「試合中に破れてしまわないか心配」という余計なおせっかいから始まった実験だったが、ラグビーのユニフォームは想像以上に強かったし、ひっぱりに対する反発は選手のパワーを少しサポートしていると言ってもいいぐらいだった。
正直なところ元々ラグビーには全く関心がなかった僕ですが、この実験をきっかけに、今や日本代表の試合の時は自分からテレビのチャンネルを合わせるようにまでなっている。ユニフォームへの興味というスポーツの入り口があるんだということも知った。
頑張れラグビー日本代表!とそのユニフォーム!
ラグビーのワールドカップが始まって、試合の映像を目にする機会が増えた。
今まで全然ラグビーに縁がなかった僕としては、見ていて1つ心配になったことがある。選手どうしの密集やタックルのとき、ユニフォームも思いっきりひっぱられていることが多い。あんな屈強な男たちがひっぱり合って、途中で破れちゃったりしないのだろうか。
各国を背負って戦っている選手たち。そのユニフォームが試合中だんだんビリビリに破れていってしまっては、威厳もなにもあったもんじゃない。余計なお世話だとは分かっているが、大丈夫なのかどうか、実際にひっぱって確かめておきたい。
「ラグビーのユニフォームは破れないのか、ひっぱって確かめてみる」。
これをやってみようと思って初めて気づいたのだが、そもそも僕は今まで服を「頑丈かどうか」という基準で考えたことがなかった。日常生活において、服を思いっきりひっぱられることなんてないからだ。
「身ぐるみをはがす」という言葉があるが、その場合でも服を破いてしまっては服の価値がなくなる。ひっぱらず丁寧に脱がせるべきだろう。
そこで、まずは普段着ているような服がどれほどの強さなのかを確かめてみることにした。
用意したのは綿100%のTシャツ。これを、僕と友人の2人で持ち、お互い反対の方向にひっぱる。漫画で見るバーゲン会場のイメージだ。
服を思いっきりひっぱるという初めての体験。そこにはTシャツしかないのに、何となく人の服を無理やり脱がしているような罪悪感があって、自然と力の加え方は慎重になった。
それでも、ひっぱるにつれて着実に、繊維がどんどん伸びていくのを感じる。
しかし、Tシャツは思いのほか強かった。繊維は間違いなく伸びていっているので、いつか破れるぞとは感じられるものの、そのいつかがなかなか来ない。私と友人の力のかけ具合は本気の綱引きのような後傾姿勢に。
これはもう伸びるだけなのかな・・。そう思い始めた5回目のトライ。
ベリッという音とともに首もとの生地に裂け目ができ、そこからは一気。Tシャツは一瞬でビリビリに破れた。
僕も友人も長身でひょろっとしていて、「やせ型」と言っていい体型。想像していたよりははるかに力が必要だったものの、こんな2人でも破ることができた。きっと屈強なラグビー選手がひっぱればすぐ破れるのだろう。ラグビーは普段着ではできない。
では本題。今度はラグビーのユニフォームをひっぱってみる。今回は日本代表のものを用意した。
これを、先ほどのTシャツと同じように2人で全力でひっぱる。
先ほどと同じように繊維が伸びていくことは感じるが、同時に逆方向に戻る力もほのかに感じ、「なんか服に抵抗されてるぞ!」という感覚になる。これが伸縮性というやつか。
その戻る力のためか、どれだけ頑張っても途中でロックがかかるような感覚があり、「これ以上は伸びないな」というポイントがやってくる。
最終的には先ほどと同じように本気の綱引きレベルまで力を加えたが、最後まで破れることはなかった。ラグビーのユニフォームは強い。そして、ユニフォーム自体も戦っていた。
ちなみに今回、サッカーのユニフォームでも試してみたのだが、綿のTシャツよりもはるかに簡単に破れた。
生地をよく見ると、サッカーのユニフォームは薄いメッシュの素材でできていた。かなり軽いし通気性も良さそうだ。
サッカーの場合、試合中にユニフォームをひっぱられることはラグビーほど多くはないのだろう。丈夫さよりも機能性が重視されていた。
スポーツのユニフォームはどれも丈夫にできている訳ではなく、ラグビーは特別強く作られているのだ。
これで、ラグビーのユニフォームはとても強いということが証明された。
しかし、これで終わってしまって良いだろうか。
この頑丈さの背景には、ラグビーのことを思うメーカーの皆さんの並々ならぬ開発努力があることだろう。
ワールドカップではみんなの注目は選手に集まっていると思うが、ぜひその選手が着ているユニフォームの戦いにも目を向けてもらいたい。そのためには、この丈夫さをもっと分かりやすくお伝えする必要がある。
そこで思い浮かんだのが、ジーンズのブランド「リーバイス」のロゴだ。
1本のジーンズを2匹の馬が左右にひっぱることで、「馬がひっぱっても破れないぐらい丈夫」ということを表している。なんと分かりやすいアピールだろうか。
しかし、今はカウボーイの時代ではない。
現代の日本で、人がまたがって乗る移動手段は何だろうか。そう、自転車だ。2台の自転車で左右にひっぱっても破れなければ、リーバイスのロゴと同じようにジャージの頑丈さを示すことができるだろう。
すぐに自転車とロープを用意し、
ジャージの左右それぞれ、袖から首へとロープを通し、
その端を自転車の荷台に強く結ぶ。
2台の自転車を反対向きに一直線にセット。
慌てて自転車を降りて確認する。良かった、破れていない。
ラグビーのユニフォームは自転車でひっぱっても破れない。狙い通りその強さをアピールすることができた。今後ラグビーのユニフォームには、この写真を必ずどこかにつけてもらって、強さの証としてもらいたい。
「試合中に破れてしまわないか心配」という余計なおせっかいから始まった実験だったが、ラグビーのユニフォームは想像以上に強かったし、ひっぱりに対する反発は選手のパワーを少しサポートしていると言ってもいいぐらいだった。
正直なところ元々ラグビーには全く関心がなかった僕ですが、この実験をきっかけに、今や日本代表の試合の時は自分からテレビのチャンネルを合わせるようにまでなっている。ユニフォームへの興味というスポーツの入り口があるんだということも知った。
頑張れラグビー日本代表!とそのユニフォーム!
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