メルカリでカレンダー到着の連絡に、カレンダーで旅情を感じていますというようなことを書いたところ、たいへんな時期ですがお体に気を付けてお過ごしくださいと丁寧な返事をもらった。
ちょっといい話なので書くかどうか躊躇してしまうが、書いた。
たとえば地方都市で小さな居酒屋に入り、トイレに行く。寒いトイレには地元の信用金庫のカレンダーが貼ってある。
ここにはこういう信用金庫があるのか……。
知らない信用金庫のカレンダーを見てぼんやり考える瞬間、あれが旅だ。
居酒屋以外でも、親戚の家や食堂で手持ちぶさたにカレンダーを眺めているときも旅。
あの一瞬の旅情を味わいたくて、メルカリで信用金庫のカレンダーを買いまくった。
メルカリには知らない信用金庫のカレンダーがたくさん出品されていた。送料込みで300円だったりするので、何の躊躇もなく見た瞬間に買った。
まずは空知信用金庫。空知は札幌の北のほうの地名である。名前は聞いたことがあるが行ったことははない。そんな遠い町の信用金庫のカレンダー。
営業エリアの風景写真だが、この景色がいい。
“三日月”湖というロマンチックな名前、蛇行する川がちぎれてできたワイルドな成り立ち。東京のまっすぐの川と違う野生の川だ。ミカヅキモとならぶ僕が好きな2大ミカヅキである。
もっと荒々しいものかと思っていたが、周りに木がはえていたりして整備されている(この三日月湖のようです)。
3つの信用金庫のカレンダーに地元出身のアーティストが絵を描いていた。
営業エリアに士別市がある。むかし雪かき大会で行ったところだし、居酒屋で羊の骨付き肉を食べた。あの店に貼ってあったかもしれない。このカレンダーはなにもかもいい。
この昭和テイスト、地方だけでなく時間もトリップしたかのような錯覚を味わえる。
良すぎて渡辺俊博さんの単著をネットで注文してしまった。
次は愛知県の知多半島。
行ったことのない半島、知らない祭り、地元の切り絵作家、である。情緒の三連コンボだ。うちのトイレにかけてみたが、その瞬間、もう世田谷ではなくなった。
これでトイレのタンクの上にレースの敷物を敷いたら本当に空間移動してしまうかもしれない。知多信用金庫のキャラクターはイルカで、ちっピーとたっピーである(あわせてちたっピーズ)
デイリーポータルZの過去の投稿コーナーに写真があった。
意外なところから顔を出す顔ハメだった。ちなみに編集部安藤は知多信用金庫は地元の駅前(大府)にあると言っていた。
次も愛知県。岡崎信用金庫。
「だりやちゃん」というまんがが載っててポップだ。が、調べたらこのだりやちゃん、連載45年の長寿まんがだった。
・岡崎信用金庫のPR誌「おかしん」に1976年から連載中(2021年1月現在で537回)
・連載500回記念で原画展開催
・作者のいしはらいずみ先生は岡崎市役所に勤めていた
そういわれてみればこのカレンダー、岡崎信用金庫のカレンダーではなく、だりやちゃんカレンダーなのだ。
岡崎信用金庫は中部地方最大の信用金庫だそうだが、その規模をしてもカレンダーはだりやちゃんがセンターである。
カレンダーの下に書いてあるちょこっとした部分も旅だ。
読み方が分からない信用金庫、これ以上の旅情はあろうか。
ちなみに「たんよう」と読む兵庫県加古川市の信用金庫。地元では大きい信金のようだ。”よろず相談所”というコピーが信用金庫らしくて最高だ。
最後に紹介するのが、JA壱岐のカレンダーだ。うなってしまうほど良かった。信用金庫じゃないから本稿の趣旨から外れてしまうことが気にならなくなるほど、良い。
家にいながら壱岐ではきょうは棚卸だなと思いをはせられる。資材センターをグーグルで検索して眺めた。
味わいだ。出汁のきいた高野豆腐ぐらい味がどんどん出てくる。
メルカリでカレンダー到着の連絡に、カレンダーで旅情を感じていますというようなことを書いたところ、たいへんな時期ですがお体に気を付けてお過ごしくださいと丁寧な返事をもらった。
ちょっといい話なので書くかどうか躊躇してしまうが、書いた。
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