でも旅行ガイド本はあまり持ってない
海外旅行の本をため込んでいるというパインさん宅にお邪魔した。仕事柄顔は出せないので匿名でパインさんなんだが、ライオンである。
2DKの家のダイニングと1部屋に本棚が並べられ、図書室のようになっている。やはり趣味人には部屋のひとつやふたつ、趣味専用に与えないと本領は発揮できない。
家にお邪魔して置かれた本を見る。海外旅行本といっても改めてみるといくつもの小ジャンルに分けられるものだ。
旅行ガイド本もあれば語学本もあり、旅行エッセイも真面目なノンフィクションもある。地図帳も鉄道の時刻表もある。
旅行本と一口で言っても、改めて見ると沢山の本があることを見せられる。
パインさんの海外旅行ガイド系の蔵書は多くはない。数冊しかないので、むしろ人並みではないだろうか。
「行きたいんですけど時間がなくて想像とか妄想ですねえ」とパインさん。ガイドブックよりもかきたてられる本が好きで、とりわけ旅行系エッセイが好きなのだ。
旅行系エッセイでも、ロンドンでパブでの過ごし方とか、パリの喫茶店巡りとかはなく、あるのは「アフリカ日和」とか「さいはての中国」とか「重慶マニア」とか、泥臭そうな感じの本がある。
パインさん自身はどこに行くかというと、フィリピンで、それも南のミンダナオ島に行くことがよくあるそうだ。
本の影響も多大にありそうだ。
持ってる地図帳は変わり種
パインさんは、持っている海外旅行に関係する本を次々に出していく。次に出してきたのが地図系の本だった。
地図帳なので国とか都市とか書かれているのかと思ったが、違うのだ。
航空図鑑のロストバゲージの分別で興奮しはじめるパインさん。僕がパインさんを紹介したいのは例えばこうした発想が僕にはなかったからだ。
航空図鑑が好きだから、近所の空港に行きずっと飛行機を見てられる人である。しかしロストバゲージで興奮する発想はなかった。大きな学びがある。
パインさんの熱のこもった本の紹介は続く。今度は絵本。はらぺこあおむしもある。
はらぺこあおむしは世界の何処に?
たしかにそうだ。
太陽が大きく表現されてたり、カラフルでトロピカルな蝶が描かれているのは、南国で作者が見て描いたからだろうし、北国ではきっと生まれないし、作者がみた景色が世界の暖かなどこかにあるのだ。
僕は考えたことはなかった。フィリピンに行きたくなった。
パインさんの絵本で読む海外旅行講座は続く。次はマジックラビットという絵本だ。
聖地巡礼
パインさんの、本で読む海外旅行のきっかけをきいてみた。
「一番最初は、ミステリーがきっかけです。シャーロックホームズとアガサクリスティの英語の原書は読んでて」
――イギリス行きたいなーみたいな?
「旅するなら近場でインドとかオリエントとか楽しそうだな、とか考えてるところに下川裕治さんや蔵前仁一さんの本読んで、田中真知さんや高野秀行さんにハマって、今はなき旅行雑誌の旅行人とかGダイアリーを読むようになりました」
――欧州は遠いからインドやアジア。そこでインド本にたどり着き、アジアの泥臭い旅エッセイにたどり着いたんですね(笑)
「ファンクラブの会誌では、実際にアガサクリスティの舞台を巡るんですよ」
――なるほど聖地巡礼ですね。
「聖地巡礼なんです。いろんな本を見て、きっとこういうものが現地にあるんだろうなあとか、いろいろ下調べして想像を膨らませるんです。いろいろ見てから現地行ったほうが楽しいじゃないですか!」
――はらぺこあおむしもまた南国の聖地巡礼のための下調べなんですね!
お勧め本を聞いてみた
めちゃめちゃいろんな本がある中で一冊海外旅行本のお勧めを聞いてみた。
「それぞれよくておすすめしたいです!でも敢えていえば…」
出したのが旅の達人である下川裕治氏の「マレー鉄道途中下車の旅」
見せてもらうとなるほど納得。
世界を歩く個人旅行マニュアルを出していた下川裕治氏が、バックパッカーブームで陸路国境越え自分探しブームがあるときに、敢えて比較的簡単に乗車ができるマレー鉄道の写真と説明を日記風に書いた本だ。
マレー半島なのでところどころ建物に異文化が混ざった素敵な景色の街も点在。鉄道旅行もその時代の暮らしもエッセイも入った海外旅行の妄想がはかどる本だった。