特集 2019年12月22日

起点から終点まで3分で走る路線バス(デジタルリマスター版)

「直通」の字が眩しい

バス好きが多いことで有名なデイリーポータルZでは「少しでも長くバスに乗っていたい」という願望からか、過去に日本最長のバス路線や、都バス最長路線など、たびたび「長い路線バス」を取り上げてきた。
しかし、長い路線バスがあるのであれば、その逆、あっという間に終点についてしまう、短い路線バスもあるはずだ。乗って出発したとおもったらすぐ終点。そんなバス路線、一度でいいから見てみたい!

※この記事は2011年公開記事に執筆したものです。現在、中央市場は築地から豊洲に移転し、市01系統のバスもルートが変更され、新橋から豊洲まで運行しています。学05系統の学バスは、運賃が180円(IC178円)に値上がりしています。

鳥取県出身。東京都中央区在住。フリーライター(自称)。境界や境目がとてもきになる。尊敬する人はバッハ。(動画インタビュー)

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> 個人サイト 新ニホンケミカル TwitterID:tokyo26

短い路線バスとはどういうことか?

ひとくちにバス路線といっても日本各地に無数にあるけれど、今回は都営バスの中で最短の路線を調べた。

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みなさまおなじみ「みんくるガイド」


本当は、出入庫系統などの特殊な路線もあるらしいけれど、難しいことはよく分からないので、みんくるガイドをざっと見て短そうな路線をさがしてみた。

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新橋と築地市場を結ぶ「市01」系統

まず目についたのは新橋駅から築地市場までむかう「市01」系統のバスだ。

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上の地図は2005年のものなので、現在「朝日新聞社前」の停留所は「国立がん研究センター」に名称が変わっている。そしてこの路線は往路と復路でルートが違っており、さらに朝などの一部時間帯は停車しないバス停があるなど、短いわりにややこしい路線だ。ちなみに距離は起点から終点まで1.38キロメートルほどしかない。

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「市01」のバスは特別仕様だった

「市01」系統の朝は早い。

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発車準備中の「市01」


新橋駅始発が午前5時2分で、午後5時10分には最終バスが出てしまう。完全に築地市場のライフサイクルに合わせたダイヤとなっている。そして、実際にバスに乗ってみるとなにか違和感を感じる。

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普通のバスとどこが違うでしょう?


あれ? シートがなんだか変だ。

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シートがビニールだ!

なんと「市01」系統のシートは、すべてビニールでカバーされているのだ。実はこの「市01」系統のバスは、市場で働いていた人たちが水に濡れたままバスに乗っても大丈夫なように防水のためにビニールでカバーしてあるのだ。

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防水の他にも、魚の匂いがつかないようにするためでもあるらしい
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いつから働いてるか分からないおばあちゃん

ところで、新橋駅前でどんな人がバスに乗るのかしばらく観察をしていると、新橋駅前に戻ってきたバスにいちいち乗り込んで席を拭いてるおばあちゃんがいるのに気がついた。

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この人


シートをひと通り拭き終わったら運転手さんと談笑している。あのおばあちゃんはなんなんだ? 気になったのでちょっと聞いてみた。

--バスの中掃除してるんですか?
「そう、掃除してるの」
--毎朝ですか?
「毎日してるよー」
--いつごろからやってるんですか?
「さぁー、いつからだったかなー、ハハハ」
もう、いつからやってるのか分からないほど昔からやってるらしい。
あとでバスの運転手さんにもあのおばあちゃんは何者なのか聞いてみたけれど「さあ、委託して車内の掃除してもらってるんじゃないかなあ。もうずーっといるよ」とのこと。
都会にはたまにこんな仙人みたいなひとがいるからおもしろい。

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始発から終点まで時間を計ってみた。

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シンプルな行先表示

新橋駅から終点の築地中央市場まで約1.38キロメートル。はたしてどれぐらいの時間がかかるのか? 計ってみた。

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新橋駅前スタート
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市場内にグイグイ入っていくバス
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終点到着
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約5分44秒ほど

終点のバス停に停車した後、しばらくたってからストップウォッチを止めたので、正確ではないのだけど、乗車時間は約5分44秒ほどだった。

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ぶつかりそうでなかなかぶつからない


終点の「築地中央市場」の停留所は市場の中にあるので、正門から都バスが市場の中にグイグイ入っていく。ターレーやフォークリフトがうじゃうじゃ駆けまわる中を縫うように走る路線バスの姿はダイナミックでとてもすてきだ。
特に上の動画の最後のシーンで、バスがターレーにぶつかりそうで、ぶつからないところは見ていてハラハラしてしまう。

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さらに短い路線を発見

さて、タイトルの「179秒」で終点に到着するバス。実は「市01」ではなく他のバス路線だ。その、起点から終点まで3分かからないバス路線とは「学05」だ。

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「学05」は、目白駅前から約1.3キロメートル離れた日本女子大学までを結ぶ「学バス」といわれるものだ。
学バスとは大学などの学生が乗ることを想定した路線バスで、御茶ノ水駅から東大を結ぶ「学07」や、高田馬場駅前から早稲田大学を結ぶ「学02」などがある。学バスは運賃が通常よりも30円ほど安く、170円で乗ることができる。

女子大の関係者しか乗らないバスだった

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起点と終点以外バス停がない

この「学05」のすごいところは、起点と終点のバス停以外のバス停が無いことだ。始発のバス停を出発すると、いきなり「次は終点です」と案内されてしまう。ぶらり途中下車をしようにも、途中のバス停がないのでぶらり途中下車できない。

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日本女子大前の路線案内。起点と終点しかない。

「学05」の目白駅停留所に行くと、都バスの職員の人が立っていた。聞くと、ラッシュ時には交代で乗車整理をしているらしい。

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ラッシュ時は職員の人がバス停に立ってる
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ザル?


バス停をよく見てみると、なぜかバス停のポールの下にザルが吊るしてある。このザルは一体なんだろう?

--あのすみません、このザルってなんですか?
「あぁ、これは、たまにラッシュの時に乗客が多いと、後ろのドアから乗ってもらうことがあるんですけど、そのときに料金を入れてもらうザルです。で、集めたお金を私がまとめて料金箱に入れるんです」
--あぁ、なるほど。そんなにたくさん乗るんですか?
「そうですねえ。まず、7時台は小学生がたくさん乗って、今ぐらいの時間(8時ごろ)は幼稚園の子がお母さんと一緒に乗るのが多いですね、で、それが落ち着いてくると女子大の関係者や学生が多くなります」
「女子大直行のバス」と言っても、時間帯によってその客層が微妙に違ってくるらしい。

3分かからずに終点に到着

それでは、さっそく時間を計ってみたいと思う。

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目白駅スタート
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いきなり終点のアナウンス

目白駅前停留所をバスが出発するとすぐに「次は日本女子大前、終点です」と終点のアナウンス。今、起点を出たばっかりなのに、もう終点。まさにトワイライトゾーン。などと、ぼくがひとりで盛り上がっている内に、バスは目白通りを直進。途中いくつか信号で止まりながらもあっという間に終点に到着。

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ひとり興奮してる間に終点
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驚異のタイム2分59秒6!


そして出たタイムを確認してみると、なんと2分59秒6!

始発から終点まで3分もかかってない。カップヌードルならギリギリセーフかもしれないけど、どん兵衛だと完全にアウトだ。無理して食べたらおそらく「麺、固っ!」ってなっちゃう。


写真では伝わりにくいので、これはぜひ動画でご覧頂きたいと思う。とにかく目白通りを直進するだけというシンプルな経路が、3分弱という驚異のタイムにつながっているのかもしれない。


歩くと15分以上かかった

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目白駅前スタート! 
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千登世小橋の上から都電を見る
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やっと到着……15分かかった……

バスだと3分もかからずに到着した「学05」のルートを、念のために歩いて何分かかるか調べてみたところ、15分以上もかかった。
そうか、バスって歩くのよりも5倍以上も早いのか! もしかしてこれが「文明の利器」ってやつじゃないかしら? 人類ってすごい。

 

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