特集 2019年2月1日

岡山は桃太郎好きが高じて完全にモモタライゼーションが完了しました

岡山で桃太郎の名の付く物、桃太郎に関係するものを集めてみた。

「岡山と言えば桃太郎」

その認識は岡山県内のみならず全国的である。過去にはこんな動画もあったように桃太郎がいたるところにある。しかし調べれば調べるほど、桃太郎への異常な執着が見えてきた。

ドラマとかでストーカーの部屋の壁に写真がバーっと貼られているが、あれに似ている。ちょっと空恐ろしくなるのだ。

「ももたろう自動車学校」「桃太郎線」「桃太郎幼稚園」などなど、この記事を読み終えた頃には桃太郎がゲシュタルト崩壊してしまうだろう。

1984年生まれ岡山のど田舎在住。技術的な事を探求するのが趣味。お皿を作って売っていたりもする。思い付いた事はやってみないと気がすまない性格。(動画インタビュー)

前の記事:靖国神社の鳥居の予備だった石が今もある島、北木島へ

> 個人サイト オカモトラボ

桃太郎以外になにがある?

僕は岡山県内に住んでいるが、県外の人に「岡山から来ました」というと、「桃太郎の!」と言ってもらうことが多い。逆に言えば「桃太郎以外に何かある?」というのが多くの日本国民の認識であろう。その認識はほぼ正しい。桃太郎しかないんじゃないかと思うくらい桃太郎だらけだからだ。

その実情をご覧いただこう。

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多すぎて待ち合わせに使えない桃太郎像

まずやってきたのは岡山駅。岡山に来た人がまず訪れる岡山の玄関口である。

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岡山前広場にあるのが有名な桃太郎像だ。

この桃太郎像はいわば岡山のランドマーク的な存在で、渋谷のハチ公みたいな感じだ。しかしハチ公像と違って岡山県民は待ち合わせの目印にはほとんど使わない。

なぜなら、「桃太郎像で集合ね!」と言っても、

「は?どの…?」

となってしまう。岡山に桃太郎像は無数にあるからだ。

例えば、

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道の向かいにアゴに手を当て真っ裸で物思いにふける像があるが、
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桃太郎像である。
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組み上がったばかりのガンプラみたいに棒立ちのこちらの像も
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桃太郎像である。
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ちょっと郊外にも桃太郎像はあるし、
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岡山駅の駅ビルの中にも桃太郎像はある。

この駅ビルの中の桃太郎像は、TARO’s SQUAREという場所にあって、岡本太郎の作品と桃太郎がタロウというめちゃくちゃ雑なくくりでまとめられている。

このように岡山では桃太郎像が多すぎるゆえに、待ち合わせに使えない問題が生じている。しかし、桃太郎への執着はこんなものでは終わらない。まだまだ序の口だ。

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2018年、交通機関は桃太郎化(=モモタライゼーション)が完了

桃太郎に異常な執着を見せる岡山は何かにつけて「桃太郎」という名称をつけたがるのだが、桃太郎を名称に付けることを「桃太郎化」(=momotarization)と呼ぶことにする。もう交通機関に関しては桃太郎化が完了した。

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2016年には「吉備線」は「桃太郎線」になった。

正直なところ、岡山県民の僕ですらこの変更は衝撃的だった。それまで吉備線でなんの支障もなかったからだ。

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桃太郎線では電車自体にも桃太郎がラッピングされていたりする。
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そして2018年には「岡山空港」の愛称が「岡山桃太郎空港」に。

これに関しては「まあそうなるよね」という感想しかない。

なお、

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岡山桃太郎空港内にあるうどん屋さんは「手打ちうどん桃太郎」だし、
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岡山桃太郎空港内のお土産屋さんは「岡山特産館桃太郎」だ。

これにより鉄道と空路はたった2年で桃太郎によって支配される形となった。

残るは自動車や徒歩、自転車などがあるが、

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そもそも岡山駅から東へ伸びるメインストリートの名称は「桃太郎大通り」だし、
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桃太郎大通りを走る路面電車は「MOMO」だ。

地方の足と言えば自動車だが、

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自動車免許を取ろうと自動車学校へ行くと「ももたろう自動車学校」だし、
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車を停めようと駐車場へ行くと「ももたろうパーキング」である。
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レンタサイクルはと言うと「ももちゃり」だ。

新幹線にはさすがに桃太郎の手は伸びていないと思っていたが、先日のウェブメディアびっくりセールで新幹線に乗ろうとしたとき、

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新幹線の構内にあるお土産屋さんは
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「おみやげ街道 桃太郎」だった。

岡山での移動は常に桃太郎と隣り合わせである。岡山の移動は桃太郎を避けて通ることはできないことを思い知らされた。

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ゆりかごから墓場まで桃太郎

さて、続いては日常生活に潜む桃太郎についてもご紹介していこう。

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手紙でも出そうかなと思ったら、ポストの上で桃太郎がくつろいでいる。

「私は関係ありませんよ」的な感じであさっての方向を向いているがれっきとした桃太郎だ。

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金券ショップに来てみると「ももたろうチケット」である。
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そして、散歩に行こうと公園に来た。桃太郎らしき姿はないが…
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この公園の名前も「桃太郎公園」だ。
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子供たちが通う保育園にも「桃太郎保育園」があり、

岡山の子供はこうして幼少期から桃太郎を刷り込まれ、桃太郎エリート(?)として成長して行く。

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なお、桃太郎保育園の隣は「コーポ桃太郎」である。

外壁はピンクで桃太郎の名を冠するに相応しい。

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コーポがあるならハイツもある。

しかし、残念ながら「メゾンももたろう」は無いようだ。

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そして「ももたろうクリニック」もあれば、
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「ももたろう薬局」や、
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「グループホームももたろう」もある。
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まだまだあるぞ

調べれば調べるほど桃太郎に関連するものが見つかるし、町を歩けば桃太郎に当たるという感じだ。

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岡山駅前の商店街では月に一度「桃太郎市」が開催されるし、
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年に一度、夏には「おかやま桃太郎まつり」も開催される。
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ビジネスホテルとコインランドリーも桃太郎だし、
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ラヴなホテルもMOMOTAROである。
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温泉に入りたければ「桃太郎温泉」もあるし、
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ガスタンクは桃だ。
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マンホールの蓋も。

インフラも桃太郎が制圧している。

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観光センターも「ももたろう」だ。
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一般にはスワンボートと認知されている乗り物は、岡山では桃ボートになっている。

この桃ボートを漕ぐさまは多分「どんぶらこ」だ。

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まだまだまだあるぞ

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献血ルームも「ももたろう」であるし、
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ジーンズも桃太郎。
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桃太郎のからくり博物館という場所もある。

ここは博物館となっているが、手づくり感が満載のB級スポットという感じだ。でも意外と楽しい。

お役所関係も総じて桃太郎だし、桃太郎を使わなかった結果…

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県のキャラクターも桃太郎をモチーフにしているし、
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警察のキャラクターも桃太郎がモチーフだ。

岡山県と岡山県警が桃太郎をモチーフにした結果、困ってしまったのは岡山市だ。

さすがに岡山市まで桃太郎モチーフにする事ははばかられた様だが、桃太郎という唯一無二のアイデンティティを使わなかった結果、

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水と葉っぱというどこにでもあるモチーフのキャラクターになってしまう。

奇しくも岡山がいかに桃太郎に頼らざるをえないかを露呈する結果に。

民間企業も桃太郎

民間企業にも桃太郎はたくさんだ。

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会社名にも桃太郎だし、
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不動産会社も桃太郎だ。

小腹が好いたら食べ物屋さんも桃太郎

次は食べ物に関係する桃太郎を見ていこう。

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小腹が空いたら「鉄板屋 桃太郎」がある。
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お好み焼きは美味しかった。

メニューにも「モモタロウ」が書いてあった。この店ではチーズ入りお好み焼きのことを「モモタロウ」というらしい。徹底している。

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回転寿司にも「桃太郎すし」がある。
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桃太郎すしは美味しい。
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居酒屋さんも桃太郎の名前を冠している。

そして農産品では、トマトに「桃太郎トマト」という種類もある。

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季節的に入手できなかったので桃太郎トマトを使用したゼリー。

桃太郎トマト使用と書いてあるが、トマトなのか桃なのか分かりにくいような気もする。

隠れ桃太郎

ここからは、これが桃太郎関係であるとはパッと見ただけでは気付きにくい、隠れミッキーならぬ隠れ桃太郎も紹介していこう。

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さきほどご紹介した桃太郎大通りでは、車止めが「鬼の金棒」になっている。

ここまでほぼ全てが桃太郎だが、珍しく鬼にフィーチャーしている。

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岡山駅の地下街の名前は「PESCA」。イタリア語で「桃」だ。
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地元サッカーチームの「ファジアーノ岡山」の「ファジアーノ」もイタリア語で「キジ」。

なぜかイタリア語を使いがちである。

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ファジアーノ岡山のキャラクターもキジをモチーフにしている。本人も「え?俺、キジだったの!?」と驚きを隠せない様子。
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そういえば、ファジアーノ岡山の試合も行われるこちらのスタジアムも、ネーミングライツが売られるまでは「桃太郎スタジアム」だったし、
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隣接するこちらの建物は「桃太郎アリーナ」だった。

言葉は多用されすぎると意味を失う

ここまで見てもらった通り「桃太郎」という言葉が多用されすぎた結果、岡山県民的な感覚では「桃太郎」という言葉に「桃から生まれて鬼を退治するおとぎ話」という意味合いはもはや無い。

ネガティブな意味合いもないので、岡山県民の言う「桃太郎」を一般的な日本語に訳すと「良い」くらいの感覚だ。

つまり、岡山県民にとって「桃太郎大通り」は「良い大通り」くらいのニュアンスだ。その説明で岡山県外の人にも納得してもらえる。

そもそも岡山の桃太郎への異常な執着は何なのか

しかしそもそもどうして岡山県民は言葉の意味を失うほど桃太郎への執着をみせているのか。

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その謎を解き明かすべく桃太郎線(訳:良い線)に乗って吉備津駅へ向かう。
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吉備津駅に到着して10分ほど歩く。
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吉備津神社へと到着した。
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吉備津彦神社のお土産屋さんもこれまた「桃太郎」だ。
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この吉備津神社には吉備津彦命(きびつひこのみこと)が祀られている。

吉備津彦命は家来の、犬飼健(いぬかいたける)、楽々森彦(ささもりひこ)、留玉臣(とめたまおみ)の3人と共に、この地域を治めていた温羅(うら)という鬼(渡来人)を退治したといわれる。

その物語が桃太郎の物語の元になったというのが岡山県民の信じて疑わないところである。

家来が3人いる事と、犬はちょっと名前がかすっているのと、鬼?を退治したという部分は桃太郎の話と一致しているが、なんだか関連性が薄い気がしないでもない。

なお岡山県では現在、桃の栽培も盛んだが本格的に桃の栽培が始まったのは明治以降の話だ。

そんな自信の無さの表れと、万が一、桃太郎というアイデンティティを失うと水と葉っぱ頼りなってしまう岡山は、これからも桃太郎への執着を続けて行くのだ。

もちろん桃太郎好きという面もあるだろうけど。


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最後に今回訪れた場所をまとめてみました
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