東横インも伸ばしてみた
長い物には省略記号が付いている。
逆に言うと、省略記号を付ければ長くなる、伸ばせると言うことになる。
リアルに作った省略記号で色々伸ばしました。
グラフや地図でぐにゃぐにゃした二重線の記号を見ることがある。省略記号である。
長い棒グラフを見やすく収めるために、重要でない部分を省略している。
逆に、省略記号を付けると画面に収まらないくらい長く見える、と言うこともできると思う。省略記号で物が伸ばせるのだ。
画像データを編集すれば簡単に記号は付けられると思う。でも記号をリアルに作ることにした。
手で持てる、重みのある省略記号である。好きな場所に飾れるし匂いも嗅げる。秋の空に向かって投げられる省略記号。
「違うな…」と思った。記号に見えないのだ。だからウインナーも長く見えない。
牧場で手作りするソーセージみたいになるかと思ったのですが。
ここから試行錯誤した結果、省略記号に見えるようになってきた。
ウインナーのことは忘れていただいて、このバラを薄目で見てほしい。ものすごく長い茎を省略したように見えなくもないんじゃなかろうか。
妻に見せたら「画像を加工したんじゃないの?」と驚いてくれた。
よし、このやり方で色々撮ってみよう。
これに関しては、古くからある指を伸ばすトリックの一端に参加できたような気がして嬉しかった。
要らない工夫もあった。
もう少し攻めてみよう。
大きなものを伸ばしたいと思ったら大きな省略記号を作ればいい。大きい分、見る側の歩み寄りも大事になります。
大きいものも(歩み寄れば)伸ばせる。ここまで来たらあれを伸ばしたいじゃないか。
「大きい 長い」で自分の頭を検索するとすぐスカイツリーと出てきた。東京スカイツリーに省略記号を付けたい。
曇り空なら記号の間の白と馴染むはずだ。
省略記号の白の部分が暗く写ってしまって空と馴染まない。太陽の角度の問題なのかなと思い、スカイツリーの周りを自転車で走って、省略記号が付けられるスポットを探す。
スカイツリーに近づきすぎると記号が付けられないんだけど、ちょっと離れたところできれいに見えて、尚且つ省略記号も明るく撮れる場所、というのが見つからない。
伸ばせなかったらどうしよう。妥協して他に外で伸ばせる物を考えてみるのだけど、スカイツリーと比べるとどうしても見劣りしてしまう。
妻が水族館にいて、チンアナゴに省略記号を付けようと頑張ってくれていた。
家で省略記号のことを説明したら「チンアナゴは?」と最高の被写体を提案してくれた。
この時点で撮影に割けるのは一日しかなかったので手分けして省略記号を付けることになった。
省略記号桃太郎だ。おじいさんは山にスカイツリーを伸ばしに、おばあさんは川にチンアナゴを伸ばしに行きました。
重ならず、伸びているチンアナゴを見つけるのが難しいし、そもそも照明が今回の目的に向いていない。他のお客さんへ配慮しながらというのもあって大変だったと思う。
そんな中「これはまあいいんじゃないか」というのが撮れたらしい。
ナマコだ。水槽が空いていて、対象も動かないので撮りやすかったのだと思う。確かに記号の付いたナマコに見える。スーパーロングナマコ。
大変なことを頼んじゃってごめん。おかげでロングナマコが見れました。ありがとう。
そんな妻の頑張りを感じ取ったのか、スカイツリーを大きく一周した頃にその日のベストアクトが出た。
他の失敗をたくさん見たから分かるのだが、これはうまくいっている。
省略記号の上の部分は大気圏を突き抜けた宇宙空間にある。
家に帰ってお互いの写真を見せ合った。ほとんどが失敗だが、その失敗を見るのが楽しい。人生に省略記号があったら間違いなく省略されるシーンである。
あの黒い波線の間には、膨大な数のこういう写真が圧縮されて収まっている。
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