トイレに行くといつも見てしまう場所
うちのトイレで用を足していて、じっと見てしまう一角がある。トイレットペーパーホルダーの上の板にいくつかの小物を並べた場所である。
本当にちょっとしたスペースですが、
こちらが「俺んち絶景」でございます
千葉の国立歴史民俗博物館に行った時に買ったミニ埴輪3体と、NHK教育テレビの番組『おーい!はに丸』の主人公である「はに丸くん」がマイクを持ったフィギュアが並べてある。この「はに丸くん」のフィギュアはガチャガチャを回して当てたもので、『はに丸ジャーナル』という特番の中でマイクを持ってレポーターを務める「はに丸くん」の姿を模してある。
もともとこの場所にミニ埴輪だけが並べてあったところに、あとから「はに丸くん」フィギュアが手に入り、「これとあれ、合うかもな」と思って並べてみたところ、最初から一つのセットだったかのようにピッタリとハマった。埴輪の村で起こった事件について、埴輪住民に聞き込みをしているワイドショーのワンシーン。そんな風に見えてくるではないか。
このピッタリ来た感じ自分の中でものすごくうれしくて、便座に腰かけてはうっとりと眺めている。いやー、絶景です。
散らかった部屋にも絶景はある
冒頭で述べた通り、私の部屋はうんざりするほど散らかっていて、片付けを進めるために一回ドサッと荷物を広げたまま動きが取れずにいるような状況なのだが、そんな空間にも自分なりの絶景スポットがある。
部屋に自分の居場所がほとんどない
だいたい私は本棚に本を並べた後にできる手前の空きスペースに色々と物を並べるのが好きだ。それによって本が取り出しにくくなるのだが、そこは仕方ない。
本を取り出そうと思うといちいち面倒ではある
「目が疲れたら緑を見るといい」と聞くので、疲れた時この「ゴルフ」の箱を見る
椅子に座っていて斜め上を見上げるとこの3人がいる。
バラバラな人たち。
宇宙刑事ギャバン、興福寺の龍燈鬼、長野県佐久市のゆるキャラ「ハイぶりっ子ちゃん」のフィギュアが並んでいて、“まったく別々の世界からやってきた3人”というこの組み合わせが気に入っている。
机に向かって仕事をしていて、たまに伸びをしながらこれらの絶景を眺めては「いいなあ」と思っている。自分が好きなものばかり並べてあるのだから当然なのだが、いつまでもぼんやり眺めていられる。
近な人に「俺んち絶景」を見せてもらう
さて、このような「俺んち絶景」はきっと誰の家にもあるはず。まずは私の身近な友人たちにたずねてみることにした。主旨を説明し、その場所を写した画像と紹介コメントを送ってもらうようお願いした。
集めてみると本当に人それぞれで興味深かったのでどんどん紹介させていただきたい。
飲み仲間のヤマコさんが送ってくれたのがこちら。本人のコメントはこうだ。
お酒が欲しくなる「俺んち絶景」
「リビングのカップボードです。眺めながら飲みたい酒アイテムを、最初は妻に遠慮して2、3ケ並べていた程度なんですが、今やその右半分を占めるに至りました。ちなみに、展示内容は季節によって変化します」
見ての通り、明石の駅弁「ひっぱりだこ飯」の空き容器や様々な酒器がきれいに並べられている中に「酒のほそ道」で知られるマンガ家・ラズウェル細木さんのサインが置かれていたりして、なんともお酒が飲みたくなる風景が作り上げられている。
次に、私のバンドメンバー・イッチーが送ってくれたのは、電子レンジの横に貼られたマグネット群の写真。
電子レンジ横のマグネット広場
「旅先で買ったマグネットをレンジの横に貼って昔を楽しんでます。たったひとつのマグネットでその時の思い出がフラッシュバックするのが好きなんです」
なるほど、これらのマグネット一つ一つが旅の思い出を呼び起こすきっかけになっていて、それが集積されているのがこの場所なのである。それぞれのマグネットをクリックするとあちこちの旅先の記憶に飛べるトップ画面みたいな。
FJKさんが送ってくれたのはベッド脇の景色だ。
寝床がゲームの中の世界
「RPGの世界観を再現できた!」と、達成感にあふれたコメントと共に送られてきた画像だが、見れば見るほど手間がかかっていることが伝わってくる。壁をレンガ風に見せている工夫なんて、めちゃくちゃ凝っている。毎晩ドラクエやゼルダの世界観の中で眠っているわけか。見る夢に影響してきそうだ。
お次はミニコミ専門店「シカク」代表・たけしげさんの「俺んち絶景」だ。2か所あるという。
こちらが仕事部屋で、
こっちは寝室とのこと。
この2か所は対になっているそう。ご本人のコメントはこうだ。
「置物を置く場所が家に2箇所あります。仕事部屋には仕事を見守ってくれる『チームがんばり』、寝室には安眠を見守ってくれる『チームやすらぎ』の皆さんがいます。『チームがんばり』にはクリエイティブ心が刺激されるものやお金の匂いがするもの、『チームやすらぎ』には見た目がほんわかしたものや匂い・音・手触りのよいものを置いています」
励ましスポットと和みのスポットに別れているわけだ。そう言われて見直してみてもどっちがどっちなのだか、たぶん本人にしかわからなそうで、そこも面白い。
人の数だけ絶景がある
「俺んち絶景」の中には、他人がパッと見て「おおすごい」と思うようなものもあれば、本人だからこそわかるようなものもある。
例えばこちら、ハナイさんという友達が送ってくれたもの。ハナイさんの妻は現在、管理栄養士を目指して勉強中らしく、トイレに“糖”や“脂肪酸”の種別について記載した紙が貼ってある。
トイレの時間も無駄にせず、勉強しようとする姿勢
「トイレに座ると、奥さんが学校で暗記する紙が貼ってある。俺はぜんぜん覚えられないんだけど、落ち着く」
これなんかは、事情を知らぬ人が見ても、「なんだこれ」と思うだけであろう。しかし、夫であるハナイさんからすれば、奥さんの努力の証のようなものであり、それを知っているからこそ絶景に見えてくるのである。
次は、飲み仲間のハヤトさんから送ってもらったもの。スピーカーの上に買ったばかりの本が積んである。
一見したところ変わったところはないようだが
「最近ちょっと本棚がいっぱいになって、購入した本を置く場所がないからサブウーファーの上に積んでいってるんです。大学生の頃から愛用しているSONYのCDラジカセとスピーカーシステムなんですけど。今年になって購入した本ばかりなので、見るたびに『これが2020年の、最新版の俺!』みたいな。まだ読んでない本も積んでいるから『これからの俺!』みたいな」
積まれた本に“未来の俺”を見ることができるスポット。これもまた絶景の一つだ。
こちらは、神戸に住む文筆家・平民金子さんが送ってくれた写真。
台所に吊るされた「ミモザ」
「朝のミモザです。『ミモザの日』てのがある事も知らなかったのですが、イタリアではそういう日があるらしい。3月8日に知人にもらいました。それを切りとって台所につるしています。天気の良い日の朝、最初にここを見て『光ってるなー』と思うのが好き。この窓を開けたらめっちゃネズミが入ってきます。それも自慢」
「ミモザの日」である3月8日に知人からもらったという、その記憶も含め、平民金子さんにとっていい場所になっているのが伝わってくる。「ミモザの日」だなんて、私はまったく知らなかった。なんと素敵な贈り物だろう。
お次、私の幼なじみのミヤマくんからのもの。
額に入ったちぎり絵
コメントはこちら。
「2016年に祖母の珍寿を記念して、近くのホールを一日借りて、祖母が70歳位から始めた“ちぎり絵”の展覧会を開いた。自分の名前が“富士”ということもあってか、この赤富士のちぎり絵を祖母は気に入っており、展覧会の案内はこの絵の絵葉書だった。展覧会では民謡を流したのだが、祖母の同世代が民謡を聴きながらちぎり絵を見て泣いていたのが印象的だった。祖母との思い出が詰まってるのでお気に入り」
この絵は居間に飾られており、残念ながら亡くなってしまったおばあちゃんを、ミヤマくんはこの絵を見るたびに思い出すそうだ。途中から気づき始めたのだが、もうこれ、一つ一つの「俺んち絶景」についてじっくりと話を聞きたいほど、背後にドラマがあるな。
次に、私のバンドのドラマーであるジュンヤくんの送ってくれた「俺んち絶景」である。
左手、本棚の側面にシールが色々貼ってある
これは、ライブハウス等に出演する際に会場側から配布される「スタッフパス」で、このシールを上着などに貼っておいて受付で「私は出演者です」ということをわかりやすくするためのもの。ジュンヤくんは数多くのバンドを掛け持ちしていて、何気なく貼り始めたのがどんどんたまっていったという。彼は自分の「俺んち絶景」をこう語る。
「これは、人生の理由ですかね。飾らずに言っても、撮って見てみるとそうなってしまいます。今の自分を支えてる柱みたいなもの」
もし引っ越すことになってもこの本棚だけは処分できないという。「いつかこれを処分できる時がきたら、自分は次のステップに進める気がします」と、人生の話になってきた。
次です。私の元同僚・かえさんが送ってくれたもの。
なんだか色々なものが展示されている
「これは、何?」と聞いてみると「母の手作りのメザシパッチワーク、友人のバリ土産、友だちが誕生日に作ってくれたケーキの下絵、秋山佑徳太子先生の絵、梶芽衣子のサイン入りハガキ、青汁の瓶に入ったパリ土産のエッフェル塔と、好きなものが集まっているのです」という。
「なぜ青汁の瓶にエッフェル塔が入っているのか?」と聞いてみると、「青汁の瓶がかわいかったので捨てられず、その後に小さなエッフェル塔をもらってサイズがちょうど良かったので入れたんだ」とのこと。ちょうど入るからという理由で青汁の瓶にエッフェル塔!しかし、本人とってはこうでしかあり得ない必然性があるのだ。
あなたの「 #俺んち絶景 」を見せてください
こんな風に、身近な人にザッと聞いてみただけで、あまりに人それぞれ過ぎて驚いた。そして、それぞれに当人の生活感や性格や、生きてきた時間などが透けてみえるように感じられる。キリのなさにクラッとする感じの面白さ。
ここでお願いです!もしよかったら、あなたのうちの「俺んち絶景」も見せてくださいませんでしょうか!
「うちにはこんな絶景があるよ」と、気軽にぜひ。投稿はTwitterでハッシュタグ #俺んち絶景 をつけてツイートしていただければ幸いです!
その際、
・絶景を写した画像
・タイトル的なもの
・それについての解説文
を添えていただけると助かります!またその際、個人が特定されてしまうようなものが映ったりしませぬよう、こんな時代ですのでご注意をよろしくお願いいたします!
当記事を作成するにあたり、事前に「デイリーポータルをはげます会」の会員の方に募集をかけさせてもらっていたのだが、その結果集まった投稿を参考イメージとして以下に紹介したい。できるだけ多く見ていただきたいのでここからは一気にいきますね。
しいなさん「玄関(のドア)」
「マグネットやらなんやら好きなものをひたすら貼り付けています。オープンスクラップブック。ハーゲンダッツのギフト券を貼り付けてあるので、出掛けるとき気分が少しよくなります」
内田さん「リビングの壁」
「娘や私の工作を貼り付けてます。シンプルな部屋に憧れていたのにどんどん賑やかになっていきます。自分がこんなタイプだとは知りませんでしたが、悪くないなと思っています」
ふみえさん「部屋の壁」
「メインで使う今月のカレンダーと 翌月・翌々月のカレンダー、更にその先のカレンダー…毎年3つ使っています。4ヶ月先まで予定が立てやすい!なんらかの点数シールの期限も把握しやすいです」
ぴかーどさん「マンガの本棚」
「納戸の中にあるので秘密基地の貯蔵庫、もしくは閉架式書庫感があって、閉じこもると気分が上がります」
大伴亮介さん「『鳥をモチーフにした道具』のコレクション棚」
「数が何百とあるので、同業者がいなければ世界一の場所かもしれません」
古賀及子さん「玄関」
「買ったりもらったりした神様っぽいものを全部ここに置いていった結果こういう感じになりました」
保科道恵さん「出窓」
「ミニトマトの種が発芽しにくかったので白熱球であたためていたら危ない栽培の雰囲気が出ていることに気がつきました。発芽した芽がかなり愛おしいので今お気に入りの場所です」
のちさんさん「積本や絵の具が散乱している棚」
「本屋や文房具屋さんに行ったときのあのワクワクのスモールバージョンだと思っていて気に入ってます!」
Takatoさん「テレビ台の下」
「20年近くまえに買った犬の置き物たち。お互いの距離がいい感じです」
ひろこさん「部屋の壁」
「甲子園球場に行った時に買ったグッズとか娘が買ったアニメグッズを旦那がコルクボードに貼り付けました。たまに見ると結構面白く感じます。最近ふとみると『ああ、鳥谷はもうロッテか…』と感じてしまいます」
どうですか。なんだか、見ているうちに投稿してくださった方々と友達になったかのような親しみを覚えます。こういうものを大事にして暮らされているんだな、と、家に遊びに行かせてもらったかのような感覚。結構みんな方向性がバラバラなのも素晴らしいです。
というわけで、まだ見ぬ「俺んち絶景」、お待ちしております!!
Nintendo Switch用のゲームソフト「どうぶつの森」がめちゃくちゃ売れているらしい。
うちの子どもがやっているのを横取りするようにして私も気づけば熱中していたのだが、そのゲームの面白さの一つに、自分が好きな家具や置き物を並べて作ったお気に入りの空間を友達と見せ合う、というものがある。
でもよく考えたら、同じゲームの中でなくとも、すでに現実の家の中にお気に入りの場所はあったのだ。もっと早く見せ合っておけばよかった。
弥勒菩薩と自由の女神が並んでいるここも好き。
家の中にいる時間が長くなっている今だからこそ、家をもっと好きになりたい。みなさんもよかったら改めて自分の好きな場所を見直してみてください!