デジタルリマスター 2023年1月29日

木の船に乗ってじゅんさいを採る(デジタルリマスター)

7月末からしばらくの間、秋田に行ってきました。初めての秋田でした。

知り合いのツテをたどって、いろいろな体験をしてきました。子供の夏休みか、ってくらいにいろいろなところに行かせていただきました。ぼく、とてもたのしかったよ。

というわけで今月は、秋田の思い出を小出しに記事にしていこうと思います。第一弾は「じゅんさい採り」。これが予想外に興奮したんだな、まったく。

2007年8月に掲載された記事を、AIにより画像を拡大して加筆修正のうえ再掲載しました。

1970年群馬県生まれ。工作をしがちなため、各種素材や工具や作品で家が手狭になってきた。一生手狭なんだろう。出したものを片付けないからでもある。性格も雑だ。もう一生こうなんだろう。(動画インタビュー)

前の記事:あの給食のプリンを再現(デジタルリマスター)

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別天地

秋田新幹線の終点から在来線で約1時間、三種町は森岳というところに来た。男鹿半島の付け根、元八郎潟の上辺のあたりだ。この地の名産はじゅんさい。三種町は全国一のじゅんさいの生産量を誇る。

どんな場所かは下の写真をご覧ください。トトロが出てきそうなところだ。

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緑が濃い。空がでかい。

ところでさきほど「全国一の生産量を誇る」と書いたが、それは後々わかったこと。「じゅんさい」の存在は知ってはいたが実際に食べたことはなく、「葉っぱの周りに透明なヌルヌルがついてて、つるっとした食感で、ハスみたいな感じで沼に浮いてるんでしょ?」といった程度の認識。今後親しくなる機会も特に訪れなさそうな食べ物、と思っていた、正直。

この日も、他の用事が終わって、さあもう夕方だけどじゅんさいでも見に行ってみるか?と、当地の知人Tさんに連れられていったに過ぎないのである。と・こ・ろ・が。

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うん?つみ採り「体験」?じゅんさい「狩り」?
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看板を横道に入っていくが、果たして・・・といった風景。
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沼です。じゅんさい沼。
ここを入っていくと・・・。
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広い広いじゅんさい沼が広がっていた。実際の感覚ではこの写真の3倍の広さだろう。

日中の日差しと暑さで半分とろんとしていた私だったが、この光景に、車を降りるなり思わず沼へと駆け出していた。「ヒョーオゥ!」と何ごとか叫びながら。

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自分がカエルに生まれたなら、ここのカエルさんになりたい。
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タニシどんもいた。沼の水は、地下水循環させてきれいに保っているそうだ。
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そして昔話の世界へ

なんでもこちらのじゅんさい沼、個人の所有ではあるが、つみ採り体験できるよう一般人に開放しているのだ。1人1500円の料金だが、営業時間中は何時間でもずっとつみ採りができ、しかもほぼ無人だ。善意を信頼した証しの料金箱が、誰もいない事務所においてあった。

沼で一人作業しているここの所有者らしきおばさんに声をかける。

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しゃれた木のテーブルも置いてある事務所(らしきところ)。
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手前のビニール袋に名前・住所を書いて料金箱へ。
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最初セルフサービスかと思って冷蔵庫開けちゃった。
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奥にはソバの調理スペース。夕方だったのでもうソバは店じまいのようだ。

沼にはおばさん一人のみ。一日ずっと作業していたと見えて、たくさんのじゅんさいの入ったバケツを手元に置いて、木の船でプカプカ浮いていた。

営業は8時半から16時まで。日も傾き、時間は残すところあと30分ほどしかない。特別におばさんの厚意で、3人で1人分の値段でいいよということに。ありがたくお金を箱に入れ、木の船に2人一組で乗り込む。

船、ったって、四角いタライみたいなものですよ。木の箱です。底、まったいら。

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紫外線対策万全。オーナーの船は特別仕様なのか、船っぽい形である。
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これまた木のイス2つ。ブロックは・・・1人乗船時のバランス取り用か?
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これだけのことでいいのだ、娯楽は

うわうわ言いながらそーっと乗船。2人が乗り込み互いに背中合わせに座れば、意外と安定する。木の竿で岸から押し出し、じゅんさいの海へ出航だ。

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タヌキとウサギが乗ってても違和感ない船。

なんとか水上で落ち着いたあと、おばさんが採り方のレクチャーをしてくれた。まだ開ききってない丸まった葉の根元を、爪でプチンと切ればOK。摘んだ葉を水中で取り落としても、自然に水面に浮いてくるから大丈夫。

 

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オーナーのバケツにじゅんさいごっそり。

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水はきれいだが意外と底のほうまでは見えない。
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最初のうちはヌルヌルをどうしたものかと思うが、慣れてくると「プチッ」が手際よく決まる。
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ザ・じゅんさいといったたたずまい。かわいいぞ。

最初は、じゅんさいの採れ頃なものを水中に見つけるのがなかなか難しかった。いつまでたってもバケツに一杯にならない。が、しかし。

船で浮き、たまに竿で移動しながらチャポチャポと手を沼に突っ込みじゅんさいを採る、これだけのことが、すごく楽しくなってきた。水面を静かに凝視したのちに訪れる、プチッという小さな衝撃のアクセント。でも獲物はプルプル。

そして目が慣れてくるにつれ、そして採り方のコツをつかむにつれ、マイじゅんさいが増えていく。

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ふだんの生活がウソのような

それにしても、静かだ。風の音しか聞こえない。パシャッという水の音、それがたまにかすかに聞こえるだけに、余計静寂さを際立たせる。

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東京は今何時だろう、などとつい考えてしまう(もちろん時差などありません)。

この一帯は採りつくしたな、と思ったら船を移動。竿1本なので船がなかなか真っ直ぐに進まない。

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「あそこまで行ってみよう。」言っててなんだか自分がかっこいい。
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でも目的地に尻を向けて移動。竿でよっこいしょ。
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通ったあとは水面が2つに割れてた。
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またも「ザ・じゅんさい」。ヌルヌルがすごくてスーパーボールみたいになってた。

時間を忘れてじゅんさい採りに没頭。頭を文字通り沼にうずめんばかりだ。

船がひっくり返らないかと心配だったが、よほど揺らしたりしないかぎり大丈夫そうだ。もし沼に落ちても、底は60cm程度と浅いのでおぼれることはない。

日が暮れて風がひんやりしてきて、そろそろ帰る時間みたいだ。

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少しでも多く採ってお得に・・・という考えはすでにない。採ること自体に夢中。
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おばさんが何か1人で言ってると思ったら、携帯で電話してた。すごい違和感ではある。
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もちろんお持ち帰りも楽しい

船を下りると、おばさんがめいめいのじゅんさいを袋詰めしてくれた。

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私は一番少なかったです。
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重さもいちおう量ってくれる。3人合わせて1.5kgほど採れた。晩のおかずには十分過ぎる量だ。

3人分を合わせ、そのうえおばさんの採った分もちょっと足してくれた。ボウズの人なんていないのに、なんてありがたい。

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やってみてわかったが、1日いても10リットルなんてそうそう採れるもんではない。
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お持ち帰り用のこういうビニール詰めって、縁日みたいでわくわくします。

さて、持って帰ってさっそくじゅんさい宴会だ。なんと鳥鍋に入れて鍋物として食べるのだという。酢の物くらいのメニューしか思いつかなかったので、どんな仕上がりになるかすごく楽しみだ。

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そして試食タイムももちろん楽しい

生のじゅんさいは、ヌメリを落とさないように下ごしらえするのが大切。手早く行おう。

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軽く2~3回洗ってゴミなど取ったあと、沸騰したお湯に通して、色が鮮やかになったら・・・
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さっとすくい上げ、氷水で冷やしてザルに上げます。
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つやつやのヌルヌル。

この日はTさんの心づくしで、地元名産の比内地鶏の鍋となった。これがまた、ただでさえうまいのに。

このあたり、読んでいらっしゃいます皆様に「いいだろ、うらやましいだろ」と、内心自慢しながら書いておりますこと、ご了承ください。

じゅんさいをあらかじめ椀に盛っておき、その上に比内地鶏の鍋をよそって食べるのが、じゅんさいの歯ごたえを楽しむコツだ。じゅんさい沼のあのおばさんに教えてもらった。

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暑いので、鍋調理は台所で。
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鶏のダシと脂が溶け出した熱々の汁でじゅんさいをいただく。
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酢の物は、簡単にノンオイルドレッシングを使ってもうまい。
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わさび醤油も合う合う。

すみません、正直申しますと、食べてるとき写真をあまり撮れませんでした。

つるつるっと、どんどんじゅんさいが喉を通って、酒が進んで、写真どころじゃなくなったのさ。悪いな。

寒天のような透明なヌルヌルが気持ちいい。同じような食感だと私は「もずく」を思い出すのだが、じゅんさいはぜんぜん癖のない味。というかこれ自体に味はほとんどなく、調理しだいなのだ。

あまりに食べて食べて、しまいに動けなくなった。たぶんこの宴会で膨れたお腹の半分はじゅんさいだと思う。私は今じゅんさいでできているよ。なんて健康的なんだ。


他にはてんぷらなんて食べ方もあるそうだ。うわー、食べたい。揚げたらどんな食感なんだろう。食べたい食べたい。というかじゅんさい沼ひとつ欲しい。

でもじゅんさいの時期は5月から8月前半。今年の季節はほぼ終わり。来年まで待たないといけないのだ、シュン・・・。

実家に送るつもりだったお土産のじゅんさい、食べてしまおうかと思っています、お母さん。

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高級比内地鶏もうまーい!
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