まずは肝心のオニヤンマを作ります
密林の中には、いろいろなタイプのオニヤンマが生息していた。
最初にオニヤンマの虫除けを考えついた人はまさしく発想の天才ともいえるべきお人である。「化学物質を使わない虫除け」の発明者としてたくさん儲けてくれていたら夢があったのだが、神デザイナーの作品(=自然物)が著作権フリーであるのをいいことに、今では類似品が山ほど発売されている。
買って済ませるのはあくまで保険ということにして、私も自分でオニヤンマを作ることにする。
大きさは最大クラスの11cmにしよう。
スタイロフォームと竹串で芯を作る。
形を作っていくのは、おなじみの石粉粘土だ。細いから作業しにくいが、それでも本物のオニヤンマよりは太くなってしまった。あんなスラっとした細い体で蜂やアブみたいなずんぐりした奴らと戦うのだから大したものだ、と妙なところで感心した。
タミヤのサーフェイサー(グレー)を吹き付けたところ。
アクリル絵の具で色をつけていく。
以前は乾いた石粉粘土に直接アクリル絵の具を塗っていたのだけれど、サーフェーサーを吹いてから着色した方が絵具の食いつきがいい気がする。スプレーでシュッと一吹きするだけなので、簡単でありがたい。
胴体が完成!
害虫の世界認識は非常にいい加減で、オニヤンマの虫除けにしても「虎ロープで代用できる」という人がいるくらい大雑把にしか把握していないらしい。人間に例えるなら、白黒の車が全部パトカーに見えるようなもんだろう。少し、親近感が湧くような気もする。
何が言いたいかというと、本物のオニヤンマの模様を細かく写す必要はなかったのだが、きれいにできたのでうれしいということだ。
さて、こいつに透明の羽をつけてやりたい。
しかし、ご存じの方もおられるだろうがトンボの羽というのはとても複雑な模様が入っているのだ。あれをどうやって表現する?プラバンに手で書き写す?いやいや、ちょっとごめんこうむりたい。
考えてもいいアイデアが出てこないので、ネットで調べて出てきたやり方を試してみることにした。
まず図鑑などから取り込んだ羽だけの画像を用意して
コンビニのコピー機で印刷したものを切り抜き、ビニールテープに貼り付けてやる。
紙の部分を水でふやかす。
そして紙を剥がす。うわあ!
思わず歓声をあげた。
まさかまさか、こんなに簡単に、きれいに模様が写し取れるなんて。世の中にはすごい裏技があるものだなあ。
紙を全て剥がして、水で丁寧に洗ったところ。
これをプラバンに貼り付けて羽の形に切り抜いたものを胴体と合体させたら、もうでき上がり。
オニヤンマだ。
「なんか太い。凸凹してる」とか思う人は目を細めて見てほしい。
頭に着けて歩いてみる
当初の予定からするとまだ折り返し地点なのだが、オニヤンマの形のものが完成したことによりテンションが上がったためさっそく装着して外に出てみることに。
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検証のために襲ってきてくれそうな蜂がいないか、わざわざ植え込みを覗いてみたり。
近所の山中の樹液の出る木まで行って帰ってきた。樹液の出る木には、ノコギリクワガタがたくさんいた。夏ですね。
例えば蜂が襲ってきて、頭にたかろうとした瞬間に「あ、やべっ!」という感じで反転して逃げて行ってくれたりしたら、これ以上ないくらいわかりやすく効果が実証されたことになる。
残念ながらそこまで都合のよい蜂は現れなかったが、森の中を歩いたにも関わらず(そして虫よけスプレーの類も一切つけなかったのに)蚊に刺されることすらなかった。
虫除け効果がある......のかな?
腕に虫がとまったので「あ!」と思って見たら、カメムシだった。刺さない虫だ。よかった(いいのか?)
そうそう、動かすんでした
オニヤンマを帽子の片側に設置した場合、反対側から飛来した害虫からはオニヤンマが見えないため虫除け効果が発揮できない。死角ができてしまうのだ。2つ作って両側に取り付ければいいのでは?とも思ったが、オニヤンマは普通単独で行動しているので、一つの頭に2匹のオニヤンマが止まっていたら不自然だともいえる。
それに、たとえ単調な動きとはいえ動いた方が本物っぽいではないか。
道具箱の中に眠っていたギアボックス。
仕組みは単純だ。モーターを使って、円を描くように飛翔させる。
このときモーターに直接つないだだけでは回転数が高すぎてパワーも足りないから、ギアボックスで減速してやる。以上。
適当な土台を作ってギアボックスと電池ボックス、スイッチ、それらをつなぐ配線を取り付ける。
そして回転軸にプラバンで作った長い板を固定。ここにオニヤンマを取り付けるのだ。
取り付けた。オニヤンマの重みでしなっている。実はバランス調整が結構大変だったのだが、そこは省略する。
かぶってみて気づいたんですが、「360°どの方向から飛来した害虫からもオニヤンマが見える」という目的自体は頭の真上に設置した時点で達成しちゃってますね、これ。
安全ピンと安定させるための”くさび”用の板を使って帽子に固定。かぶってみると頭の上に装置のずっしりとした重みを感じた。
帽子という軟地盤の上に建っているせいで多少ふらつくところに一抹の不安がよぎる。
早速スイッチを入れてみよう......はばたけヤンマよ!
オニヤンマ「シュン!」
逃げた......!?
頭をゆさぶられるような衝撃。射出感。そして軽くなる頭。
決して命を吹き込まれて飛んでいったわけではない。ギアボックスによるモーターの減速が不十分だったせいで飛び出してしまったのだ。
電池の数を半分に減らす。目にも止まらない早さで回転してもらっても困るのだ。
あらためて、程よい飛翔速度までデチューンした様子です。
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土台が思いっきり左右に揺れているが、オニヤンマ自体はちゃんと飛んでいる。これは害虫も寄り付かないだろう。
でも頭の上でくるくるされると害虫以上に鬱陶しいかもだ。
果たして虫除け効果はあるのか。一夏かけて実証したい
かくして、オニヤンマは飛んだ。そして、視界の上端を1秒に1回のペースでオニヤンマが横切る、帽子越しに装置が作動している感触がダイレクトに頭へ伝わってくるなどの問題が残された。本気で運用するなら設置場所は竹竿の先端などに改める必要があるのかもしれない。
改善の余地はあるが、オニヤンマが常に周囲を威圧してくれているのは式神っぽくて中二心をくすぐるものがある。
いかほどの虫除け効果があるのかというところが気になる人も多いだろうが、まあ待てまあ待て。そこはこれからじっくりと調べてみるということで。
猫にガン見される副作用は容易に実証された。