法面登りたい欲ありませんか
そもそも、斜面を見かけたら登りたくなるほうだ。
いきなり心理分析の質問みたいな形で感情を吐露してしまったが、僕は断然、斜面を見かけたら登ってみたくなるほうだ。そういう人間だ。
いろんな意味でビビりだから実際に登ることはないのだけれど、斜面に対してそういう気持ちを抱いていることは確かだ。
そうかと言って登山やボルダリングを趣味にしたいとは微塵も思わないから不思議なもので、あくまでも普段の生活のなかで目にする斜面に興味は限定されるようである。
その点で言えば、上に載せたような棚田の斜面は勾配もさほど急ではないので、草木を掴めさえすればよじ登れそうだ。それってすごくワクワクする。
だって棚田は季節によってお米が収穫できたり、自然のアスレチックになったりするわけだろう。最近は田の中でキャンプをするのも流行っているそうだ。そんな振れ幅があるものってない。
じいちゃんちの田んぼ
できれば規模の大きい棚田で遊びたいが許可を取るのが大変なので、今回はおじいちゃんの家の裏山にある田んぼを貸してもらうことにした。
「田んぼを…こう…駆け上がるっていうのやりたくて……いいですか?」
唐突さには祖父も慣れっこだから、二つ返事で許可が出た。話が早い。
この田んぼの一番の推しポイントは、こう見えてプライベート空間だという点である。基本的には祖父宅の脇にある小路からしか上がってこれないので、これだけ開放的なのに他人と干渉することがないのだ。あと、米が穫れるのもいい。
このフィールドで飛んだり跳ねたりするのが今回の企画である。
本番ではSASUKEのようにノンストップで駆け抜けたいので、いくつかの要所を下見しておくことにした。
試しにジャンプしてみたらかなりスリルがあって楽しかった。写真で見るとヘニョヘニョだけれど、一人称視点ではかなり高いところから飛んでいる感じがして気分はロックマンである。
棚田の法面は石垣でつくられたものと土で固められたものの二種類が一般的だが、これは土で固めてある「土坡(どは)」の斜面である。土で出来ているので草があちこちから生えてくるほど柔らかくて、こういうときには安全で助かる。
せっかくなので草を刈っておくことにした。
下準備と予行練習はこれくらいにしておこう。一番傾斜のきついところも難なく登れそうだ。