特集 2024年6月11日

山形県米沢市の“食堂系”ラーメンが好きで仕方ない

米沢の食堂系ラーメンを色々教えてくれたイザワさんにその魅力を教わる

旅を終え、住まいに戻ってきた私だったが、心を米沢に置いてきてしまったかのようにあのちぢれ麵のことばかり考えてしまっていた。うまかったな、米沢の食堂系ラーメン……。

思い出してぼーっとしながら、「そうだ、イザワさんに改めて米沢の食堂系ラーメンについて聞こう」と思い、オンラインでインタビューをさせてもらうことにした。

38.jpg
米沢のラーメンが好きだというイザワさん

ちなみに、イザワさんは専門家ではなく、山形で暮らし、山形のラーメンとその他の食べ物とお酒とを愛するいちファンである。個人的見解ということを前提に聞いていただければ幸いである。

――米沢の食堂のラーメン、どこも美味しかったです。おすすめしてもらったけど行けなかったお店もたくさんあって、悔しいところもあるのですが。

まあ、おすすめした「かわにし食堂」とか、市街地から少し離れてるんで、車じゃないとなかなかね。今度ゆっくりお連れしますよ

――ちなみにイザワさんのいる高畠からだと山形市に行くより米沢市に行く方が近いんですか?

近いです。村山、最上、置賜、庄内って、山形は4ブロックの地域に分かれてるんですけど、高畠も米沢と同じ置賜っていうエリアなので

――米沢にラーメンを食べに行くことが結構ありますか?

あります。あの細ちぢれ麺っていうのは独特なので。高畠の北の南陽市まで行くと、また全然違うんですよ。福島の喜多方もそんなに遠くないんですけど、あっちはもう少し太い麺で、やっぱり違うんです。米沢の麺は面白いですね

いったん広告です

――今回、私が食べたような、あんな感じのラーメンばかりが米沢にあるわけではないんですか?

時代に合わせてというか、今っぽいラーメンもあります。最近だと、家系のラーメンができたりとか。南陽市の有名な『龍上海』の米沢店もあって人気ですし、逆に、まあ、ラーメンしかないぐらいで(笑)

――ラーメンの専門店もあって、蕎麦屋でも食堂でもラーメンを出すわけですもんね。どこに行ってもラーメンが食べられる。

やっぱり日常的に食べますね。うちは蕎麦屋をやってますけど、まわりは全部ラーメン屋ですから

――イザワさんが米沢のラーメンを好きになったきっかけはありますか?

30年前ぐらいになるんですけど、東京に行って学生をしてこっちに帰ってきて『山形ラーメン図鑑100』っていう本を買って、付箋を貼って食べ歩きをしたのがルーツになってまして

39.jpg
「みちのく書房」から1996年に出版された本

――そういう山形ラーメンのガイドブックがあったんですね。

はい。自分で車を運転して休みの日にここに載っている店に行ってみて、「これ全部行ったら面白いんじゃないか」って。結局全部は行けてないですけど、米沢の特色というか、麺の良さに気付いたんです

――当時、どんな印象でしたか?

ローカルなものというか、地域の人しか行かないような店が多かったように思いますね。食堂なんかは特にそうですよね。今回ナオさんにおすすめした中に「桂町 さっぽろ」っていう食堂がありましたけど、そこが一番うまいって言ってる人がいて「なんでうまいの?」って聞いたら「子ども頃からそこのラーメンしか食ってねえからだ」っていう(笑)そういうものなんですよね

――はは。なるほど、客観的に評価するようなものじゃないというか、だってどこも美味しいし!

店ごとにっていうと。スープそのものに分かりやすい特徴があるというよりは、やっぱり麺なんですかね。麺は店ごとに違う、まあ、もちろんスープも違うんですけど

いったん広告です

――あの麺は、しかし、柔らかいですよね。

でも、それも店によって違うところで、茹で時間が何秒とかで、硬めで出すところもあるんです。もちろん、柔らかいところもありますし、オペレーション次第というか。おばあちゃんが一人でやってるところは柔らかくなったり(笑)

――そうか、混んでる時は柔らかくなるとか。でも、あの麺はクセになるな。

多加水麺なんですよね。製麺所の麺を使っているところでも、その麺をさらに手もみしているところもあるみたいです。よりちぢれを出して、スープにからませるみたいな

――あれは機械には出せなそうな、均一じゃないちぢれ方というか。

もう、潰れかけてるみたいな麺、ありますもんね

――言葉は悪いけど、ちょっとビロビロっていう感じなんですよね(笑)それがたまらない。あと、店によっては麺を打って数日間寝かせたりもするんだと、調べていて知りました。

食堂ならではの面白さがある

――ちなみにイザワさんは食堂で食べるラーメンが一番好きなんですか?

いや、専門店でも食べるし好きなんですけど、そういう店だと、当たり前ですけど、ラーメンだけを食べるわけですよね。自分はもっと他のものも食べてみたくなるんです。たとえば「あたご食堂」っていう店なんかは、名物が「ふたご丼」っていう。変わった器に入って出てくるんです

40.jpg
「あたご食堂」の「ふたご丼」がこれ(写真提供:イザワさん)

――ははは。これはすごい!

ラーメンとかつ丼が一緒になっていて、丼を持ってスープを飲もうとしてもできないんですよ(笑)

――重たいし。

何軒かこういうものを出す食堂が米沢にあったんですよ。「アベック丼」っていう名前で出すところもあって、味噌と醤油のラーメンが両方食べられたり

――食堂だからこそ、ラーメンだけじゃなく色々なメニューがあって、それを組み合わせることもできるし。

はい。そういうところを面白がっているというか、ラーメンはもう、どこでも美味しいんですよ(笑)それ以外の部分を見るのが自分は好きなんです

――でも本当にそうですね。ラーメン一つとっても、メニューに「カレーラーメン」があったりして、あの麺のカレーラーメンってどんなだろう、とか気になります。

そうですよね。主旨が変わってしまうかもしれないんですけど、私がおすすめしたかったのが、米沢のはずれの、南の方にある「ふじ好食堂」っていうところがあるんですけど、ここはですね、ラーメンもあるんですけど、米沢牛の牛丼があって安いんですよ。モツ煮定食も美味しいし、もうどっちかっていうとそっち狙いで

41.jpg
「ふじ好食堂」の「牛丼」がこれ(写真提供:イザワさん)

――そうですよね。別にどこででもラーメンを食べているわけではない。

「エコー食堂」っていう、これも米沢のはずれの方ですけど、おばちゃんがやってるような店で、おすすめなんですけど、正直、ここはラーメンを食べたことがないんです

42.jpg
「エコー食堂」でイザワさんが好きな「焼肉定食」がこれ(写真提供:イザワさん)
43.jpg
「エコー食堂」の外観(写真提供:イザワさん)

――他のメニューも美味しいんでしょうね。

もしその食堂のラーメンだけが美味しかったらたぶんラーメンしか出さないようになってると思うんですよ。ストイックに味を極めるなら、その方がいいかもしれないのに、そうでもないところがいいんですよ

――いやー、本当ですね。色々なメニューの中にある中華そばだからこそ、自分は好きなのかもなとも思いました。いいなー米沢。

美味しくないところがないんですよ。昔からやっていて今まで残ってる店っていうだけで、美味しいんです。あ、そうだ。90年代頃に一時、米沢で「そんぴんラーメン」っていうのをご当地ラーメンとして売り出そうと、あちこちでやったことがあったんですよ。「そんぴん」ってへそ曲がりみたいな意味なんですけど、米沢ラーメンの特徴をあえてなしにして、塩味で海鮮がたくさん入ってるのとか。今も少しだけやってる店があって、それはそれで美味しいんですけど、そういう時代もあったりして、今残ってるのはスタンダードなところが多いんです

――なるほどなー!でも、それにしても、食堂って色々なメニューがあるわけじゃないですか。カレーを頼む人もいるし、それなのに中華そばの麺が自家製麵だったりするっていうのはすごいですよね。普通、食堂でラーメンを注文したら、たいていはできあいの麺で出て来る気がするんです、効率よく色々なメニューを出すために。だからそこに手をかけてるのがすごいなと。

たしかにそれはそうですね。古い店とか、こだわりがあるところが多いですよね。かなり仕込みに時間かかってるって聞いたこともあります

イザワさんが好きな食堂3つ

――どこで食べても美味しいのに愚問だと思うんですが、イザワさんが好きな食堂のラーメンを3つほど挙げてもらうとしたらどこになりますか?

うーん

――もう、ラーメン以外が美味しい食堂でもいいです(笑)

であれば、さっきも言った「エコー食堂」ですかね。あそこはいいです。ただ、ラーメンは食べたことがない(笑)焼肉定食ばっかりです。あと味の好みで言えば、米沢ではなく高畠の店ですけど、『志づ美』ですね。これが米沢ラーメンの名店であることは間違いないんで

44jpg.jpg
その「志づ美」の「中華そばセット」(写真提供:イザワさん)

あとは、そうですね。……「さつき食堂」も「山一食堂」も閉店してしまったし、「ふじ好食堂」ですかね

45.jpg
その「ふじ好食堂」の「らーめん餃子セット」(写真提供:イザワさん)

――どこも美味しそうですねー!こうして見ると「志づ美」のスープはかなり透明感がありますね。

そうです。スープはだいたい2つのタイプにわかれるんですよね。出汁が強めで薄味な、透明感あるのが「志づ美」とか「かわにし食堂」もそうで、塩ラーメンみたいな色のスープで、そういうところともっとカエシの効いた、色の濃いスープで食べさせる店があって

――そして、それぞれのスープに合わせた麺があると。

薄味のスープに絡む形状がちぢれ麺だと思うので、それで相性がいいっていうことなんじゃないですかね

――あそこに豚骨ラーメンのような細ストレート麺だったら違うんだろうな。

あーでも逆はあるんですよ。あの米沢ラーメンの麺で豚骨ラーメンを出している店もあるんで。紅しょうがも乗って

――食べてみたくなります。食堂のラーメン、奥が深いですね。また行かないとな。

たとえばナオさんが行った『山口屋食堂』の冷やし中華も美味しいんですよ

46.jpg
「山口屋食堂」の「冷やし中華」(写真提供:イザワさん)

ナオさんが行った小野川温泉にも、他に渋い店があって、そこは蕎麦屋で、今ZOOMの背景にしてるのもその店なんですけど(笑)いいんですよ。「花月」っていう店なんですけど

47.jpg
ZOOMの背景にするほど「花月」が気に入ったというイザワさん
48.jpg
その「花月」の「山菜塩ラーメン」(写真提供:イザワさん)

あと、小野川温泉のあたりは冬場にかまくらを作るんですけど、「龍華」のラーメンをそこまで出前してくれるんですよ

――かまくらでラーメン!絶対美味しい。必ずや改めて米沢に行きます!高畠にも行きたいです。

お連れしたいお店がいっぱいあるんで、ぜひ!

と、米沢の食堂系ラーメンの、というか食堂そのものの魅力がまた垣間見えたインタビューとなった。イザワさんありがとうございます!ちなみにイザワさんがやっているブログ「ステレオカセットキングダム」には米沢ラーメンや食堂のことがたくさん紹介されています。

山形県の南にある米沢は東京からも割とすぐで、新幹線に乗れば2時間ほどなので、みなさんもぜひあの独特の麺を味わってみてください!

<もどる ▽デイリーポータルZトップへ

banner.jpg

 

デイリーポータルZのTwitterをフォローすると、あなたのタイムラインに「役には立たないけどなんかいい情報」がとどきます!

→→→  ←←←

 

デイリーポータルZは、Amazonアソシエイト・プログラムに参加しています。

デイリーポータルZを

 

バックナンバー

バックナンバー

▲デイリーポータルZトップへ バックナンバーいちらんへ