「車から目立つ服」とは
いまは男女平等が当たり前の世の中である。それでも研究室に女性が数人しかいなかったハード理系学部出身の僕なんかにとって、女子大という響きだけで気後れしてしまうこと200%である。ようするに緊張しています、ということです。
後ろに並んでいるのが今回彼女たちが作った「車から目立つ」服である。
服にはそれぞれ工夫と秘密が隠されているというので、学生のみなさんに服を着てもらっているあいだ、この「視認性の高い服」を研究しているという相模女子大学角田先生にお話をうかがった。
--視認性の高い服を作られた経緯を教えてください。
角田先生:私はもともと服のパターンを作ることを専門にしていたんです。教員となり視認性の高い服作りの研究をしていたところ、高視認性安全服研究所の特別会員のお話をいただきました。
そこで同じ立場の北里大学の川守田先生(医療衛生学部視覚機能療法学准教授)という方と出会いまして、視覚が専門の川守田先生と衣服デザインが専門の私という異なる分野がコラボレーションすることで何か新しいことができるかも、と盛り上がって始まったのがこの企画です。
角田先生:ここにある黄色と黒の市松模様や斜めの縞模様などは、川守田先生が行った「交通事故の起こりやすい時間帯にドライバーから見えやすい柄の調査」に基づいて作られています。
この調査は時速60キロで走る車が認識しやすいパターンを研究したもので、事故を起こさず安全に止まるために、どういう色や柄が有効なのかを調べています。
--研究結果がこのパターンに反映されているというわけですね。でもこの工事現場っぽさを普段着に取り入れるのは阪神ファンでもない限り難しいのでは。
工事現場ではなくおしゃれにしたい
角田先生:今でこそスポーツブランドなんかで反射材を使ったかっこいいものも出てきているんですが、わたしが研究を始めたころは反射材が付いた服といえば工事現場の作業着という印象で、普段着としてそういう洋服を着ている方はほとんどいませんでした。
そこでなんとかして今の子たちでも着られるよう、おしゃれに落とし込めないかなと考えたんです。
たとえば下の写真みたいに、ラインを加えるだけで工事現場がかわいらしいパターンに変わりますよね。
--本当ですね!これならロンドンあたりのブランドにありそうだ。
角田先生:こういうのはまずおしゃれが先にないと広がらないと思ったんです。ちょうど今、ファッション業界でも蛍光色や原色なんかが違和感なく使われてきていて、それも追い風でしたね。
--先生は普段は黄色とか黒は着られないんですか。
角田先生:着ますよ!やっぱり阪神ファンみたいになりますけど。
角田先生はほんとうによく笑うので、視認性の高い服を着なくても存在感抜群ではあった。でも本当にこの柄の服で視認性が高まり交通安全につながるのだろうか。
楽しくお話を聞いているあいだに、学生さんたちが着替えを終えて帰ってきた。
同じ色合いのちょっと派手な服を何人かで着るとアイドルユニットみたいになる、の法則である。ただしそれは女子高生か女子大生に限るが(おれたちがやるとたぶんハロウィン帰りみたいになる)。
それにしてもこうやって見ると工事現場感はまったくない。この服が本当に視認性に優れているのか、試していきたいと思います。