知らない曲が6000曲もあったら楽しい
東大門のきらびやかさに比べ、東廟のグレーがかった地味さは否めない。しかし、この街は、地味ながらも、かざらない普通の韓国がちょっとだけみえるような気がする。
そんな町に、ポンチャックマシンが大量に売っているというのもおもしろい。
ポンチャックマシーンには、日本の演歌や歌謡曲に似ているけれどもちょっと違う。パラレルワールドの聞いたこと無い音楽が、6000曲も入っているとおもうと嬉しすぎてたまらない。
たぶん、一生かかってもぜんぶ聞けないかもしれない。
韓国ソウルの東大門といえば、ソウルでも指折りの繁華街だが、その東大門のもう少し外れの方に東廟(トンミョ)という町がある。
東廟にあるガラクタ市が、めちゃめちゃ楽しいので紹介したい。
東廟は、東大門の隣町という感じの町だ。
上の地図の赤い部分が、東廟のガラクタ市がある場所。
廟というほどなので、なんらかのお墓なのかな。とおもっていたが、どうやら三国志の英雄・関羽を祀った関帝廟ということらしい。なぜ、伝聞風なのかというと、東廟自体が閉鎖され、中に入ることができなかったからだ。
東廟そのものはさておき、東廟のなにがすごいかっていうと、豊富すぎる品揃えの、めちゃめちゃでかいガラクタ市がほぼ毎日行われているのだ。
東廟のガラクタ市は、この東廟の周りを取り囲むように、毎日行われている。
店舗を構えて営業している店もあれば、路上に商品を並べて売っている人もいるが、とにかくありとあらゆるものが売られている。
古着はまだわかるが、誰かがはいた靴まで売っている。どんなひとが買い求めるのだろうか。
腕時計、食器、電気ドリルだ。脈絡のない取り合わせがすごい。ちなみに腕時計は全部中古だ。
唐突に血圧計があるのがすごくよい。こういった脈絡の無さもシブくて良い。
ひと目見て、絶対動かねえだろうとおぼしきカメラや家電製品が売られている。
露店でガラクタを売っている、似たような感じの店は、大阪やバンコクでも見かけたことがあるけれど、こちらのほうが、だんぜん規模がでかい。
売り方も、店の個性だろうか、整然と並べて売っているところもあれば、上の写真のように、適当に積み上げて売っている店もある。これぐらいデタラメにこんもり積み上げてあると、富士塚感が出てくる。
そんななか、おっさんたちがやたら群がっている一角を発見。
ドライバー? なにか特別なものかもしれないが、ドライバーである。なんなんだろう。
ちなみに、新品の工具を売る店はちゃんとある。
ただ、この工具を売る店、中に入ると、くたびれすぎたキャラクターのキーホルダーも売っており、混沌さを物語っている。
韓国のなんらかのキャラクターだろうな……ということは想像できるけれども、さっぱりわからなくておもしろい。
一瓶、500円の香水を売るおじさんがいたと思うと、ケーブルをどっさり売っている露店もある。
この東廟で売っているガラクタは雑貨だけではない。古本もけっこう取り扱う店がある。
モンゴル軍に蹂躙された後みたいな古本屋だが、店番の人がいたので、ちゃんと営業はしているようであった。
ガラクタ市をてきとうにみていたところ、ポンチャックマシンを売っている露店を発見した。
「ポンチャックマシン」とは、トランジスタラジオほどの大きさのFMラジオつきMP3プレイヤーのことだ。
こんな、ダサ懐かしい、いい感じの曲が、6000曲ぐらい入っているというとんでもないラジオだ。
韓国ではよく、屋台のおばちゃんがこれで音楽を流しながら商売をしていたりする。
露店のおじさんにいくらか聞くと3万ウォンだという。3000円、CDアルバム1枚が3000円ぐらいすることを考えると安い。買った。
おじさんに、韓国歌謡の曲データは、入っているか聞くと、入っているという。
東廟のガラクタ市、どうも露店をよく見てみると、ポンチャックマシンを売ってる店がめちゃめちゃあることに気づいた。
別の露店のおばちゃんにマシーンの値段を聞いたところ、さっきと同じ3万ウォンだった。せっかくなのでここでも一個買う。
その他の露店の店でもいくつかマシンを購入。計4台購入してしまった。
ホテルの部屋に帰ってあらためて中身をみてみる。
右上の冊子は、サービスで付けてくれたSDカードに入っている曲のタイトルが書いてる小冊子だ。
SDカードは買った場所により種類が違い、収録曲数に微妙な違いがある。
とはいえ、いずれも6300曲以上収録されているわけで、どう考えてもめちゃめちゃすごい。
日本で、昭和歌謡が6000曲入ったラジオが3000円で売ってたら買うでしょう。ぼくは買いたい。そういうことだ。
曲ナンバー0001〜0100までの百曲は、左側の方は「人気トロット」、右側は「最新人気曲」と書いてある。
そしてリストのうしろの方を見ると。どうやら最後に「メドレーコレクション」が入ってるか、入ってないかの違いのようだ。
トロットとは、韓国の大衆音楽のジャンルのひとつで、ポンチャックというのもトロットの一種になるようだ。
トロットは演歌のようなヨナ抜き音階の曲調だが、日本の演歌よりもリズムが早いものも多く、韓国のおばちゃんやおじさんは、トロットで踊るのが大好きだ。
今回、韓国に行くとき大阪からフェーリーに乗って行ったのだが、夜はフェリーの宴会場で、トロット(韓国歌謡)のダンスパーティーが盛り上がっていた。
東大門のきらびやかさに比べ、東廟のグレーがかった地味さは否めない。しかし、この街は、地味ながらも、かざらない普通の韓国がちょっとだけみえるような気がする。
そんな町に、ポンチャックマシンが大量に売っているというのもおもしろい。
ポンチャックマシーンには、日本の演歌や歌謡曲に似ているけれどもちょっと違う。パラレルワールドの聞いたこと無い音楽が、6000曲も入っているとおもうと嬉しすぎてたまらない。
たぶん、一生かかってもぜんぶ聞けないかもしれない。
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