ヤッホーは少ない
というわけで思い込みはよくないということが分かった。ヤッホー、多いと思ったんだけどなあ。
あとは、同じポーズの写真を並べるのが単純に楽しかった。実物大のポスターをポーズごとにまとめて並べたら壮観だろうなあ。そういう展示見てみたい。
ポスターの人物がとるポーズは特徴的だ。一本指を上に向けていたり、なんとなく顎をさわっていたり。そこにはどんな傾向があるのか、街のポスターをかたっぱしから調べてみた。
街角に貼られたポスター。女性がヤッホーのポーズで何かを呼びかけていることが多いような気がしていた。
しかしそれは本当だろうか。こういうのって思い込みが大きくて、実際はそうでもなかったりするのだ。長年気になっていたので、この際、かたっぱしから調べてみることにした。
というわけで街にやってきた。街を歩いてポスター的なものを見かけたらすべて写真に撮って収集するのだ。
紙の印刷物でなくても、パネルでも、薬局のPOPのようなやつでも、ぜんぶポスターということにして集めた。
で、そんなふうにしてポスター150点を収集して、集計してみた。
するといくつかの傾向が分かった。
まずはポスターのポーズについての「あるある」を紹介したい。
ポスターが何かのサービスを紹介している場合には、人物のポーズはそのサービスを受けている場面となることが多いようだ。
新幹線のチケットであれば、ゆうゆうと座席に座っている場面。
ジムであれば、体を鍛えている場面、など。
ただし、サービスによってはその場面をそのまま表現することが難しい場合があるのか、結果としてポーズが抽象的になることがあるようだ。
歯科のポスター。ポーズの意味がよく分からない。歯を健康にすると野菜もわしゃわしゃ食べられる、ということだったりするのか。
これも歯科だ。この黒いくちびると手のポーズからどのような医療内容を想像すればいいのか。さっきのジムの分かりやすさにくらべると、ポーズが高度に抽象化されているのが分かると思う。
よく考えるとありえない瞬間が切り取られていることも多い。
屋外で、笑顔でパソコンを抱きしめたことがありますか。わたしにはない。
茶畑でお茶を飲むことについてはどうですか。これも実際にはあまりなさそう。
あと、笑顔で授業を受けがちだ。
たしかに笑ってしまう瞬間はある。でも、微笑みながら黒板を見ている生徒というのもあまりいないんじゃないかと思う。
さて、では集計結果を見ていきたい。
事前の想像では、ヤッホーのポーズのように、何かのメッセージを伝えるポーズが多いと思っていた。しかし実際には、「商品を持つ」という直球なポーズがそれらよりも多かった(15%)。
確かにそうだ。ポスターをわざわざ貼るのは何かを宣伝したいからなのだから、その対象が商品であれば載せたいだろう。であれば手に持たせるのが自然だ。
鞄、おせち、ギター、パソコンなど、ポスターの人物はあらゆる商品を持つ。言われてみれば、そりゃそうだよなと思う。
そして最も多かったのは、「手を顎に添える/手に顎を乗せる」というポーズだった(16%)。
いわゆる「歯痛ポーズ」というものだろうか。とくに目立つのが化粧品の広告だ。今回見つけた化粧品の広告の場合、なんと72%が手を顎に添えていた。
化粧品やプリクラのように、顔が主眼となる商品では顔を大きく載せたいだろう。その際、顔だけでなく手もあったほうが、仕草や美しさ、かわいさなどを表現しやすいのだろうと感じる。
上の例でいえば、右上のポスターはエレガントな感じが、右下は少し甘えた感じが伝わるように思う。
人差指を立てるポーズもある(6%)。大泉洋が「ではここでクエスチョンです!」といいながら「世界ふしぎ発見」の真似をするときのポーズだ。
人差指だけを立てるのはどういう意味だろうか。なんとなく「ここが重要です」といっているように感じる。それから、数字の1から1番の意味もあるのだろう。
右上の例を見ると、純粋に上の方を指差すという意味もあるようだ。なるほど。それ以外は、ここに注目、というくらいだろうか。いろんな用法があるようだ。
手の指をそろえて外側に傾けるポーズ(5%)。バスガイドが「右手をごらんください」というときのやつだ。
交通安全と、中小企業への助成金。なにか抽象的なものをお知らせするときに使われるのだろうか。
エステ、銀行、ベビーカーマーク。サービスのような形のないものをご案内するポーズなのかもしれない。今回調べた限りでは、このバスガイドポーズ(勝手に命名)をしているのは全員が女性だった。
あとはもう多様なものが少しづつある。
敬礼していたりバッテンしていたりと、ポスターの内容に応じて個別のポーズをとる。ここは無限だ。
じつをいうと冒頭で触れた「ヤッホー」のポーズは実はあの一例しかなかった。思い込みだったのかもしれないし、まだまだ調査が少ないというのもありそうだ。
とここまで紹介してきたが、じつのところ、バスガイドみたいな分かりやすい「手のポーズを取らない」というのが実は一番多い(20%)。
笑顔でこちらを見る。
真顔でこちらを見る。
真顔で遠くを見る。
笑顔で遠くを見る。
まあ、こんな具合だ。
で、こういうやつの場合、どんな表情でどこを見るのかというのがポーズとして重要なのだろう。(笑顔で、真顔で)x (こちらを見る、遠くを見る)の4通りで、それぞれ少しづつ意味が違っている。
笑顔でこちらを見ていると、あなたとともにいますよ、という感じがするし、真顔で遠くを見ていると、私は未来を見据えています、のように感じる。
ここまでをまとめてみる。
手のポーズは、なしが多い。次いで顎に添える、商品を持つとなる。
絵的に重複するので紹介しなかったが、「商品以外を持つ」というのも多い。たとえば旅行のポスターでハイキング姿の人がステッキを持っていたりする。だから、「何かを持っている」というくくりで数えるとそれが最大勢力だ。
その他、こういうポスターでは女性が多いような、笑顔が多いような印象がある。それは本当か、ついでに数えてみた。
男女比は、女性が75%、男性が25%だった。表情の割合は、笑顔が65%、真顔が22%。うん、だいたい想像どおりだな。
というわけで思い込みはよくないということが分かった。ヤッホー、多いと思ったんだけどなあ。
あとは、同じポーズの写真を並べるのが単純に楽しかった。実物大のポスターをポーズごとにまとめて並べたら壮観だろうなあ。そういう展示見てみたい。
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