型紙作りから縫うところまではいつものと同じ
説明していこうとは言ったものの、基本的なところはいつもの作り方と同じである。
代り映えのしない製作工程の説明は最小限におさえて、工夫したポイントだけを見てほしい。ということで、ここからが要注目ですよ!
触角にはフェルト、羽にはニッケル・チタンワイヤーを使った
まずは触角。蛾の触角は、メインの軸から無数の細い突起が出た櫛みたいな形をしている。
最初、触角はデフォルメした形にするつもりだった。でもよく考えたら、触角は蛾の体のパーツの中でもひときわ目を引くチャームポイントではないか。はたしてここの手を抜いていいものだろうか?そう思い直して、できるだけ正確に作り込んでやることに。
触角にこだわったなら、羽の模様にもこだわってやらねば不公平というものだ。刺しゅう糸でもって模様をつけてやることに。
羽のような大きくて薄っぺらいパーツは、どうしても重力に負けてだらんと垂れ下がってしまうのだ。できれば本物の蛾の羽のような適度な張りを持たせて、せっかくつけた模様がはっきりと見えるようにしたい。
羽の中に入れて支えにできるものがないだろうか。いろいろ調べてみたら、ニッケルとチタンの合金でできたワイヤーは弾性がとても強くて、羽の縁に沿うように入れることでその形を保ってくれそうだということがわかった。

ちゃんとしたものが届いた。ごめんなさい、疑ったりして。アリエクは物作りの心強い味方です。
こうしてできた羽を本体に縫い付けたら完成だ。
一か所こだわり始めると、あれもやろうこれもやろうで雪だるま式にやりたいことが増えていって、結局完成するまでに3か月近い時間がかかった。あれこれ調べたり、注文した材料を待っている時間が長かった。
それでも、今回のことで新しい材料の引き出しも一つ増えたわけだし、なんといっても作りたいものを採算度外視で(市販のぬいぐるみがどうして一つ2000円とかで売れるのか信じられぬ)作るのは楽しいので、こだわってよかったと思ったのだった。
こだわって作った物には愛着が湧く
今回作ったカイコに限らず、あれこれこだわって作った物には相応に愛着が湧く。生き物の形をしているとなおさらである。こういうことを言うと引かれるかもしれないけれど、自分が死んだときに、一緒に燃やしてもらうか、信頼のおける人に譲渡するか真剣に悩む程度には愛着が湧いている。他の作り手の人たちはどうしているのだろう?
ところで、途中で写真を載せたオオミズアオも大好きな蛾だ。次はあれを作ってみるのもいいかもしれない。
記事に使わなかった写真
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