そもそもなんで削り始めたのかという話
場所を工房からDRAGONWOODくんのご自宅(徒歩で数分)に移して、改めてお話をうかがうことにした。
ついでに、さっき削りだしたばかりの軸をボールペンにまで仕上げてもらうのだ。
きだて えーと、そもそもなんで木軸のペンを作ろうかと思い至った?というところから聞きたいんですけど。
DRA もともと小学校の頃から文房具は好きやったんです。で、かっこいいペンが欲しいなと思ったんやけど、どうせやったらクラスの誰もが持ってないようなんがいいなー、と思て。
なるほど、自分だけのワンオフに憧れるのはすごい分かる。ただ、それをじゃあ自分で作っちゃえというのは、なかなかの飛躍ではないだろうか。
DRA いやでも、周りに木材はいっぱいあるし、これ削った木軸やったら自分でも作れるわ、って。
あー、そうだった。子どもの頃からあの工房で過ごしてたら、そういう発想に行き着くのははむしろ自然なのかも。欲しいものは自分で作れば良いのである。
しかも見回せば材料も機材もあって、分からないところはプロであるお父さんたちに聞ける。メイカーのスタートとしては最高の環境じゃん、それ。
きだて 最初は自分用として作ってたのは分かったけど、今は通販をしてるよね。自分の作った木軸が売れるぞと思ったのは、いつぐらいから?
DRA うーん、しばらくはただなんとなく何本も削ってたんですけど。母の日にお母さんにあげたりとか
DRA父 売れるレベルに仕上がってきたんは50本めぐらいからかな? 趣味で削るにしても、木材も金具もタダではないし。作りたいんやったら売ってお金にして、それでまた作りなさい…ということを説明したんですよ。
作り方だけでなく、物作りを続けて行くためのお金の部分(超重要)まで教えてもらえるとは。
さっき「メイカーのスタートとして最高の環境」と書いたけど、本当に、これ以上ないぐらいに最高の環境じゃないか。
お父さんからDRAGONWOODくんへ、職人としての歩き方を教えておられるんだな、というのが感じ取れる。
ただ、本人は後から「いや、家は継がないです。僕は筆記具メーカーに就職したいんで」と言ってたけど。
そもそも中学生男子にとって父親なんてうっとうしいだけ、というのはどのご家庭でもさほど代わらないと思う。
だけど今回の取材中、お父さんが技術的な話をすると、DRAGONWOODくんがそれを一度自分の中で咀嚼するように「……うん」と真面目に頷くシーンが何度かあって。なんとなく、普通の反抗期とか思春期の親子関係とはちょっと違う不思議な関係性だなー、と感じていたのだ。