特集 2021年3月10日

ペットボトルをポカポカつぶしてたら光ったけど、これなに?

ISO-25600 F1.8 30秒

ある真っ暗な夜、ペットボトルから水を飲んだらポカッっと音がして凹んで青く光りました。口を離してポカッっと戻ったらまた青く光りました。

目の錯覚?なんらかの光が反射して光ったように見えた?と思ってしばらくポカポカとペットボトルを凹ましたり戻したりしてみたところ、やっぱり光ってました。

なにこれ?

あばよ涙、よろしく勇気、こんにちは松本です。

1976年千葉県鴨川市(内浦)生まれ。システムエンジニアなどやってましたが、2010年にライター兼アプリ作家として自由業化。iPhoneアプリはDIY GPS、速攻乗換案内、立体録音部、Here.info、雨かしら?などを開発しました。著書は「チェーン店B級グルメ メニュー別ガチンコ食べ比べ」「30日間マクドナルド生活」の2冊。買ってくだされ。(動画インタビュー)

前の記事:実写版カップ麺をいくつか作ってみた2021

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雪山でテント泊をしてたら気づいた

2月の終わりに雪山に行きました。初心者向けの簡単なところですが、いちおうピッケルとかアイゼンとか使う程度の雪山です。

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西天狗岳という、八ヶ岳の真ん中くらいにある山。登ったのはテント泊をした翌日。

近くに住んでて自動車アクセスなら日帰りでも登れるんですが、東京から公共交通だと一泊したほうが楽だし、雪中キャンプも楽しみのひとつなのでテントで一泊しました。

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黒百合ヒュッテのテント場。
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僕のテント(緑色)とお友達のテント。冬は整地とか雪壁作りに時間がかかるのでテントの設営が大変。

テントを設営して雪上訓練とかアイゼンの慣らしなどをしたら日が暮れてきたので、それぞれテント内で夕食して就寝。こんなご時世だといろいろ気を使います(未来のかた向けに説明すると、今は感染症対策で会食が犯罪みたいな世界です)。

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僕の夕食。肉とか野菜とかを焼いた。

夜中、目が覚めて水を飲んだら光った

夕ご飯をたらふく食べて、最近あまり飲まなくなった酒を飲んで寝て(雪山でのテント泊はけっこう寒いんですがこの日は気温が-10℃くらいだったので暖かく眠れました)、夜中の2時くらいに目が覚めました。

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イメージ写真。テントの天井ですが、実際はもっと本当に真っ暗です。

喉乾いたなって、その辺の転がしておいたペットボトルの水を飲みました。ペットボトルに口をつけて、半分くらい凍った水を吸うように飲むと『ポカッ』っと音がしてペットボトルが凹んだ。

すると、視界の端がなんだか青い。

飲み口から口を離すとまた『ポカッ』っと音がして凹みが戻ったら、また視界の端が青い。

ん?

と思いつつも、テントの外にいる人が出すライトの光がペットボトルの曲面に反射して光ったのだろうと思ってもう一口飲む。ポカッと凹んで、また青く見えた。

これ、光ってねぇか?

…。

その後、ポカポカと凹ませたり元に戻したりと何回か繰り返して確信しました。

ペットボトルを暗闇でポカポカと凹ませると光る。

家に帰って試したらやっぱ光った

夜中の静かなテント場でポカポカとペットボトルを鳴らすのもはばかられます。ということで、この夜の検証はここまで。翌日(2021/02/21)はそこそこの風がありつつも天気自体は良かったので目的の天狗岳に登頂して帰宅しました。

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エビの尻尾(氷の結晶)が付いてる標識。風は15m/sくらいで左から吹いています。

帰宅後、窓がないトイレを締め切って光が入らないようにして、カメラ自体の光も漏れないようにして長時間露光で写真を撮りました。

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何度かポカポカして得られた青い光の写真。

EOS 5D Mark2という古いデジタル一眼レフで、感度はISO-25600。F1.8で30秒露光という条件で撮影しました。

シャッターを開いたらレンズの前でペットボトルをポカポカさせますってぇと、肉眼にも青い光がハッキリ見えて、写真にも写りました。

気のせいや見間違えではなく、ちゃんと、実際に光っています。

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光ってることは分かった。なんで光る?

こういう現象があるんだけど、なんで光るか知ってる?とSNSで聞いてみたところ、「くっつけたガムテープを剥がす時に光るのと同じでは?」と教えてくれました。当サイトでもライターとして書いてる加藤まさゆきさん(理科の先生)が。

要は、くっついてるものが剥がれる時に発生する静電気で光ってるのだというわけです。

確かに、光ったあとのペットボトルをよく見ると、薄くフィルムのようなものが剥がれたっぽく見えます。

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ある程度光らせたあとのペットボトル。

剥がれた部分は空気が入ってるみたいに見えます。 

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白い部分が剥がれたあとで、まだ剥がれてない部分は透明。

何度かポカポカさせていると光らない部分が増えていきます。フィルムが剥がれる時に光って、剥がれ終えた部分は光らなくなります。ということは、剥がれる瞬間に光っているのでしょう。

内側のフィルムが剥がれるときに光るっぽい

剥がれた部分をカッターで切り開いてみると、外側が厚いPET樹脂の壁で、内側に薄いフィルムがあるという構造になっていました。

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外側が厚くて、内側の薄いフィルムが剥がれると光る。

図解すると下の絵のような感じです。

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ポカッと凹ませると内側のフィルムが剥がれて光るっぽい。

こういう現象のことを摩擦ルミネッセンス(摩擦発光)と言うそうです。ペットボトルの構造に由来して、フィルムが剥離する時にルミネッセンスしてるっぽい。なるほど原理は完全に理解した(してない)。

でも、問題が一つありました。他のペットボトルで再現しない。

ラベルを剥がしちゃったので同じボトルが見つからない

写真の通り、飲料水のボトルとして使うためにラベルを剥がしてしまったので、元々なんの飲み物なのか分かりません。つまり同じボトルが手に入らない。

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水ボトルとして使う時にラベルは剥がして捨ててしまうのです。

厚みとか形からして炭酸飲料なのは間違いないのですが正体は不明。

500mlの飲み物をいくつか買ってきましたが、色や形が違うし、ポカポカさせても光るボトルに当たりません。

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炭酸飲料を中心にいろいろ買って試した。
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強いて言えば、この辺が似てるやつ。

似てるの数本のうち、特にポッカの『がぶ飲み エックスフリーダムエナジー』に似てる気がします。

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そういえばちょっと前に、こんなのを飲んだ気がする。

下の写真の、左がポカポカすると光るやつで、右はがぶ飲みエックスフリーダムエナジー。

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そっくりに見えるけど、細部を見ると微妙に違う。ロットの差かも知れないけど。

これかな?と思って暗闇で凹ませたり戻したりしてみましたが光らないし、内側のフィルムも剥がれた様子がありません。

そういえば雪中テント泊は寒かったなと思って凍らせてみたけど、結露に猫毛が付いただけで発光現象は起きませんでした。

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中身が凍ってると凹ますのは無理なので、冷凍後に溶かして水を抜いてポカポカしたけど光りませんでした。
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結露したペットボトルに付いた猫毛の出どころ。

というように、いろんなペットボトルをポカポカと凹ませたり凍らせたりしてみたんですが…。 

結局、2本目の光るボトルを作れなかった

すみません、最初の1本以外に、光るペットボトルを作れませんでした。 内側のフィルムがいい具合に剥離するボトルを作る方法は分かりませんでした。

今回は、たまたまそういうペットボトルが出来て、たまたま真っ暗なテントで飲んだら光ってることに気づいて、たまたまそれを何度も試してみたら実際に光ってると分かったという、偶然の産物なのでした。

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光るの自体は本当なんです!信じてください!

もし、ポカポカと凹ませることで内側のフィルムが剥がれるペットボトルが手元にあったら、暗闇でポカポカしてみてください。

目が暗闇にちゃんと慣れていれば青い光が見えるはずです。


信じてよ、本当に光ってるんですってば

この話を人に言ったら100億%バカにされると思ったら、意外に真面目に取り合ってくれる人もいて驚きました。加藤さんほかお友達の皆さん、ありがとうございます。

でも、最終的に内側が剥がれるペットボトルの作り方はわからず、たまたま光る状態になっていたペットボトルが1本手元に残る形となりました。

引き続き条件を調べようかと思いますが、みなさんもペットボトルをポカポカして光るかどうか試してみてください。

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