スマホを小指で支えるのがツライそうなので、こういうの作ったんですよ。
紆余曲折を経て『孫指』という道具を作ったら、年末に大変バズりました。みんな最近の大きくて重いスマホに小指をやられていたってことなんでしょうね。
今回は、なぜ孫指を作るに至ったのか、孫指を改良したらどうなったのか?という辺りについて書いてみようかと思います。
良いなと思ったら自分でも作ってみてください。
孫指とは?
いきなり孫指って言われてもピンと来ないでしょう。ということでまずは作ったものを紹介します。
最初に作ったのがこれ。
数字の8にカタツムリ的な足が生えたような形。
このように装着します。
リングを薬指と小指に通します。僕は結婚してるけど指輪はしてないので問題ないけど、考えてみれば指輪をしてると邪魔かも知れませんね。
ちなみに、僕の指先がちょっと荒れているのは趣味で岩とか登ることがあるからです。
で、このようにスマホを支えます。
従来、小指で支えていたのを孫指に担わせる。
最近のスマホは200gくらいあって、長時間片手で持っているとけっこうツライんですよね。
長時間だとしんどいし、人によっては小指が変形してしまうという。
成人男性の僕でもしんどいのだから、手が小さくて筋力も少ない女性やお年寄りは更に大変かもしれません。
装着した状態を横から見るとこんな具合。
バンカーリングという、スマホの裏に付けるリングもあります。僕も以前使っていましたが、スマホカバーに付けているとカバーが割れたりリング自体が壊れたりするし、机に置くとガタガタするので使わなくなってしまいました。
おそらく同じ様に、バンカーリングは知ってるけど他に解決方法が無いか探していた人がたくさんいたのでしょう。
なんやかんやで大変にウケ、Twitterで見られる統計によるといろんな人のタイムラインにのべ400万回表示されました。
スマホスタンドにもなる
手に着ける以外の用途として、スマホスタンドにもなります。意図してそうしたわけじゃないんだけど、やってみたらスタンドとして使えました。
スマホが壊れたっぽい写真になってしまいましたが、NETFLIXの動画が始まる部分です。
こんな感じで支えられます。動画を見る時はいいかも。
で、なんでこういう物を作ったのかというと、キッカケがあります。
作ったキッカケ
『プルタブフック』という、手につけたフックに缶のプルタブを引っ掛けて片手でお皿と缶飲料を持てるようにするアイディアグッズがあります。
Amazon プルタブフック
Amazonで売られていまして、1個100円。テレビでも紹介されたそうですが、僕はツイッターで存在を知りました。
で、買うよりも家の3Dプリンターでプリントするほうが早いので、自分で使うために似たようなものを作ってみたんですね。趣味で。
食べ物系のフェスとかバーベキュー、立食パーティーなどで役立ちます。
これを一つ妻に与えてみたら、想定外の使い方をしていました。
逆に装着してスマホを載せようとしていた。
なにそれ面白いねって事で、スマホを載せやすいようにフック部分の形を変えたのが孫指ということになります。
こういう経緯で孫指が生まれました。
孫指を改良してみた【関節編】
最初の孫指はCADで10分くらいで作ったもので、長さとか角度は適当でした。本当に適当で、だからこれが最適な形なのかよく分かりません。
ということで、まずは角度を変えられるバージョンを作ってみました。
フックの付け根を関節にしてみた。
曲げるとこうなります。
フックの先を二股にすればもっとコンパクトになると思うでしょう?ところが、そういう形を3Dプリンターで作るのは難しいのです。細かく説明すると長くなるけど。
いくつか作ってみたんだけど、思ってたほど良いものにはなりませんでした。
関節部分の固定力とか、関節部分が脆いとか、リングが細くなると指に食い込むとか、可動部分が弱点になります。机上の空論を作ってる時は楽しいけど、現実は甘くない。
3Dプリンターは夢の機械ではなく、プリントしやすい形とそうでない形があり、デザインは『3Dプリンターで作りやすいかどうか』という制約を受けます。なんでも自由に作れるわけではない。
孫指を改良してみた【簡略編】
関節方式は諦めて別の改良をすることにしました。スマホを支えるという用途であれば、別にリングじゃなくても良さそうだなと。
小指の部分をリングじゃなくしてみました。
力が掛かる方向を考えると、こういう形でもいいっぽいんですね。
こうなります。小指は下から支える感じ。着脱はしやすいけどホールド感に欠ける。
途中に突起を付けてスタンドモードのときの角度を変えられるようにもしてみました。
思ったより効果が薄くてボツになりました。
3Dプリンターで物を作ってると、よくこういう迷路に迷い込みます。最初になんとなく作ったものが意外に良くて、改良しているつもりが全然良くならない。
ただ、『こうしても良くはならない』という知見が溜まるのも悪いことではないのでどんどん試行錯誤していきます。失敗は成功までの階段みたいなものです。
孫指を改良してみた【猫編】
横置きならスタンドになるけど、スマホを縦にすると倒れます。解決策はなんとなく分かっているので、孫指の反対側に突起を作ってみました。
前足的なものを付けたら、猫が見えてきた。
耳がない猫っぽいなぁと思ってたら、見えないはずの耳が見えてきたので耳をつけてみました。
猫型孫指前足付き。耳的な突起は可愛い以外の機能を持っていません。
これなら、2個あればスマホを縦置きに出来ます。3Dプリンターがあれば2個でも3個でも作り放題です。
スマホが立った!スマホが立った!
孫指を改良してみた【可愛い編】
前足が付いたことで用途が広がったんですが、前足だけ角ばってるのはちょっと可愛くないのでデザインを変更することにしました。はい、こう。
全体の雰囲気に合わせて丸みをもたせました。
前足を丸くして、ストラップホールをお尻部分に持ってきて肛門とし、薬指と中指の穴を繋げることで猫っぽさを増しました。
目的が『猫っぽさを増す』に変わっている気がしますが、気にしないようにして進んで行くニャ。
インターミッション。
もうちょい改良していきます。
これまでの死屍累々。材料のフィラメントはたくさん在庫してるし、いくらで買ったか忘れたので実質タダで作り放題です(多分1kg2000円くらいなので1個5円くらい)。
なんだかんだで、たくさん作りました
上に載せたやつは指穴を広くつなげすぎてしまったため、指が細い人はくびれに指が入ってしまうという不具合がありました。僕みたいな指が太い人間には気付かない問題です。
あと、肝心な孫指の先の形状がいまいちという指摘があり、細かい修正をいくつか追加。こうなりました。
左が旧版、右が最新版。くびれ部に指が入っちゃう問題を解消しつつちょっと繋げて可愛さは残した。デザインとは、機能と形の意味を上手く融合させる作業です(無意味な耳とか作っておいてなんですが)。
前足があると邪魔という説もあったので、縦置きスタンドは諦めてシンプルな形に回帰したバージョンも作りました。
肛門を模したストラップホールとか猫耳とか細部は違うけど、最初に作ったのと大差ないものが出来ました。
孫指はある程度幅がないと指に食い込むので、6.5~8mm程度の幅にしておくとよいです。
このくらい太くしておくと薬指や小指が楽。
なお、これを2個付けると更なる拡張感を得られます。
7本指。実際に使う時は指の根元まで入れるんじゃなくて浅めのほうが親指が自由になります。
指が7本あると大きなスマホを孫指だけで保持できます。
こんな感じでホールドできます。
横から見ると、こう。
バンカーリングがあれば解決するじゃんとか言わないように。バンカーリングが嫌いって人もけっこういるんです。
これなら親指がかなり広範囲に動かせます。
反対側の角も余裕。
下の角も余裕ですね。
おお、届く!届くぞ!となる。
でもさぁ、思うんだけど、スマホってここまで大きくなくていいと思うんですよね。
懐かしのiPhone3GS。小さい。
昔のスマホってもっと小さかったし、片手で画面全体に親指が届いたじゃないですか。
ゲームをやるなら大画面がいいけど、ゲームしないならそこまで大きい画面は必要ない。
iPhone3GSで孫指を使うと、却って邪魔だったりもします。
むしろ孫指が邪魔になる。
孫指とは、ユーザーの手が大きくならないのにスマホだけ巨大化してく時代の徒花なのかも知れません。
リアル小指ほど便利ではないけど、小指がツライ方へ
孫指は、実際に使ってみると決して最高のソリューションとは言えません。動かないし、着脱が必要だし、紐つけておかないと無くすし。ただ、本当に小指がツライ人には対策の一つとなるでしょう。
ということで、モデルデータを公開しておいたので、どこのご家庭にもある3Dプリンターでプリントして使ってみてください。
モデルデータはコチラ
特許とかも取らないので(こんなもんで特許?とも思うし)、もしこれがビジネスになると思ったら勝手に作って売ればいいと思います。ただし、モデルデータは非商用のCCライセンスにしたので自分でデザインしてください。僕が作ったのが最適な形とも思えないし。
以上、どうぞよろしくお願いいたします。