まずはこの図を
下の写真が問題の三原色の図。
青(シアン)、黄色、紫色(マゼンタ)の三色の重ね合わせによって、あらゆる色を表現できるということが示されている図だ。
たとえば、この部分。
水色に黄色を混ぜると緑色になる、ということはよく知っているし、感覚的にも分かりやすい。
学校の絵画の時間、ぼくは水彩絵の具で水色と黄色の配合をいろいろ変えてきれいな「エメラルドグリーン」を作るのが好きだった。南国の海を思わせるような鮮やかな緑色に、なにかの憧れを感じていたんだと思う。
それに対し、よく分からないのがこの部分。
紫に黄色を混ぜると赤になる、と主張している。
なんだなんだ。意味がよくわからない。
これまでの人生の中で、紫に黄色を混ぜようと思ったことはあっただろうか? ちょっと記憶にない。しかもその2色から赤を作ろうとしたことなど。
だって赤はつくる色じゃなくて、もともと絵の具セットの中に入ってる色だから。バーミリオンとかいうかっこいい名前で。
実際に混ぜてみよう
ぼくのここまでの疑問は、絵を描くのが好きな人にとっては当たり前のことなんだろうと思う。いまさら小学校の絵画の時間のやり直しか、と。
でもぼくはこの混ぜ合わせが理解できないし、感覚的にもさっぱりわからない。なので、実際に絵の具を混ぜ合わせて確認してみた。
紫を黄色を混ぜてみると、ちょっとだけ茶色っぽい、オレンジのような色になった。
なんだか中途半端な色だ。少なくとも赤じゃない。でもなるほど、元の2色からは想像の難しいオレンジっぽい色になるということは分かった。
ただ、混ざってゆく過程で、色はまるで化学反応のようにとつぜん変わってしまったようにみえた。紫と黄色が赤になるということはまだ感覚的には納得できない。
2色の混ぜ合わせがじわじわと1つの色になるところを見ることはできないだろうか。
市松模様を遠ざかりながら眺めてみよう
雑誌のカラーページでは、三原色と黒のごく小さな無数の点の組み合わせで多彩な色を表現しているらしい。
ということは、普通の大きさの市松模様を描いたものをすごく遠くから見ても、同じように色が混ざって見えるはずだ。
ごく近くから見る市松模様から、遠くで見る色の混ざった状態まで、少しづつ遠ざかることで、いま色が混ざった!という瞬間を見つけたい。
新宿御苑で実験
そういうわけで、新宿御苑に移動して実験をした。
黄色と紫の市松模様の紙を持って立つ。知人に協力してもらい、距離を見ながら少しづつ遠ざかってもらう。
どのくらい離れると色が混ざって見えるだろうか。
まずは、すぐ目の前の地点から。まだまだ市松模様にしか見えないけど、このページの最初の写真にくらべると、はやくもオレンジっぽい感じが漂っている。
うん、だいぶオレンジっぽい。でもまだギザギザな感じは残る。
写真だと潰れてしまって単色のオレンジに見える。このとき、肉眼でもほぼオレンジ色に見えたらしい。
40m以上は、もはや変化がない。オレンジ色の板がただ小さくなっていくだけだ。
こうして見ると、黄色と紫を足すとほんとに赤っぽくなるんだ、ということが分かるような気がする。イメージとしては、黄色い下地に、紫色が赤みを足していく感じだ。
他の色でもやってみた
ついでに、青と黄色の組み合わせでもやってみた。これは普通に緑色にみえてくれるはずだ。
一マスの大きさを半分にしたため、色が混ざってみえるまでの距離もだいたい半分になった。
一マスの大きさ1cmに対して、距離は10m。つまり、隣り合う色が、目からの距離の1000分の1くらいになったときに、目はそれをひとつの色と感じるということなのかもしれない。
そもそも三原色って何か
参考までに調べてみたところ、19インチの液晶モニタの場合、光の三原色を持つそれぞれの画素は約0.3mmの幅で並んでいるらしい。
モニタから目までの距離を30cmとすれば、その倍率は約1000倍。上の実験の場合と同じだ。
そもそも光の3原色が赤、青、緑なのは、人間の目の中に、その3種類の波長に対応する細胞があるかららしい。たとえば猫は2種類の色に対応する細胞を持っているため、2原色の世界に生きているとのこと。そしてごく近い細胞に光の刺激が入ってくれば、それを2種類がまじった1つの色、と感じるのかなーと思う。
世の中の物理が3原色なわけじゃない。人間が3原色なだけだとは。色もまた脳のつくりだした錯覚なり、とか思った。