特集 2024年6月8日

スマホを投げ入れてQRコード決済する賽銭箱

賽銭箱の中身はこんな感じ

前ページで色々と置いてきぼりな説明をしてしまったので、ここからは仕組みの説明をしておきたい。

もともとこれは去年の夏に会社で開催された開発イベントで作ったものだ。

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賽銭箱は木材を組み合わせてイチから作った。
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賽銭箱の「浄財」の文字をレーザーカッターで切り出したり。
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こうして出来上がったのがこちら。

やけに本物っぽくなっている。
というのも、チームメンバーにエンジニア兼僧侶がいて監修が入っているからである。

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それが佐藤くん。ハッピー佐藤という名前でも活動している。

佐藤くんの実家は1000年以上の歴史を持つお寺で、彼自身も僧侶をやっている。すげえ。

仕組みの話をするんでした。
賽銭箱を開けるとこのようになっている。

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いろいろ入っているな。

スマホに表示したQRコードを読み取るために、お店にもよく置いてあるリーダーを賽銭箱の中に設置している。

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そして、投げ込まれたスマホが必ずQRコードリーダーの読み取り位置に来るようになっている。

一番のポイントは、このQRコードリーダーを上下に取り付けているということだ。

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こんな感じでスマホを挟む格好で配置している。

これによって、スマホの画面が上下どちらを向いてもQRコードを読み取れるようになっている。

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そうそう、QRコードの説明もしないといけないですね。

QRコードはLINE Payのものを使っている。
これを読み取ると、LINE Payの決済処理を実際に行ってお賽銭が支払われるのだ。

ただし、今回はプロトタイプなので本当にお金が引き落とされたら大変だ。LINE Payにはサンドボックスというお試し環境があるので、そちらを使うことにした。
なので、本当にキャッシュレス決済の処理は通るのだけれど実際にお金が引き落とされることはないので安心だ。

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決済処理が完了すると、モーターでスマホを下に落としてお賽銭完了となる。

これまでの賽銭箱では現金が箱の中に貯まっていくが、スマホを箱の中に貯めておくわけにもいかない。それはさすがに奉納しすぎだろう。
なので、スマホは回収出来るようにした。もらうものだけもらって後は雑に返す、といった趣が出て気に入っている。

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お賽銭感を出すために、​​​​​寺社仏閣でよく見るこんなものも用意している。コアラのマーチの空き箱をデザイナーの子がいい感じにして作ってくれたものである。どこに実力を発揮させてるんだ。

決済が完了したときに、「ペイペイ」という音声を鳴らしている。
QRコード決済の音といえばPayPayのイメージがあり、LINE Payと食い違っているがいいことにした。

音声については「みんなでペイペイとモノマネして一番似ている人の声を採用しよう」とチームメンバーに提案したが、さらっと流されたので合成音声で作っている。結構本気の提案だったのに……。

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体験してもらおう!

せっかく作ったので、いろんな人に体験してもらいたい。
ということで、DIY・ものづくりの祭典であるMaker Faire Kyotoに出展した。
イベントレポートの記事を先月書いたので、合わせて読んでほしい!)

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佐藤くんと、同じくチームメンバーの橘くんと爲房の3人で参加。

ちなみに冒頭の動画で橘くんが神式でお祈りしてたので、佐藤くんが「まぁ、いいけどね……」と複雑な顔になっていた。

ところで多くの人に体験してもらうのはいいが、お客さんに自分たちのスマホを投げてもらうわけにもいかない。
そのため投げる専用のスマホを用意して、それを使ってもらうようにしている。

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それが先ほどからQRコードを表示しているこのスマホ。

京セラのTORQUE(トルク)という機種である。めちゃくちゃ丈夫なことが特徴で、まさに今回にぴったりである。
G03という昔のモデルを中古で買ったのだが、サイトには「最強への、あくなき挑戦。」というキャッチコピーが踊っている。頼もしい!

あとはもう存分に体験してもらうだけである。

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それ!
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いけ!

すごい。

みんなが賽銭箱にスマホを投げまくる、まさにこの絵が見たくて作ったのだ。
「未来のお賽銭です」とうそぶいて展示の説明をしていたが、こんな未来なら大歓迎である。

ただうっかり冷静になると異様な光景ではある。
かなりイロモノな賽銭箱を作ってしまったが、最後に佐藤くんに有識者としての意見を聞いておこう。

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佐藤「子どもたちが一生懸命に手を合わせてくれているのがかわいかったですね。イチ僧侶としては、仏教の一端に触れて縁を感じてもらえるだけでもとても嬉しいです!」

なるほど。これも時代に応じた仏縁なのかもしれない。

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子どもたちはだいぶ楽しんでいたしね。

ほんとに導入するなら大変だ

Maker Faireでは600人以上に体験してもらって大盛況だった。
お賽銭体験の先端をいった感じがして、個人的には大満足である。

ただ、PayPayなどは規約で寄付行為が禁止されている。
あとみんなが京セラのトルクを持っているわけではない。
実際のお賽銭として導入するなら結構なハードルがあるので、これを読んで乗り気になったお寺や神社の人がうっかりいたら注意してほしい。

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