沖縄の卒業シーズンでは学生が小麦粉を買えなくなる
まずはこちらを見て欲しい。沖縄の卒業シーズンの訪れは「学生への小麦粉販売の自粛」から始まる。
2月下旬になるとスーパー・コンビニ各所で、学生へ小麦粉・卵・マヨネーズ・ケチャップなどの販売を自粛しましょうという張り紙が出され、学生から縁遠くなった人もこれを見ることで「ああ、そろそろ卒業式の時期か」と感じるのだ。
というのも沖縄では、何故か卒業式に小麦粉をかけ合う「小麦粉かけ(小麦粉爆弾とも言われる)」という風習が存在する。調べてみるともともとは紙吹雪の代わりに小麦粉を使ったことがはじまりらしいのだが、昔はかなりの割合で行われていたらしい。
当然ながら教員や親に小麦粉が見つかると没収されてしまうので、後輩が卒業生のために小麦粉を集める、分散して保管して当日持ち寄る、誰かの家の屋根裏に隠しておくなどして事前に露見しないようにする学生と、なんとしてでも小麦粉かけを阻止したい教員・PTAの間で水面下での情報戦が行われていたという。
上記のような販売規制もあり現在では下火になってほぼ行われていないようだが、それでもたまに、事前に見つかった小麦粉をどこかに寄付したみたいな話が地元の新聞記事に美談として掲載されることがある。
卒業生に渡されるお菓子のレイ
卒業シーズンになるとスーパー・コンビニで見かけるものにもうひとつ、「お菓子の首飾り(レイ)」がある。主に後輩や保護者から卒業生に送られるもので、昔はひとつひとつせっせと手作りしていたらしいが、今では店舗に出来合いのものがたくさん並んでいる。
基本は首からかけるレイが多いのだが、中にはうまい棒を駆使して作られた帽子、ランドセルや傘なども存在している。
以前沖縄出身のライター與座ひかるさんが「「姉妹」制度があった中学時代の話」という記事で姉分(あねぶん)、妹分(いもうとぶん)という制度を紹介していたが、卒業式にもらう贈り物を担保するという面もあったのではないだろうか。
極めつけはこちらをご覧頂きたい。
お菓子ではなく野菜を組み合わせた「ベジタブルレイ」である。これをもらったらどんな顔をすればいいのだろうか…と思ったのだが卒業式に野菜を贈られたという人は一定数いるらしい(大根にリボンをつけたもの、ブロッコリーを花束にしたものなど)。
これらお菓子のレイは主に後輩から先輩に贈られるものなので、部活をやっていなかったなど後輩との関わりが少ない卒業生は受け取ることができない。そのあたりの不平等を無くすために、最近では自粛したり、学校側から全面的に持ち込み禁止とする通達を出す動きもあるそうだ。
卒パがアメリカン
我が身を振り返ってみて全く心当たりがないので僕の地元(新潟県)には無かったと思うのだが、沖縄では高校の卒業式の後に学校公認でホテルの宴会場やレストランなどを借りて「卒業パーティ」なるものが行われる。正式には「分散会」「謝恩会」などというもので、沖縄県以外でも行われている地域はあるらしいのだが、沖縄の卒業パーティはフォーマルなスーツやドレスが基本。卒パ用として販売されている服を見て頂きたい。
バック・トゥ・ザ・フューチャーのダンスパーティみたいな予想をはるかに超える、かなりきちんとしたパーティーの装いである。結婚式くらいでしかこんな格好しないのではないだろうか。
この卒パのために、女子は卒業式後の数時間でカラーリングやセットをしに美容院に行ったり、ネイルサロンに行ったりすることもあるらしい。ちなみに教員らも参加するため、当然ながら完全にノンアルコールのパーティである。
やはり沖縄の文化は独特だ
というわけで、沖縄ならではの卒業式あるあるの様子をお届けした。
その他にも、アメリカの卒業式などで行われる「帽子投げ」の代わりに、ブレザーや学ランを投げる「ブレザー投げ」も最近は定番化しているらしい。沖縄の卒業式について色々な人に話を聞いてみたのだが、部活の先輩をボコボコにして胴上げする(もしくは胴上げした後ボコボコにする)という謎の風習があったという人もいた。なんだそれは。
ひょっとしたらあなたの地域にも独特な卒業式の文化があるかもしれない(あるいは今回紹介したものも沖縄だけじゃないよ!というものがあるかもしれない)。情報をお持ちの方がいれば是非教えて頂きたい。