平面は全部、物で埋まる
石川:
今回は先月の記事の総集編で、この記事の話を聞く、という枠なのですが
ピックアップ記事
乙幡:
へいへい
石川:
撮影同行したときに、制作の話ももう聞いちゃったしな~、と思って。今日は乙幡さんの作業部屋訪問のコーナーに勝手にしたいと思います!
というわけで乙幡さん、いきなりですけど部屋見せてもらっていいですか
乙幡:
いま大慌てで片付けました。人としてアレなもんもたくさん目についたので…
石川:
迫力。天井まで積みあがってますね
乙幡:
犬がそばを離れないので地震の時は一心同体ですね
石川:
一心同体というかもはや一蓮托生。
乙幡:
私が世の親御さんに言いたいのは、「出したものは元の場所に」を幼児期から徹底せよ、それのみです。
出したものそのままにしてまた新たに出しますから私。
石川:
心に刻みます。
いま作っているのはなんですか?書いて差し支えなければ
乙幡:
白いもやもやした物体は張り子の原型です、来年個展やるので大慌てで作ってます。
石川:
おお個展!あとで告知しましょう。今すぐ知りたい人は記事の末尾に!
この、絵が貼ってあるのは撮影ブースですか?塗装ブース?
乙幡:
塗装ブースとかつて言われたものです。
石川:
元だ
乙幡:
スペースがないのでじゃんじゃん物置になってます
石川:
平面があるとね。
物がきますよね、どこからともなく
乙幡:
今、最高にいろいろやってて、全ての平面が埋まってて。
作品を平面に置こうとして、家中ふらふら歩き回ることになります。
石川:
平面を求めて…
乙幡:
けっきょく肘で全てを掃く。
石川:
あはは
物をどけるのに手のひらを使えないほど切羽詰まってから置き場所探すんですね
乙幡:
そこにいちいち犬がついてくるんで、カオスなハーメルン状態ですね。
さいきんの立体出力事情
石川:
これは何の机ですか?
乙幡:
一番困る質問出た
石川:
なんのっていうか「いろいろ」なんだと思いますが…
乙幡:
まあ余った机を作業台にしてるっつうか…
石川:
じゃあ質問を絞って…手前の白い円筒形の装置はなんですか?
乙幡:
円筒形のは、超音波洗浄機です。水洗いレジンで3Dプリンタから出力した物体を、いったんそこで洗って、水道で本洗いして乾かす。
※注
超音波洗浄…メガネ屋にあるメガネ洗浄機と一緒です。
3Dプリンタ…大きく積層タイプと光造形タイプの2種類あって、乙幡さんが使っているのは後者。素材に液体のUVレジンを使って、赤外線で硬化させて形を作る。
水洗いレジン…光造形3Dプリンタでの出力に使う素材。ふつうのUVレジンより事後処理が楽。
乙幡:
洗浄機の中はあとで紫外線照射して、固まったレジンを濾して捨てます。
ってネットに書いてあった。
石川:
いきなり水道で洗うのと何が違うんですか?
乙幡:
オレもよくわがんね
石川:
あはは、儀式ですね
乙幡:
すみずみまで洗える、ってことと、やっぱり少しでも環境負荷を減らすってことですかね。
石川:
あー水道にレジン流さなくて済むから、なるほど。
先に洗浄いっちゃいましたけど、3Dプリンタ本体も見せていただいてもいいでしょうか
石川:
あ、なんか思ったよりかわいい見た目ですね
もっと黒いの想像してました
乙幡:
ある部品を絶賛出力中なので、液入れたまんまです。
松本(圭司)さんが買ったのを「いいなぁ」と思って、そのまま真似して買いました。
3年たつか?けっこう使ってますね。
石川:
あー同じ機種なんだ。
僕も松本さんの持ってる別の機種をまねして買い替えたので、デイリーライター内における松本さんの影響力は絶大ですね
乙幡:
インフルエンサーですね
石川:
あのひと3~4台持ってますからね
乙幡:
私も積層型視野に入れてますからね
※積層型…さっき説明した3Dプリンタのもう一つのタイプ。素材に液体のレジンではなく、フィラメントという糸状の樹脂を使う
石川:
積層型いいですよ。楽で。液体触らなくて済むし
楽以外のメリットがあるかわからないけど…
乙幡:
わはは、でも超音波洗浄とか不要だし、ちょっとした工作くらいならそっちのがいいですよね。
関係ないんですけど、プリンタ買ったときに初めてアリババ使ったんだけど、怖いからデビットでと思ったら、その銀行のは使えないってはじかれて。
海外で使える銀行のをわざわざ口座開いて、それで払いました。
石川:
口座作るところから!
乙幡:
先日その口座から「あんたあまりにもうデビット使ってないから、デビットないやつに切り替えるでー」ってハガキが来ました。
なのでもう本国のアリババで買い物できない。
石川:
おお…
一つの時代が終わった気がしますね。
3Dプリンタとの青春が。
乙幡:
おとなしくAmazonで買いますわ
石川:
まあそれで問題ないんですけどね…
石川:
このディッシュドライヤー?っていうのはまた乾燥器ですか?
乙幡:
ですね。洗浄後の成形物を乾かしたり。
石川:
つまり工程でいうと、
3Dプリント→超音波洗浄→水洗い→食器乾燥機?
※注:出力物はレジンの中から出てくるので、余分なレジンを洗い流す必要がある。
乙幡:
そう、そしてその後にUVライトにつっこむ。
石川:
あ、UVもいるんだ
乙幡:
2次硬化。2~3回、2分ずつ照射でやっと固まるかな?
※2次硬化…3Dプリンタの処理だけでは固まり切っていないレジンにUVライトを当てて完全に固める作業
石川:
3Dプリント→超音波洗浄→水洗い→食器乾燥機→UVライト
ですね。
これは手間かかりますね
ここまでやったら手作りの味わいありますよ、3Dプリントでも
乙幡:
そうですね、私3DのCADソフト、覚えきれなくて使ってないんですけど、彫刻ソフトで手でぐりぐりデジタル造形してるんで
※注
3DのCADソフト…3Dプリント用の立体モデルを作るソフト。図面を描く感じで作る
彫刻ソフト…スカルプトソフトともいう。3Dプリント用の立体モデルを作るソフト。こっちは粘土を削るイメージで作っていく
乙幡:
プリンタ通しても結局ふんわり造形になってます
石川:
僕は逆にあれ使ったことないです
難しくないですか?
乙幡:
iPadではじめていじったときにできたクリーチャーです
石川:
やや怖
いつもiPadですか?
乙幡:
ですね、それしか使わない、ってことにしてます
石川:
へー
ペンで描ける…?
乙幡:
ペンで描けます!
石川:
知らなかった
それは手軽でよさそうですね。
石川:
おー、いい
乙幡:
めちゃくちゃユルユルですけど最近の。
石川:
かわいい。いやーやってみよスカルプチャ
ところでこういう造形物って、粘土とかで手で作るか、3Dプリントするかってどうやって決めるんですか?
いま張り子の原型作ってるという話もありましたが
乙幡:
うーん、それまだ私もうろうろしてるんですよね。もともと彫刻スキル全然ないし。
結局、粘土のほうが精巧にできる、まである。
石川:
じゃあ数作る時だけ3Dプリンタとか?
乙幡:
ですねー。アプリでもっと上手くなればカチッとできるんでしょうけど、作ってるのはやっぱり自分だからなー。でも手間考えるとデジタルのほうがパッととりかかりやすいかな、今のところ。
そのへん行ったり来たりしてると、人間の能力について考えさせられますね。
石川:
フットワーク軽いのはデジタルなんですね。意外
乙幡:
それで結局、パッとデジタルで現物にして、それ見ながら粘土こねるという…
石川:
結局こねるんだ
乙幡:
立体感がね、やっぱり実物見ないとわからんなっていう。
工程は全然定まらないです。ずっとこうなのかな…
エアブラシと騒音問題
石川:
もうひとつ聞きたいことがあって、塗装についてなんですけど。
僕は塗装って全くしないので、どういう道具でやっているのかなと思って
乙幡:
だいたいアクリル絵の具かエアブラシです
乙幡:
ソフビ塗るのに買いました、充電式コードレスエアブラシ。
あとはアクリル絵の具でペタペタと。
石川:
おー
乙幡:
手入れさえすれば便利です。手入れさえすれば。
石川:
手入れって何ですか?目詰まり的な?
乙幡:
ソフビの塗料が爆裂に目詰まりするんで…だましだましやってます。
石川:
エアブラシってやっぱりブースないと使えないんですか?
乙幡:
充電式なので、ベランダとかで周囲を囲えば、ブースなくても行けそうではあります。
石川:
乙幡さんは先ほどの元塗装ブース使って?
乙幡:
そう。でも音がけっこうするのと、エアブラシでなくスプレー缶だとけっこう吸いきれないので、そのうちブースを自作しようかなと目論んでます。
石川:
音ってスプレーのシューっていう音ですか?
乙幡:
いえいえ、ブースの換気ユニットの音がけっこうする
石川:
あー、そっちか。ブオーンっていう
乙幡:
排気周り、これまためちゃ恥ずかしいんですが。
石川:
外までつながってるんだ!当たり前か…
乙幡:
そのうちちゃんとプラダンで作ろう作ろうと思いつつ…
石川:
そのうちが積みあがっていく…
乙幡:
で、ここまでやっても結局、スプレーからの塗料って粒も大きいし威力もあるから吸いきれなくて部屋に散ってしまう
石川:
なるほど、そうすると心もとないですね
自作っていうのは段ボールか何かで作るんですか?
乙幡:
なんかプラダンとかで自作してるひとけっこういるんで(テクノよしださんとか)、いいなーと。
※テクノよしださん…アーティストのよしだともふみさん。デイリーによく登場する。さいきん Buffalo DaughterのPV を作っていた
石川:
なるほど、先人がいるのは心強いですね
でもあれですね、その点ではアクリル絵の具はブースいらないし、色混ぜられるし
乙幡:
最高ですよ。世の中すべてアレで塗ればいい
石川:
ブラシとの使い分けってどのあたりですか?
使い分けの話ばっかりしてますけど
乙幡:
ブラシは、売り物にしか使わないかな…
石川:
仕上がりのきれいさ?
乙幡:
ですね。製品っぽさ。
石川:
なるほど、たいへんよくわかりました
乙幡さんのモノ自慢
石川:
そして次は最後で、モノは何でもいいのですが機材または素材または工具…なんでもいいので自慢したいものを2つほど見せていただけると嬉しいのですが、何かあります?
石川:
あーボンディック。UV硬化する接着剤ですね。「4秒で固まる液体プラスチック」という触れ込み。
乙幡:
テクノよしださんからの誕プレでした。それ以来、リフィルと電池なんども交換して使ってます。
これはいい。
石川:
これって強度どんなものでしょうか、
乙幡:
食いつきはいいですよ。でもたぶん熱には弱い。
ソフビに部品くっつけるのに使ってます。一瞬で固まるのでほんと助かる。
石川:
瞬間接着剤よりいいですか?
乙幡:
私はこれ推しです。瞬着ってなんか、釈然としないっていうか。白くなるし。
石川:
なんて言うか、直接くっつけないというか…間を樹脂で埋めたうえでくっつけるみたいなのもいけるんですか…!?
乙幡:
紫外線ライトが届かないと固まらないので、何かと何かを密着させるには向いてないですね。
隙間を埋めるとかならばっちし(お決まりの、PP、PE、シリコンにはダメ)
あとは高いのが弱点かな。
石川:
なるほどなるほど
いつか買おうといつか買おうと思って早10年近くたってる気がするのでいい加減買います
乙幡:
とにかく買ってみてください。楽しいですよ。
石川:
言いすぎました。今年発売6周年 でした。でも買います!
乙幡:
もうひとつは工具とかじゃないんですが、6月に買ったガチャマシーンです。メルカリで。
これ、2台連結じゃないやつですが、ほんと市場に出回ってないんですよ。
石川:
2台連結じゃないっていうのは、縦にですか?
乙幡:
そーそー
石川:
確かに1列だけ置いてあるの全然見ないですね
乙幡:
なのでいろんなイベントに持っていける。
石川:
これはまさしく個展とかで…?
乙幡:
この前のデザフェスで大活躍でした。
石川:
うわ―そういうところでは絶対映えるやつですね。
ブースに置けるし。
というわけで展示の告知にスルっと移りましょうか。
乙幡:
来年の話だから記事に書かなかったけど、以下です。
乙幡さん出展のお知らせ
2月11日〜20日 張り子展@西小山ウミノイエ
よろしくおねがいします!