特集 2024年1月10日

実録、知らない街で一週間暮らすことになったら

知らない街で一週間暮らすことになったらどうしたらいいのか。それは楽しいことなのか、つらいことなのか。

実際にそうなった人のリアルな日常をどうぞ。

行く先々で「うちの会社にはいないタイプだよね」と言われるが、本人はそんなこともないと思っている。愛知県出身。むかない安藤。(動画インタビュー)

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> 個人サイト むかない安藤 Twitter

自主隔離で知らない街に一週間

娘がインフルエンザにり患した。

熱が出てすぐに病院に行けたので症状としてはすでに落ち着いているのだけれど、我が家にはもう一人子どもがいるのだ。彼は受験生である。来週が受験。これはまずい。

というわけでインフルの娘は妻と自宅で療養してもらうことにして、受験生の息子と僕とで自主的に隔離生活に入ることとなった。隣町にウィークリーのアパートを借りたのだ。

こういうとくべつ感はちょっとわくわくするよな、と思ってやってきたアパートの部屋は、窓から東海道線の線路が見える7階の角部屋だった。

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新しい人生のはじまりである。

意図してこうなったわけではないのだが、なんだか新しい人生のはじまりみたいである。

まあ正直、一週間くらいなら楽しいだけですぎてしまうだろうなと思った。子どもは受験だけど、それは彼自身で頑張ってもらうしかないのだ。

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何もない部屋に入ってくる西日がきれいでずっと眺めていた。

こうして知らない街での生活が始まった。

ここからは日々の暮らしの中で気づいたことを、順を追って書き留めておきたい。

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寝たい

入居初日。この日はもう遅かったので、順番にシャワーを浴びてそれぞれの部屋に布団を敷いて寝た。

しかしである。

なかなかに音がうるさいのだ。息子のいびきとかではなく、電車の音が。

線路が近くに見えるということは、臨場感を持って音が聞こえてくる、ということだった。部屋の中まで空気が振動している。

鉄道ファンならたまらないかもしれないが、あいにく僕も息子もそれほど興味がないので、別の意味でたまらなかった。

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持ってきた荷物はリュックひとつ分。押し入れの上段にすべて収まった。

そして部屋が寒い。

エアコンが一台しかないので、互いのプライバシーを尊重し、寝室を分けるとなると一部屋はナチュラルエアーということになる。

いまナチュラルメイクみたいに言ってみたが、つまりは無暖房ということだ。もちろん僕が無暖房の部屋となる。自主隔離で風邪をひいて帰ってくるほどの本末転倒はないので緊張が走る。

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備え付けのオイルヒーターは手をかざすとほんのり温かいのだけれど、これってそういうものですかね。
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料理がしたい

滞在中、ずっと外食というのもあれだ、健康的にも精神的にも金銭的にもよくないだろう。

ということでキッチン付きの部屋を借りたのだけれど、料理というのはキッチンがあればできるというものではないのだ。調理器具も食材も調味料も、最初はあたりまえだけどない。

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初日の僕のご飯。豆腐の納豆あえ。
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ここ最近で一番人生をかえりみた瞬間である。
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まあでも美味いんですけどね。

部屋に備え付けられていたのはフライパンと手鍋が一つずつ。包丁と箸、スプーンとフォーク、あと皿が数枚とコップがいくつか。

これだけの情報をもとに足りないものを買ってみてほしい。で、それを使って晩ごはんを作ってみてほしい。追加で足りないものがガンガン出てきて料理の手が止まるぞ。

僕はまずまな板がないことに気づいて泣きそうになった(その日はアルミホイルの上で切った)。

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備え付けの包丁が異様に切れるのでりんごを剥くだけでどこかケガをする。
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たぶん一週間で全部の指をケガすると思う。
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チョコとウイスキー買う前にまな板買っとけよ、と自分を責めた。
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洗濯がしたい

三日くらいなら持ってきた着替えで対応できるのだが、一週間ともなるとどうしても途中で洗濯がしたくなる。

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洗濯機はあるのだ。

しかし料理と同じで、洗濯も洗濯機があればできるというものではない。洗剤がないし、そもそも洗ったものを干さなきゃいけない。

ベランダに買ってきたひもをかけ洗濯ばさみを設置。二日目にして洗濯ができるようになった。

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ひもの掛け方が立体的なのは結ぶ場所がなかったから。
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掃除がしたい

三日目に掃除がしたくなった。生活していればどこからともなくほこりが出てきて床に落ちるものなのだ。部屋には掃除機がなかったので、フローリング用のワイパーの替えシートを買ってきた。

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ワイパー本体を買うと持ち替えるのが面倒なのでシートだけ買って雑巾がけするみたいに四つん這いになって掃除した。ここでもまた人生をかえりみた。

これがかなり万能で、床だけじゃなく、机の上もそこらじゅうを掃除できた。すっきりである。

足りない足りないばかり言っていてもつまらないので、知らない街で暮らしてみてよかったことも思い出してみた。たくさんあるぞ。

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知らない街は新鮮

まずはこれだ。

どこに何があるのかまったくわからないので、あてもなく歩いてみると、発見するすべてが楽しい。昨日は近くにクリエイト(主に神奈川でチェーン展開している無敵のドラッグストア)を発見して抱きしめたくなった。誰をだ、店長をか。

他にも神社を見つけては手を合わせてみたり、公園を見つけては一周走ってみたりと、知らない街をどんどん知っていく過程が味わえるのは本当に面白い。

昨日よりも今日の方が知っているし、明日にはまた新しい発見があるのだ。ぜんぶ知っちゃってつまらなくなるまでにどのくらいかかるのだろうか。少なくとも2か月くらいは興奮していられそうな気がする。

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こういうお店を見つけると興奮する。

朝がいい

毎日がわりと必死なのだけれど、一日を終えて倒れ込むようにして寝て(たくさん歩いて疲れるからか、おかげで寒さは気にならなくなった)、翌日起きた時にベランダから日が昇ってくるのを見ると、なんかわからんけど新しい日が始まったぞ、という実感が得られる。どこに暮らしていても朝は来るのだ。だったらおれもまたしっかり暮らすぞ、と、今までにはなかったタイプのやる気が沸いてくる。

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「冬はつとめて」とはよく言ったものだ。

安定してくるのがうれしい

料理に関しては二日目で完全に慣れた。朝は野菜と果物を切って玉子とパンを焼くだけなのでほとんど料理という料理もしていないし、夜は夜で、スーパーで総菜を買ってくることで問題を解決した。この状況で揚げ物とか絶対に無理である。

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朝食はこのくらいすぐにできるようになった。
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晩ごはん。メインとなるカツの部分さえ調達できればあとはどうにでもなる。

深く追求しないことで、ぎこちないながらも暮らしが安定しはじめた。この実感が得られるのも嬉しい。

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知らない街で生活すると、どうでもいい風景でも写真に撮りたくなる。
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知らない街のドナルドは怖い。
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とにかくよく外を眺めた。日当たりのいい部屋を選んで正解だったと思う。

他にも同じ建物に住むおじいさんと話をするようになったり、夜になんとなく散歩してみたり、電車の音が気にならなくなってきたりと、知らないはずの街に同化していくのが実感として感じられるようになった。

そうこうしているうちに、一週間が終わろうとしている。 


たいへんなのは二日目まで

知らない街で暮らしながらこの記事を書いている。最初の二日は座って原稿を書く余裕もなかったのだが、三日目くらいから急激に生活というか、気持ちが安定してきて、家事をやりながら合間に本を読んだりもできるようになった。スマホからSpotifyを流したのも三日目の朝だったと思う。

みなさんもいつか同じ状況になったら、最初の二日間を頑張って乗り越えてください。あとはよくなる一方ですから。

僕は明日、この街をあとにします。

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完全に慣れた頃に、この生活も終わりを迎える。
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