独自の文化は最高だ
夜用生理用ナプキンがかっこいいなというのは実はかなり前からぼんやり思っていたことだった。
ただ、個人的には毎回「その時売ってるので安いやつ」をこだわりなく買う傾向にあることで、どのメーカーのパッケージも一様に暗く、商品の長さがミリで記載されていることには気づいていなかった。
こうして並べてみて、はじめて気づいてふるえてしびれた。
ぼんやり思っていた以上のかっこよさだった。
あと見れば見るほど新幹線に乗りたくなるのなんなんだ。

月経時の経血を吸収してくれるありがたい存在の生理用ナプキン。体のつくりによって必要な人とそうでない人が二分される商品だ。
私は買う側に所属しているが、前々から、夜装着するタイプの商品パッケージにまったく独自の「かっこよさ」があると思っていた。
生理用ナプキンは衛生用品だ。人体の状態により利用には医療的に切実な場合もある。今回はあくまでドラッグストア等に陳列される商品パッケージから、メーカー各社の入魂のデザインにあふれる「かっこよさ」に注目し称えていきたい。
さて、タイトルにもある通り、今回かっこいいぞと語るのは「夜用」の商品についてだ。
生理用ナプキンには大別して日中に使う「昼用」と就寝時に使う「夜用」がある。かっこよさが発揮されるのは夜用の現場である。
昼用が白く明るいパッケージなのに対し、夜用は、暗い。さながら、夜のとばりがおりるようにパッケージも暗くなる。
そもそも、夜はかっこいい。
たとえば「一晩じゅう踊り明かす」のがクールでかっこいいのに対し、「昼間いっぱい踊り続ける」過酷さといったらどうだ。
かっこよさは夜闇に宿る。夜の品であるという、そこがまずもってかっこいい。
夜用であることを効果的に表すため、各社パッケージに一様に現れるものがある。
宇宙だ。
宇宙といえば誰もがあこがれるかっこよさの象徴である。
大手メーカーの商品から大王製紙「エリス 朝まで超安心」シリーズのパッケージを見て行こう。
「エリス」は他社製品にに比べ、下部にムーミン村のような草を配置するなどかわいらしさに注力するパッケージが特徴だが、それでもこの月のとがり具合はどうだ。
ほぼ棘くらいとがる月とそれを囲む星々、独自の宇宙空間の描写がかっこいい。
続いて花王から「ロリエ 朝までブロック」シリーズはどうか。
三日月の尖りはそれほどでもないが、ピンク色の帯状のものが上部にあしらわれており、これはおそらく天の川銀河ではないか。
商品ロゴがビッグバンによって生まれ出たかのようにも見える。
さらにユニ・チャーム。「ソフィ 超熟睡ガード」シリーズのパッケージにあるのは流れ星だろうか。
隕石の閃光をとらえたかのようで、これがまたかっこいい。
夜のとばりをおろした夜用パッケージは全身を黒や紺で覆い宇宙を表現する。しびれる。
再度昼用との比較に戻ろう。じっと見ると昼用にはない夜用の大きな特徴があることに気づく。
上の写真、さきほどは昼が明るく夜は暗いと比較したが、よく見ると、夜用のみ右上に黄金で「400」と書かれている。
これは大変な事実で、私も気づいたときは驚異した。
「400」はその紙ナプキンの直径が40cmあることを意味する。商品のミリ単位の長さを商品名に表記しているのだ。
これ、なんとメーカーを横断して共通する特徴なのである。
生理用ナプキンは昼用、夜用問わず経血の量等に合わせサイズから商品を選ぶことが多い。
商品の長さをそのまま商品名にするのは、重要な比較条件をパッケージでフレンドリーに分かりやすく表記しているということだと思うが、結果的に戦闘力のように猛々しく感じられてとてもとてもかっこいい。
さて、三桁の数字といえばどうしても連想するものがあるだろう。
そう、新幹線だ。
新幹線の車両の系列名は0系からさきは百位を付加し100系、200系……と採番されてきた。
700系がN700系、N700S系と横展開し興奮を呼ぶなど、系列名は私のような鉄道素人にもおなじみの胸熱ポイントだ。
夜用生理用紙ナプキンの三桁の数字には、この新幹線の系列のようなかっこよさ、興奮をおぼえる。
最後に、なんといってもだ。これはもう、見てもらうしかない。
どうだろう。メーカーの技術の粋がぱんぱんにつまった形状をあらわす圧倒的図解。はっちゃんめちゃんにかっこいい。
物理と物理のぶつかり合い、絶対に経血を外には出させないそのために、根性ではなく技術をぎりぎりまで研ぎ澄ませたのが伝わってくる。
私も長く生理用ナプキンに世話になっているが、使用開始当初はここまでの技術は搭載されていなかった。
メーカー各社がしのぎを削り開発に心血を注いできて、それが積み重なって現状のような技術革新が起こり続けているのだろう。
なによりこの図、空力をたくみにあやつりそのスピードを増してきた、やはり新幹線のようではないか。
今年7月1日。東海道新幹線がN700S系の営業運転を開始したその日のニュース番組は熱かった。
空力特性改善のシミュレーションを重ねに重ね開発されたデュアルスプリームウィング形と呼ばれるその先頭形状はごくかぎられた熟練の職人が手作業で成型していると伝えていた。
生理用ナプキンも新幹線も、技術が高みに向け極まるのをこれでもかと感じる。
夜用生理用ナプキンのパッケージはかっこいい。
そこには夜があり、宇宙があり、新幹線があり、そしてそのかっこよさが虚構ではないことを図解が証明している。
夜用生理用ナプキンがかっこいいなというのは実はかなり前からぼんやり思っていたことだった。
ただ、個人的には毎回「その時売ってるので安いやつ」をこだわりなく買う傾向にあることで、どのメーカーのパッケージも一様に暗く、商品の長さがミリで記載されていることには気づいていなかった。
こうして並べてみて、はじめて気づいてふるえてしびれた。
ぼんやり思っていた以上のかっこよさだった。
あと見れば見るほど新幹線に乗りたくなるのなんなんだ。
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