不思議な場所だった
「行ったけど実はなにもない」といった場所がある中、ここまで不思議な場所はそうそうないかもしれない。オカルト好きな人やハイキング好きな人も行ってみて下さい。あと、これからの人生はトレジャーハンターとして生きていきたいと思ってます。こんにちには、インディージョーンズです。
エジプトにある古代の遺跡、ピラミッド。何もない砂漠に規則的に石が積まれた巨大な三角形が人々を魅了する。
なぜ、魅力的なのか、そこには数多くの謎とロマンが眠っているからだ。どうやって建てたのか、何の目的なのか、宇宙人が関わっているのではないかと謎は尽きない。そんなピラミッドが日本の広島にもあると言う。
まず説明をしておこう。日本のピラミッドとは広島県庄原市にある葦嶽山(あしだけやま)のことである。
元々、神武天皇のお墓ではないかと地元の人たちの間では言われていたが、古代史を研究していた酒井勝軍(さかいかつとき)によって、大変なことがわかった。
今回の参考資料である「日本ピラミッド超文明」によると、昭和9年3月に、酒井が梅田寛一という代議士から聞いた話が発端である。
「村の若者たちが山奥にそびえるとある山に登ったところ、山頂に巨石たちが並んでおり、そこに宝が埋まっているのではと掘ったのですが、石垣や石材しか出ないので中止したそうです。その巨石には意味不明な文字が刻まれていたそうです。」
その話を聞いた酒井は、昭和9年5月に調査を行い、「ここが2万5000年前に建造された日本のピラミッドである」と宣言したことから話題となった。当時は新聞などでも話題になり、全国から人が殺到したそうだ。
これは2001年に発売されたカードダス(ガチャガチャカプセルのカード版みたいなもので1回100円で5枚ぐらい出てくる)の「U.M.F. 未確認ファイル」というシリーズで出てきた葦嶽山の写真。絵はがきが時代を経てカードダスになった。
なぜ、エジプトで有名なピラミッドが日本にあるのか。酒井は元々、仮説として「ピラミッドの発祥地は日本であり、2万年前から3万年前の超古代にさかのぼる。そして、エジプトのピラミッドはこの日本発祥の原型的なピラミッドが伝播したもの」と考えていた。
逆に日本のピラミッドが、エジプトへと伝わったという考えである。現在、ピラミッドはお墓として存在していたと言われているが、酒井は太陽の神をまつる神殿として存在していたと考えていた。
古代には日本民族が世界中を支配しており、天変地異でその文明は崩壊してしまった。天変地異によって、それぞれの地域に孤立したが、エジプトの地域に孤立した子孫たちが山のないエジプトに神殿を作ろうと思い、できたのがピラミッドであるという。
また、東方の故郷を偲んで作られたのがスフィンクスであり、スフィンクスの視線の先は日本列島と交差するらしい。トンデモ理論ではあるが、ロマンがある。
酒井は日本のピラミッドの定義として、以下を上げている。
①整然とした三角形の山であること。これは全て石材で築かれている必要は無く。自然の山であっても人工の手が加わったものであってもかまわない。
②その頂上付近には球型の「太陽石」と円形、あるいは方形にとりまく列石が存在する
③ピラミッドには本体である本殿とは別に遙拝(ようはい。遠く離れた所から神仏などをはるかにおがむこと)するための拝殿(はいでん)という施設が伴うことが多い。これは、たいていの本殿に相対する低い山である。
④この拝殿には、東西南北の方位を示す方位石、太陽の光を反射するように研磨した鏡石、ドルメン(2つの巨石の上に1枚の平らな石を置いたもの)メンヒル(立石)などが存在する。
これらの条件がそろったものをピラミッドであると定義づけて、その条件に当てはまったものが葦嶽山である。
「え、エジプトのピラミッドには頂上に玉なんてないじゃないか!」という批判があるだろう。そう、焦らさんな。
実はフランスの考古学者アンドレ・ポシャン著「ピラミッドの謎は解けた」にはギリシアの数学者マルクスがエジプトの神官から聞いた話によって復元したという、ピラミッドの頂上に置かれた直径1.87mの球体の図が載っている。本来はピラミッドにも丸い物体が上についていたらしい。
また、他の石たちも時が経つにつれて、崩壊してしまったそうである。もらったおせんべいをカバンの中に入れていたら、粉々になっていたみたいなことである。
そんな葦嶽山を見に行きたい。そして、登ってみたいと思い、広島へと向かった。
2016年に広島カープがリーグ優勝をし、その際に「神っている」という流行語が生まれた。「神」という言葉。もしかしたら、民衆たちが無意識の中で神様からの言葉を受けたのかもしれない。この仮説を思いついたときには興奮して、新幹線でアイスを買ってしまった
そんなことを考えながら広島へと向かう。
広島に着き、急いでバスへと乗り換える。しばらく進んだとき、突然スマホが震えた。よく、心霊スポットに行くと機械が故障したり、不可解な現象が起きることがあるという。なにかの力の影響だろうか。
2時間ほどで庄原という場所に着いた。誰も降りる人がいない。そして、お店がない。
駅前は改装中で人の気配がない。不安になりながらも町を少し歩いてみる。
すると、有名人の手形があった。こういうミステリーな記事で手形が出てくるとちょっとギョッとしません? 宇宙人の仕業とか考えちゃいますよね。
浜田省吾の手形に勇気をもらったあと、葦嶽山へ向かう。バスがきっとあるだろうと探したがなく、なら歩いて行こうと調べたら、4、5時間かかるらしい。その距離はロックじゃないのでタクシーで向かう。
ーーー元々、地元の人の間でもピラミッドと呼ばれていたんですか?
「山があったのは知ってたけど、キノコを採りに行くだけでまさかピラミッドだとは住んでいる人たちも知らなかったらしいね。昭和初期にブームになって、そこからまた平成の初期ぐらいにもブームになったな。」
ーーーブームになったとき、何か町おこしとかしたんですか?
「看板を立てただけ。イベントとかを開催することもせず、ピラミッドまんじゅうみたいなものを作らなかった。でも、昔は山から湧いて出た地下水をくんで「ピラミッドの水」として売っていた。でも、数年でなくなったね。」
あったら飲んでみたかったピラミッドの水。不思議なパワーがつきそうである。
ブームの頃は人が多く訪れてきたが、昔は道かどうかもわからない獣道を1時間以上歩かなければならず、その大変さに観光客が段々と減っていき、物好きな人しか来なくなったそうだ。
しかし、今では舗装をされて途中まで車で行けるようになり、山の中も整備された道が作られたことで30分ほどで頂上へ行けるようになった。高齢の方々がハイキングに来ることも多いそうだ。
「本当はこの山の近くにホテルを取って、UFOの観察をしようかなと思っているんですよ。」と伝えたら「いないない!見えないよ」と言われた。ちょうどホテルが取れなかったのでよかった。宿泊していたら無駄に夜空を見上げてポエムを書くところだった。
しかし、地元ではUFOを見た人も何人かいるそうで、中には頂上にUFOが降りたのを見たという人もいるらしい。
また、こういう土地のせいなのか、こんな怖い話も聞かせてくれた。
「昔、知り合いが亡くなったとき、その亡くなった本人の携帯から亡くなった時間に着信があったことがあったな。その人の奥さんにこのできごとを話したら「なんで私にはかかってこなかったんだ!あんなにお世話をしたのに!」って怒ってた」
なんだろう、怖い話だが少し心温まるエピソードである。
到着した。ここからは歩いて山頂を目指す。聞いた話によると調査などでスーツに革靴で行った人もいるらしいのでそこまで険しい山ではないのだろう。
心配していてもしょうがない。30分歩けば頂上に着けるので出発しよう。スーツで行けるぐらいの山ならなんともないだろう。
山である。思っていた以上の山だ。軽い散歩ぐらいのつもりできたが、もう息が上がっちゃっている。これでマムシが出てきたら、絶体絶命だ。藤岡弘探検隊みたいになってきた。
そして、頂上に近づくと木々だけではなく、石も見かけるようになってきた。いよいよピラミッド感が出てきた。
鷹岩から、10分弱歩くとようやく目指した頂上だ。頂上にはなにがあるのか。
頂上を見渡すと草木が円形状に生えていない。もしかしたらUFOが降りたのかもしれない。
絶景が広がる。しかも、町と比べて涼しくて過ごしやすい。いっその事、ここに住んでしまいたい。そして、UFOを観察しながら余生を過ごしていきたい。
葦嶽山がピラミッド本殿で、北側の鬼叫山が拝殿らしい。そこに不思議なスポットがあるのだ。むしろ、そこを見た方が楽しいかもしれない。
しばらく歩くと、日本ピラミッドの案内板が出てきた。遺跡の地図を見ていたら、ドラクエがやりたくなる。
しばらく進むとそれは突然現れた。これが日本ピラミッドの遺跡たちである。まずはドルメンが見えてきた。
案内によると、「机のような巨石が重ねてあり、この巨石構造は、世界各地の古代文明の遺跡と同じもので、この場所の様子が葦嶽山に供物を捧げたように見えることから供物台の名前がつけられた」と書いてある。
海外になるとこのドルメンがお墓になっている場合があり、中から石器や人骨などが出てくることもあるそうだ。
ロボットアニメならきっとライオンのロボットが出てきそうな名前の岩だ。これが見て驚いた。
エジプトにあるスフィンクスみたいだ。日本からエジプトにピラミッドが渡った話、本当にあるかもしれない。そして、まだまだ不思議が終わらない。
方位石は十字に切れ目がある。これがなんと東西南北を表しているという。そんな不思議なことがあるのかとスマホのコンパスで調べてみて驚いた。
それからも不思議な石が設置されている。まるで石のテーマパークだ。毎日来たいぐらいわくわくする。
余談だが、途中まで送ってくれたタクシーの運転手さんいわく「鏡石のところはマムシが多いから気をつけてね」と注意された。この日は出会わなかったが行く人は注意してほしい。
神武岩には元々、3本の柱のような岩が立っていた。しかし、この岩を見つけた村人が神武天皇の墓に埋まっている宝を求めて、土を掘り起こすために柱を壊したそうだ。そのため、今は一本だけが立っている。
この柱の上にはくぼみがある。そこには夜でも輝く石がはめられていて、鏡石はそれを反射して光り輝いていたそうだ。
自然にこんな形になったとは思えないこれらの石たち。高い山の上にこれらの遺跡を作ったのはなぜなのだろうか。天皇のお墓、神様との通信をするための遺跡など色々な説明がされているが、本当の事実はまだわかっていない。そして、不思議なできごとが一個だけあった。山の形を撮った写真がないのだ。撮ったような気がするのだが、疲れて取り忘れたか、はたまた何か我々の知らない力が働いているのか、信じるか信じないかはあなた次第。
「行ったけど実はなにもない」といった場所がある中、ここまで不思議な場所はそうそうないかもしれない。オカルト好きな人やハイキング好きな人も行ってみて下さい。あと、これからの人生はトレジャーハンターとして生きていきたいと思ってます。こんにちには、インディージョーンズです。
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