屋がないとか、コンビニが遠いとか」
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よざ「最近だと天気がおかしいのがつらいかなー。気温が高かったり、寒かったり、突然くる台風とか、異常気象は怖いかも」
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郡司「天気が悩み!?気温とかは悩みじゃないでしょ!」と吹き出してしまう。全員違ったスケールの話が飛び出し、まったく話が噛み合わない。

あまりにわからないので、後半は自分の「主語」を冒頭につけながら喋ることにした。

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よざ:動物 / 郡司:会社員 / 山宮:○○に住んでる山宮 である。
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山宮「やっぱ板橋に住んでる山宮としては、もうちょい住む場所を考えた方がいいんじゃないかなーって悩みを持ってるわけですよ」
郡司「やたら土地の話すると思ったらそういうことか」
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よざ「動物界的には〜暑いかったり環境悪いとしんどいから、犬や猫とかかわいそうだなーって」
山宮「一人だけスケールがでかいから何かと思ったら動物代表だったのか」

ここで3分終了である。 

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山宮「わかった、これ主語が合わないと話がまず噛み合わないんだな」郡司「全然共感できなくなっちゃってびっくりした。すごいこれ」
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よざ「暑くてつらいって言ったときに『そんなの悩みじゃない』って言われて、すっかり動物を代表してる気分になってたから『はぁ!?動物は大変だし!』ってキレそうになった」
山宮「顔がマジじゃん。そんなに突然背負える?」
郡司「わかる!社会全体の会社員のことも浮かんだ!」

すっかり動物代表として悩みを喋ったが、よくよく考えると最近の悩みは「寝つきが悪い」 だと思い出す。

しかし、主語「動物」を背負っただけで、いきなり天候などに関心がいってしまった。主語を変えただけなのに!? 何これ怖いと全員ざわざわする。

 

実験②:話はじめる前に必ず「主語」をつける

隠すとわけがわからなさすぎたので、次は必ず主語をつけてから喋ってみることにした。

テーマは「日常のあるある」だ。それではスタート!

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郡司「現代人としては『いろんな意見が衝突する』っていうあるあるかな。世界の人がいろんな悩みを抱えてるから、何が正しいかとかないんだよね。ぶつかりあうことが、あるあるとも言えるかなあ」
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「主語を現代人にした友人」を初めてみたし、あまりのうるささにびっくりした。「絶対思ってねえだろ」と口論が始まる。あとなぜ顔までうるさくなるのかわからない。
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山宮「まあ、人間としては同じような問題を持ってるかな。地球に住む人間は、それぞれ違うけど、みんながんばって生きてるっていうのがあるある」
郡司「同じぐらいでかいの引いたじゃん。『人間』ね」
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よざ「なんかこの流れで言いづらいんだけど……沖縄県那覇市出身のよざひかる的なあるあるといえば……酸っぱい味の新商品、絶対買っちゃうっていうのはあるなー」
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郡司「スケールちいさ!!!!」山宮「もっとあるだろ!でかいあるあるが!自分の話するな!」なぜか怒られる。なぜだ!

「現代人」「人間」と大きい言葉を主語とする2人はまあまあ話があっている。その後も

山宮「人間としては、1日数回食事するとかもあるある」

郡司「わかる。けど、僕ら現代人は、それ怠りがちなんだよねー」

よざ「沖縄県那覇市出身のよざひかるは『旬のフルーツが食べれる!』とかも嬉しいって思いがちだよ」

と地獄のような会話が続いた。2人は人類のあるあるを、1人は自分のあるあるを喋っているという状態だ。

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「一番中身があることを喋っているのは自分」という自信があるのに「なに自分のこと喋ってんの?」とバカにされる。「人間としては」と言われるともう何も喋れない。

 そうして3分が終わった。

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郡司「現代人としては〜ではじめるだけで、むちゃくちゃ大きいこと言いたくなるんだよな。自分の意見忘れる」
山宮「いやほんとに、いつもは思いつかないことも思いつく」

確かに、私は普段この2人が「地球に住む人間」とかいきなり言わないことを知っている。

なのに主語を変えるだけで、視点がガラッと変わり、いつもは言わないワードが浮かんでくるのだ。

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「別人になれた気分でおもしろい」とその後も続けた。

「大人」を引くと「あのプライバシー流出事件とかは興味深かったね〜」とニュースを喋り出してしまい、「東京都民」を引くと「都会の喧騒をはなれるのはいい」と田舎に対して偉そうになってしまった。

なんだろうこの感覚は。すぐにスイッチが切り替わる、すごい発見である。

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郡司「根本の主語がちがうと全然噛み合わなくてびびった。『え?いまその話してねえ』となっちゃう」「なったなった」
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山宮「俺もう怖いから、主語そろってるか確認してから喋るようにする……じゃないと喧嘩になる」とびびりだす一幕もあった。「主語大事!!!」と全員体で覚えた。

主語の大きさを軽率に変えるとおもしろい

「主語が大きすぎる」はよく指摘として使われるが、揃ってない時に変な空気になることがよくわかった。

あとこれまで意見が合わなかった上司などを思い出し「上司は会社や部署が主語だったんだな」と3人で妙に納得した。なんだかお得な気分である。主語でころころ変わる、めちゃくちゃ面白い体験なのでみなさんもやってみてください。

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