今さら食べたい、チーズなんとかドック
パリ:突然ですが、世の中のブームって、すさまじいスピードで過ぎ去っていくじゃないですか。もうあんまり、タピオカの話とか聞かない。
ナオ:確かに、一時期より聞かないかも。
パリ:でもタピオカ、美味しかったじゃないですか。
ナオ:美味しいですよ! 単純に、めちゃくちゃ並んでるから足が遠のいてただけで、これからこそいよいよ飲みたいです。
パリ:だから、必死でその最先端を追いかけなくても、ゆ~っくり後追いしたり、ときに戻ったりしてもいいんじゃないかと思うんです。
ナオ:そうですね。私はそういうのに奥手な方なんですが興味だけはあって。例えば今もナタデココ大好きですし。
パリ:ね。ブーム時の勢いはもはやないけど、消えてはいない。そうやって選択肢が増えていくのって、幸せなことだなぁと。そこでですよ! 「どこよりも早いグルメレポート」あふれる現代社会、「どこよりも遅いグルメレポート」が載っかってるサイトが、ひとつくらいあってもいいんじゃないかと。
ナオ:うん。ブームだからすぐ飛びつくでも、逆に避けるでもなく、あとからゆっくり覗きにいく。
パリ:そしてそれができるサイトは、ついこないだも「カップラーメンはうまい」っていう記事が載ってた、デイリーポータルZ以外にないんじゃないかと。
ナオ:ははは。ないない。
パリ:でですよ? 韓国で流行って日本にもやってきた、なんか一時期みんな食べてた、チーズなんとかドックみたいなの、一回食べてみたいじゃないですか?
ナオ:もちろんです。食べてみたい気持ちはあったのに、ずっと食べられてなかったんですよ!
パリ:ね! 味を知らない。ついでに他にもあれこれ食べ歩きしたりもしたい。恥ずかしがってる場合じゃない。
ナオ:そうそう。となると行き先はもちろん?
パリ:新大久保!
ナオ:そう! ちなみに、新大久保で飲むことってありますか?
パリ:あんまりないんですよね。
ナオ:私もけっこう久々で、東京に住んでいた頃、たまに新大久保のライブハウスに遊びにいったりしてたけど、ゆっくり飲みにいったことはなかったかも。
パリ:しかもA面のほうね。
ナオ:そうそう。ドA面に向き合ったことは一度もない。新大久保といえば、日本屈指の韓国カルチャー発信地ですよね。
酒の穴 in 新大久保
パリ:降り立った瞬間、まるで異国の地みたいでワクワクしました。
ナオ:平日の昼間で、あいにくの雨なのに、めちゃくちゃ賑やかでしたよね。
パリ:ですね~。しかもみんな楽しそうなの。
ナオ:うちの母が、それこそ冬ソナの頃から韓国のドラマや音楽が好きで、たまに新大久保に買い物したりご飯食べたりしにいくと聞いてて、母は60代後半なんですが、それぐらいの年齢の人もいるし、高校生らしき人々もいるし。
パリ:そこに混ざらせてもらって、何はともあれチーズドッグ。
ナオ:ええとね、正式名称、「チーズハットグ」。
パリ:それを食べました! あとでゆっくり街を歩いてみたら、いっぱい出してるお店あるんだけど、もう、最初に目に入った店で。
ナオ:その行動も、ブームに飛びついた感ありましたね。「わー! あるー! 食べよう!」って。
パリ:はは。そうそう。
ナオ:そりゃあるっつうの。
パリ:いくらでもあるって。
ナオ:ちなみにチーズハットグ、韓国ではどちらかというとおやつ感覚で食べられてるそうで、「ハットグ」は「ホットドッグ、アメリカンドッグ」を意味します。「チーズドッグ」と呼ばれることもあるそう。以上、検索結果より。
パリ:確かに、アメリカンドッグの進化系みたいなものを想像してました。ただ、食べたあとの今でも、まだよく理解できていないような、不思議な食べ物。
ナオ:あれはなんなんでしょう。ソーセージが挟まってはいないかった。
パリ:そもそも、我々が食べたのが、ハットグの中でも「ポテトモッツァレラ米ハットグ」なので。いったん情報を整理する必要がある。
ナオ:はは。間に漢字が一文字。☆マークみたいに。
パリ:語感は最高。
パリ:まず、「ハットグ」部分は、ベースですよね、たぶん。
ナオ:ですね。そこは譲れない。例えば、「ポテトモッツァレラ米ラーメン」だと、もうハットグではない。
パリ:逆に、「そば肉キャベ玉ハットグ」ならハットグなわけだ。
ナオ:そうですね。最後にきたものが勝つ。
パリ:次の「米」がわからないんだ。
ナオ:はは。そこが難解にしている。
パリ:お米は入ってませんでしたよね、まず。
ナオ:生地が米なのかな。米粉。
パリ:今、米ハットグを検索してみたのですが、我々が食べた「ジョンノハットグ」というお店の情報ばっかり出てきます。けっこうオリジナルなものを食べたのかも。
ナオ:なるほど!
パリ:あ、オフィシャルサイトに情報があった! 「米粉を使用したもちもち生地」だって。
ナオ:うおー! 米ハットグ!
パリ:謎が解けてきましたよ。「ポテト」はほら、衣っていうの?
ナオ:ブロック状のポテトが衣にくっついてる。
パリ:そう、あれが目を引くんですよね。なんかみんなゴツゴツしたの食べてんな~って。プレーンなホットグは、実はゴツゴツしてない。
ナオ:そう。串かつに見える。
パリ:ははは。大きめの何かの串カツ。で、「モッツァレラ」が肝心の中心部を指していて、中身がモッツァレラチーズであると。
ナオ:うん。そういうものでしたね。
パリ:さらに、注文すると、「砂糖つける?」って聞かれるんですよね。のんびり振り返ってるとなかなか食べるところまでたどり着けない。
ナオ:「えと、さ、砂糖!?」。でも、「つけますか?」って言われて、つけなかったことないでしょう?
パリ:確かに。なので、もうすでに、チーズ、米粉、ポテトが層になっていて、そこに砂糖がコーティングされ、さらに「ケチャップは?」「マスタードは?」って。
ナオ:すごく多層的。
パリ:よく思いついたな。
ナオ:「何連コンボ」みたいなののすごいやつですよ。だから当然、複雑な味なんですよね。
パリ:そうそう。パッと「醤油せんべいだ!」みたいな感じじゃない。
ナオ:はは。せんべいではないね。
パリ:頭が一回ぐるぐるする。味が整理されるまで、30秒くらいかかるかな?
ナオ:かかりますね。もっちもっちしてて、チーズのまろやかさもあって、情報量がとにかく多いっす。
パリ:あの味がして、逆の味がきて、違う方から食感のおもしろさがきて、最終的にやっと、「でも、美味しい」と。
ナオ:ちょっと1回じゃ無理ですねあれは。
パリ:ですね。2回目もっとうまく食べられる気がする。
ナオ:ただ、とにかく面白いもの食べたぞ! っていう高揚感はあって。みんなが写真撮りながら食べてる、あのお祭り感にも盛り上げられますね。
パリ:うんうん。「食べてるね? おれも食べてるよ!」
ナオ:「なんだろうねー! これ!」
パリ:「わかんないねー!」
ナオ:実際に言葉は交わさないけど、そんな感じね。
ソウル市場~居心地のいい公園
パリ:ここまではもう、酒を飲む余裕なんてなかった。やっとひとつ最大のミッションをこなして、そこからはだいぶ気楽にぶらぶら歩けた気がします。
ナオ:そう、一気に街の中の人になれた気がして、韓国アイドルのグッズを売るお店に行ってみたり。どこも盛り上がりがすごい。
パリ:グッズ屋おもしろかったな~。「これいい!」「これもいい!」って、けっきょくわからないから何も買わないんだけど。
ナオ:アイドルグループのひとりひとりのキーホルダーとか、どれ買ったらいいかわからないですからね。
パリ:作りも凝っててね。あれが、好きな酒場の店員さんひとりひとりのキーホルダーだったら、破産するまで買ってた。
ナオ:うん。どれ買えばいいんだ! っていう。
パリ:「あ、それ誰だっけ~?」「やだなぁ、ひばりヶ丘の養老の瀧の店長じゃん!」
ナオ:「しかもこれ、バイト時代の写真じゃん! レア!」。
パリ:ははは。
パリ:ちなみに、街を歩いていてよく目にした、いちばん最新のブームは、「UFOチキンフォンデュ」ってやつっぽかったですね。でかい鉄の容器の真ん中にチーズたっぷり、まわりに味の違うチキンがずらーっと、2、30本。
ナオ:あの日の我々には手に負えなかったけど、あらためて食べたいですね。
パリ:みんなで行くの、楽しそう。
ナオ:見た目が祭り。やぐらの周りで踊ってるみたいな。
パリ:はは。あきらかに非日常の食い物。まーこれはいつか後追いすることにして、次に入ったのが、「ソウル市場」っていう、韓国食材スーパーマーケットというのかな。
ナオ:そうそう。楽しすぎました! 中にも屋台があって、できたての惣菜なんかも売ってましたよね。
パリ:チャンジャとかキムチの試食も、ずらーっと並んでて、これまたお祭り騒ぎ。入り口入ってすぐのところで実演販売してた「万能の素」っていう粉、いきなり買っちゃったもんな。
ナオ:あの粉最高にうまかった。
ナオ:やっぱり品揃えがすごくて。私は韓国のインスタントラーメンが好きでよく買うんですよ。
パリ:「辛ラーメン」みたいな?
ナオ:最近では普通のスーパーでも辛ラーメンだけじゃなくけっこう色々あったりするので、見かけないのを見るたびに買ってるんですが、ここではもう、ほとんど見たことないものばっかりでした。
パリ:ははは。狂喜乱舞。お酒も見たことないのがわーっと並んでてね。
ナオ:その棚を見ててたまらず、「よし、もうこれ買って、おつまみも買って、どこか公園探して飲みましょうか?」ってなったんですよね。
パリ:でした。で、見つけた近くの公園に行ったら、そこがまたすごく良かった。
ナオ:椅子とテーブルがいくつか置かれてる公園で、管理スタッフの方なのか、我々を見てパッと椅子を出してくれてね。
パリ:「すみません」って言ったら「いいのいいの、いっぱいあるから!」っていう、あの感じ最高にありがたかった。
ナオ:そこでソウル市場で買ったセットをね!
パリ:ソウルセットね。
ナオ:ははは。東京でナンバーワンの。
ナオ:韓国では、袋麺をバリバリってそのままお菓子感覚で食べたりするそうで、私もそれたまにやるんですが、さらにもう、バリバリ食べる専用のものが最初からあるっていう。
パリ:慣れぬカルチャー。
ナオ:割ってるでしょ。絵が。
パリ:割ってますね。何か嫌なことでもあったのかってくらい力いっぱい。
ナオ:これがまた、思った味と違うんだ。
パリ:違う違う! 甘いんですよね。甘いの多い。韓国。
ナオ:惣菜の中にもそういう味わいのがありましたよね。
パリ:チキンもトッポギも甘辛かった。
ナオ:甘さと辛さの使い方が発達してる。
パリ:甘くて辛いんですよね。
ナオ:甘くて辛いです。ハットグもだったけど、異なるものが共存していて、しかもどっちも強調されてるっていう。
パリ:どっちも同じくらい主張してくるっていうのは、日本のものであまりない気がするな。
ナオ:1:1でね。
ナオ:お酒はどうでしたか?
パリ:僕はマッコリを飲んだんで、まぁ知ってる、美味しい味でした。
ナオ:僕が買ったチューハイは、桃味だったのかな。めちゃ美味しかったですよ。
パリ:ミニボトルの甲類焼酎みたいなのは、あとから家で飲みましたけど、シンプルな味で飲みやすいし、あと、ボトルがプラってのが軽くて良い。
ナオ:ああ、私も買いました。そうなんです。まさにズボンのポケットに入れて歩けそうないいサイズなんですよ。
パリ:パッと出してグイッと飲む。
ナオ:パッとあれ出したら格好いいですよ。「え? あまり見かけない酒飲んでる!」
パリ:「ちょっと待って、なんですかそれ?」
ナオ:「いやー気づかれちゃいましたか?」
パリ:「最近な~んかこれのモードでね~」
ナオ:「あの、仕事中なんですけど?」っていう。
パリ:ははは。そうだったんだ。
ナオ:そういう意味の「ちょっと待って、なんですかそれ?」だった。
パリ:「まさか酒飲んでるんですか?」って。でもさ、この焼酎なら、ギリギリ追求されない可能性がありません?
ナオ:確かに、「これは韓国の甘い蜜です」とか言えば。
パリ:言い切ってしまえばね。
生ビール1杯157円の夢の国
ナオ:そして最後は、すごい生ビールの安い店を見つけて、そこへ。
パリ:吸い込まれた。
ナオ:吸引力がすごい。「ちょっと一杯」のつもりが、
パリ:いきなり夢の国! で、あらためて店名を見てみたら、「でじに?らんど」っていう。声に出して読むとバカバカしくて最高。
ナオ:「デジ」とは韓国語で「豚」のことだそうで、「豚肉の美味しいお店だよ! どこかで聞いたような名前と思うかもしれないけど、違うからねー!」ということですかね。
パリ:ですよね。
ナオ:美味しかったし、安くなかったですか?
パリ:安かったんですよ~。ついあれこれ頼んでしまったお肉もボリュームあるのにリーズナブルで。
ナオ:ビールで客を引いて実はお高い、みたいなそんなのがない。激安居酒屋でけっこう高くつくっていうあれに慣れてるから、ちょっとビクビクしてましたが。
パリ:ただただ安くていいお店でしたね。
パリ:あ、今でじに?らんどの公式サイト見てみたら、UFOチーズチキンもやってますよ!
ナオ:本当だー。また行くしかないですね。
パリ:関係ないけど、チーズチキンの下に乗ってるメニューもおもしろいです。「デーロンチーズスティック4種盛り+サンチュサラダ 2人前 2480円 +300円でタピオカ飲み放題(お一人様75分)」
ナオ:飲み放題きたー!
パリ:タピオカ、意外にも腹にたまるものナンバーワンだぞ?
ナオ:ははは。いけて2杯ですよね。
パリ:それで1日ぶんの食事くらい。
ナオ:写真がないから「チーズスティック4種盛り」っつうのも想像できん。
パリ:デーロンチーズスティック? なんだろう。デローンとしてたらスティック状態は維持できないだろうし。
ナオ:「デーロンチーズスティックとは、米や唐辛子、玉ねぎ、ニラ、ニンニク、生姜などの食材を使用し、チーズスティックと韓国料理や中華料理を組み合わせた、まさにオリジナルの創作料理なんです」
パリ:わからないって。
ナオ:わからないなー。
ナオ:すごい長いそうです。
パリ:長い?
ナオ:「でえりゃあロング」的な?
パリ:名古屋弁!?
ナオ:はは。確かめにいくしかないですよもう。UFOとデーロンとタピオカ飲み放題、いけるかなー。
パリ:想像ですけど、デーロンもけっこう腹にたまりますよ。いくらサンチュに巻いたって
ナオ:サンチュが消化された瞬間、胃が気づきますよね。「ん? これデーロンじゃねえか」って。
パリ:オブラートみたいなもんですからね。
ナオ:すぐ溶けますんで。
パリ:そこにタピオカがドスン! ドスン! でしょ。
ナオ:上から降ってきて、胃が「ん……まさかこれ、ブーム飲み?」。
パリ:「おかしくない?」と。
ナオ:「あいつらまたやってやがる!」
パリ:ははは。あいつらって誰なんだ。胃のほうが頭より先にブームを把握してる。
パリ:どこよりも遅くても楽しかったですね。ブーム飲みは。
ナオ:全然楽しいです。「あーみんなが言ってたの、これか! これはいいわ!」って、ようやくわかる感じがおもしろい。
パリ:「カメラを止めるな!」やっと見たわ~、みたいな。
ナオ:そう考えると、「あまちゃん」「エヴァンゲリオン」見たことない。
パリ:僕だったら、「キン肉マン」に「北斗の拳」。
ナオ:絶対におもしろいがゆえに、取っておきすぎちゃってるやつね。一度ちゃんと取り組みたいです。
パリ:それができる幸せ。
ナオ:乗り遅れてしまったブームにゆっくり乗るシリーズ。
パリ:これからも続けていきたい、いい趣味が増えましたね。