緊張の乗船

フェリーが接岸すると乗っていた人と自動車が降り始め、そろそろ車に戻らなければならない。

乗船が始まり車は一台づつ順番に乗り込む。いよいよ僕の番となる。

そろりそろりと進むとフェリーの中は外から見るよりも広い。体育館くらいあるだろうか。
誘導の人が大きなジェスチャーで案内してくれる。駐車場みたいに自分で駐める場所を選ぶ訳ではないのだ。
車を駐めるとすぐにタイヤに輪止めをしてくれる。
当初の心配に反してあっけなく乗ることができた。
車から降りて駐車スペースの横の階段から二階へと移動する。
平成を感じる客室
ほぼ同じタイミングでぞろぞろと乗客が客室に流れ込むので、椅子取りゲームの要領で席が決まっていく。

久しぶりのフェリーの客室の中に入るとコーヒーの美味しそうな香りが充満している。
僕が子供のころ(平成初期ごろ)には岡山香川エリアの昼の時間帯にしきりにフェリーのCMが流れていた。
当時の雰囲気がそのまま残されている。
客室の中央には売店があり、小腹が空いたらお菓子やうどんなどの軽食も食べることができる。
そして向かいにはゴミ箱と机。小豆島の地図は色褪せている。
低い唸りを上げて船が動き出すと船内すべてのものが振動を始め、声を出すと「ワレワレハウチュウジンダ」になる。
あのスペースはかつての公衆電話のスペースじゃなかろうか。その横の階段はデッキへと繋がる。
自由に歩き回って探検できるのも船旅の醍醐味だ。

重い扉を開けるとすでに海の真ん中にきていた。
寒いためかデッキの人影はまばらだが、大小のカメラを携えフェリーとの思い出を残している。
島の間を通り抜けるように進みヨットとすれ違う。
大小の島々がたくさんあって穏やか。いかにも瀬戸内海らしい風景。

船の速度は想像以上に速く、まるで早送りの様に雲と海面が流れていく。