パン祖のパン！　日本で最初に焼かれたパンを食べる

韮山反射炉に行く

江川英龍は最初にパンが日本に入ってきた258年後に幕府の韮山代官を世襲する江川家に生まれた。その後の彼の人生を時系列でたどってみよう。

日本で最初にパンが焼かれる7年前に英龍は江川家第36代当主となり韮山代官に就任する。当時の日本は天保の飢饉に見舞われた大変な時で、管轄地の村を立ち直らせることが急務だった。

また西洋式築城術を用いた台場の設置や海軍の創設など、海防政策を幕府に進言している。ただ幕府の理解を得られなかった。日本で最初にあんパンが作られた32年前頃から江川英龍は反射炉の研究も進めていた。そして、日本で最初にパンが焼かれた11年後にペリーの来航を受けて、幕府は海防体制の強化に乗り出し、江川英龍は反射炉築造の命を受ける。

韮山反射炉は鉄製大砲を鋳造するために作られた。当初は伊豆下田港に近い場所に作る予定が、ペリー艦隊の水兵が敷地内に侵入したために、急遽韮山の地に建設されることになる。ちなみに江川家住宅から韮山反射炉は近い。

江川英龍の海防政策の一つだった「韮山反射炉」だけれど、建設中に江川英龍は亡くなってしまう。息子の江川英敏が跡を継ぎ、日本に最初にパンが入ってきた314年後に完成した。日本に米が伝来した約3000年後には世界文化遺産に登録された。

江川英龍の幅が広い。パンも焼くし、反射炉も作る。パン屋さんが大砲も作ると考えると納得できないけれど、江川英龍はパン焼き窯も作っただろうし、その応用と考えれば少し納得できる。いや、納得できない。すごい人ということだけがわかる。

最初のパンを食べる！

江川家住宅と韮山反射炉で江川英龍によって焼かれたパンを再現した「パン祖のパン」を買った。パッケージが違うのは販売者が違うためで、製造者は一緒だ。

もちろんコーヒーも淹れる。コーヒィと書いた方がいいかもしれない。これでほぼ江川英龍だ。コーヒーはとてもよい香りがした。当時はパーコレーターで淹れたようなので、この方式ではないけれど、そこは考えないものとする。

めちゃくちゃ固い。江川英龍について調べるのに夢中で、なぜパン祖のパンがこんなにも固いのか調べ忘れたけれど、酵母とかが違うのかな。とにかく固い。高杉晋作はこのパンを使って藩の近代化を図ったと言われている。薩摩藩ではパン祖のパンを「焼餅」という名で非常食、兵糧食とした。日持ちするのだ。

固い以外の感想はない。日本に最初にパンが入ってきた482年後にこの固さに出会えるとは。パンの歴史は面白い。美味しいとか、甘いとかではない。固いのだ。もっとも齧ってしまえば素朴な味でほんのり甘いのだけれど、固いという感想を超えるほどの味ではない。固いが行き過ぎ、他の感情が生まれないのだ。

幸せな時間ではあった。地球上に生命が誕生した約40億年後の出来事だ。私はパンが好きなのだ。その最初のパンがこれなのだ。それを食べる喜び。世界文化遺産を作った人が作ったパン。おそらくそんな組み合わせのパンは他にはないのではないだろうか。

パン祖のパン祭

日本に最初にパンが入ってきた482年後（2025）、日本で最初にパンが焼かれた183年後（2025）の1月18日、19日の二日間、伊豆の国市韮山文化センター韮山時代劇場で、「第19回パン祖のパン祭」が開催される。つまり明日と明後日です。江川英龍の功績をたたえるために始まったお祭り。「パン生地伸ばしコンテスト」とか、「パンフィッシング」とかがあるらしいです。急げ、韮山へ！　私は行けないから、いつか行ってみたいです。

第19回パン祖のパン祭
https://www.city.izunokuni.shizuoka.jp/nousin/shoukou/pansopanfes.html

参考文献
「たべもの起源事典」岡田哲 東京堂出版 2003
「たべもの起源事典 世界編」岡田哲 筑摩書房 2014

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