ほり:僕、解けた気がするな。ちょっと見てもらっていいですか?
まい:すごい!「答え」だ!
三土:でもまだ同じ解き方には見えないなー。ほりさん、最後の式だけ書き出せますか?
ほり:あ、わかりました。最後の式を変形するってことですよね!
まい:あのすみません、ふたりはいま何を始めたんですか?
石川:状況わからなすぎて、ついにクレーム入りましたよ
三土:これ、絵馬の答えがシンプルなので、たぶん計算の最後の式だけを絵馬に書いたんだと思うんですよ
まい:最初の式じゃなくて最後の式を書くスタイルなんだ
三土:絵馬とほりさんは違う解き方をしているように見えるんですが、ほりさんの最後の式をいじれば、実は絵馬の式と同じになるはずなんです
まい:時代を超えて同じ式と数字にたどりつくの、「数学」って感じしますね
石川:ここは文系班と理系班にわかれて、両側から解読するのがよさそうですね
三土:あ、これわかったかも!ほりさん、両辺を√rで割ってみて!
ほり:え...? あ、来た!これは来ましたね!
まい:一体なにが起きているんだ
ほり:中学数学から考えるとすごくキモい方法ですけど、なんとか絵馬の答えにたどりつきました!
ほり:出た、出た出た!同じ解き方だ!でも本当にキモいなこの最後の割り算は
まい:江戸時代の算額者が現代人にボコボコに怒られている
ほり:平方とか無視してますしね。それアリなの??
むぎこ:いま手元の和算の本を読んでたんですけど、この問題によく似た公式があるんですよね
まい:江戸時代にはこの問題専用の公式があったから、常識はずれの解き方をしてるんだ!
むぎこ:だから、江戸の人はここまで一瞬でたどりつけたのかもしれません
算額者は問題よりも「公式」を絵馬で奉納してほしい
まい:一問目でやりきった感があるんですけど、まだあと2問ぐらいあります。次の問題は本当に私がなにひとつわからなかったやつです
ほり:これ楕円ですよね。楕円の問題って数Ⅲ(※高校数学で一番難しい数学のラスボス。大半の文系はやらないまま卒業する)の知識がないと解けないですよ
まい:じゃあ問題わかっても私にはむりだ
三土:いや楕円に見えるだけで実は楕円じゃないのかも! さすがに楕円はないと思うし...
むぎこ:いや、この漢字は「楕円」です
ほり:楕円じゃん
三土:大変じゃん
むぎこ:とりあえず問題文から見てみますね。「等方」は「正方形」で、「正円」は円、それから赤い円の直径が7392寸です
まい:この円、200メートル以上もあるの??
むぎこ:で、問題はたぶん「四隅にある正方形の辺の長さがどれくらいあるか」だと思います
三土:これ本当に解けるのかな? 円の直径だけで式が作れると思えないけど...
まい:ただこの絵馬、答えだけは書いてありますよ
石川:答えもでかくないですか? 7607寸?
まい:この正方形も230メートルあるんだ
ほり:まず、問題として成立しているか確かめたいなー
三土:この条件で正方形の長さが決まるのかあやしいですよね。でも楕円が左右に接するのは意外と厳しい条件かもなー
まい:またふたりだけがわかり合う時間が来てしまった......
ほり:これかなり複雑になりそうですよ。こんなの解けるのかな?
むぎこ:いま問題文をちゃんと読んでみたんですが、この問題を作った人は数学の天才と呼ばれた御粥安本が師匠らしいです。御粥はオイラーやフェルマーにも劣らぬ実力があったと言われていて、この方の流派は特に楕円が得意だったようです
まい:そんな流派あるの?!ていうか数学に流派があったの?
むぎこ:この流派、楕円の公式をたくさん持ってたみたいなんですよね。だから彼らはこの問題も公式でショートカットして解けたんでしょうね
まい:それ、なんで公式の方を奉納してくれなかったんですか?
石川:当時の算額者はみんな公式を知ってるからじゃないですか?
むぎこ:秘伝のタレみたいに公式を隠してたこともあったみたいです。でも、そういうのはよくないと言って公開した人もいるみたいですね
石川:三土さん、どんな感じですか?
三土:これは諦めモードですね... 本当に...解けない......
ほり:僕も...「これについての式を立てるんだ!」というところまではいきましたが、ここから先はむりですね...
石川:よし、ここは撤退しましょう!
まい:これは楕円の公式を後世に残してない算額者がスパルタすぎますよ。 私みたいな数学が苦手な人のことも考えて欲しい!