両方買ってほしい
両方とも本当においしいのでみんな買ってほしい。
入手難易度はなかなか高いが、まずは大手饅頭のネット通販あたりからが手を出しやすそうだ。
もしこの記事がきっかけで饅頭が売れても僕には一銭も入ってこないが、みんな甘さにふるえてほしいのだ。
岡山に行くことがあったら、きびだんごは別の機会に取っておいてこちらの饅頭を買って帰ろう。ちょっと通っぽく見えるし。
岡山のお土産といえば、なんだろうか。
きびだんごという意見が多いかもしれない。
だが、僕が推したい岡山土産は他にある。
薄皮で包んだほとんどあんこの饅頭を知っているだろうか。
しかも岡山市と倉敷市とでそれぞれ別の似た饅頭があるのだ。
両方推したいので食べ比べてみました。
父の実家が岡山の牛窓というところにある。「日本のエーゲ海」という、そりゃずいぶん思い切ったねぇと思ってしまうキャッチフレーズで売っている町だ。
祖父母に会いに行くときに良くもらって喜んで食べていた饅頭がある。
それが大手饅頭だ。
この饅頭、あんこが透けて見えるほど薄皮でめちゃめちゃに甘くておいしいのだ。
(どんな見た目かはこのあと出てくるので少し待ってほしい!)
甘いものが好きなので、僕の中での饅頭ランキングで1位を獲得するくらい好きだ。
それに、岡山県民がお土産に持っていくランキングでも上位に入ってくるのではと思うくらい、地元の人に愛されているのではと感じる。
当サイトのライターで現役岡山県民のオカモトラボさんに聞いてみたら、なんとたまたまデイリーの企画会議に参加する日でお土産に持ってきているという。
しかしおいしい割りに、岡山以外ではなかなか見かけない。
それも地方のお土産っぽさが出ていて好きなのだが、おいしいので気軽に手に入れたいものだ。
そう思っていたら、たまたま立ち寄った日本橋高島屋で売られているのを見つけて小躍りした。
日本橋高島屋に大手饅頭売ってる!
— 爲房新太朗 (@stamefusa) February 17, 2019
嬉しさのあまりTwitterに書いたら、さらに薄皮の饅頭があるという情報を教えてもらった。
倉敷にある藤戸饅頭というのがそれだ。
なんだそれは。どこで売ってるんだ。
父の故郷である牛窓は兵庫寄りの岡山に位置しているのもあり、倉敷には一度くらいしか行ったことがない。
なので藤戸饅頭も知らなかった。これを読んでいる倉敷市民の皆さんすいません。
きっとこれもおいしいに違いない。そう思い東京でも買えないか調べてみると、藤戸饅頭のサイトにこう書いてあった。
見た瞬間、手に入れるチャンスの少なさに笑ってしまった。
新宿高島屋は月イチしか買えない。これ以外の販売店は全部岡山である。
ちなみに大手饅頭は大阪などの百貨店でも買えるし、なんならネットでも買える。うれしい。流通万歳だ。
新橋にある鳥取県と岡山県のアンテナショップ、「とっとり・おかやま新橋館」なら両方買うことが出来そうだ。
ふたつの県がひとつのアンテナショップに共存しているのはここだけだ。
JR新橋駅から徒歩1分くらいのところにあってすごい。
時刻は18時である。店内のお客さんもまばらだし、サッと買ってしまおう。
まじか。
お昼にまとめ買いしたお客さんもいたらしく、売り切れていた。そんなに人気なの…?
泣く泣く次の日の土曜日に買い直しに行くことになった。
購入した段階で満足度がものすごい。
が、もちろん食べてみなければ。
果たしてどんな味がするのだろうか。
いよいよ食べ比べてみる。
藤戸饅頭は5個入りなのもあって竹皮で包まれているのが渋くてかっこいい。
大手饅頭は先ほども写真を載せたが、箱がきれいでいいところのお菓子、といった感じがする。
包みを開けてみる。
どちらもかなり似ていて、薄皮の饅頭だ。
果たして味に違いはあるのだろうか。
まずは大手饅頭からだ。
石ではありません。
甘酒と小麦粉で作った薄皮でこしあんを包んでいるのだ。
石川「あ、でも持ってみると思ったより皮の存在感を感じますね。白い部分が厚いのかなと思ったけど、透明な部分もしっかりと皮だ」
古賀「甘酒が効いているから、甘さが鋭角だね」
爲房「甘さがガーンと来ますよね」
古賀「酒という乗り物に乗ったあんこの甘さがグン、てきますね」
石川「甘さが扉開けてきちゃうんですね」
そう、甘いのだ。薄皮が甘酒の風味を漂わせつつ、あんこが甘さをどかっと持ってくる。
そしてこれがどうにもおいしいのである。
パッと見は大手饅頭と似ている。が、こちらの方が薄皮だ。
大手饅頭は断面の95%くらいがあんこだったが、藤戸饅頭は98%があんこで出来ているんじゃないか。
食べてみる。
古賀「あ、(大手饅頭と)味違うね」
石川「違う違う」
古賀「こっちの方がさっぱりしてる」
藤戸饅頭の方が甘酒の風味が控えめで、小豆の味が強く出ているように感じる。
僕もこちらの方は初めて食べたのだが、思ったよりも味に違いがあって驚いた。そしてこちらもとてもおいしい。
賞味期限にも違いがあって、大手饅頭は7日だが藤戸饅頭は3日しか保たない。
藤戸饅頭の方が短いのは、大手饅頭よりも砂糖が少なくてさっぱりしている味わいだからかもしれない。
大手饅頭の箱には歴史なんかが書かれた紙が入っていて、そこにはオススメの食べ方も書いてある。
そんなに色々あるのか。これはぜひ両方の饅頭で試してみたいぞ。
ところで藤戸饅頭はこのような能書きは一切なかった。
なので、実は藤戸饅頭派からしたら邪道なのかもしれない。
岡山県内の戦争を引き起こしてしまうかもしれないが、県外の民の好奇心ゆえの食べ比べなのでどうか刀を鞘にお収めください。
さてまずはレンチンで温めたバージョンである。
そのまま入れて、500ワットで30秒温めてみる。
温め時間は、レンチン会で様々な食べ物をレンジにかけ過ぎている古賀さんが算出した。経験に裏打ちされている。
古賀「あ、香りがすごい、ほら」
温めることで甘酒のいい香りが増強されている。
これは食べる前からおいしいとわかるやつだ。
古賀「あーこれはおいしい」
石川「全然これじゃないですか」
爲房「これ正解ですね」
古賀「甘さより思いのほか熱さが来るね」
温めすぎたかもしれない。
しかし普通に食べるのと比べると、あんこの甘さの角が取れるというのか、口に入れてすぐやってくる甘さが抑えられている。
石川「あんこと皮の食感が近づいて、馴染むようになってますね」
古賀「出来立てはこうだったんでしょうね」
一方藤戸饅頭はどうか。
古賀「なんかこっちの方が小豆の味が強く出ますね」
爲房「あんこの味と言うよりは小豆の味がしますね。最初の風味が大手饅頭と全然違う」
古賀「この饅頭はやっぱり小豆重視の味なんですかねぇ」
石川「小豆茶っていうお茶が好きで、甘くはないんですけど小豆の甘みがするお茶で。それをちょっと思い出させる味です」
こちらは小豆感が強くなるという感想が多く出た。この辺りは両者の特徴の違いが表れているだろう。
それでは冷やして食べるのはどうだろうか。
爲房「切ったら羊羹っぽくなってきました」
古賀「皮とあんこが乖離してきてますね(食べる)これね…冷たいよ!」
石川「いやーこれでもいいんじゃないですか」
古賀「これでもいい?わたし常温の方が好きだったな」
爲房「冷やしたら、薄皮の甘酒の風味が抑えられてますね」
古賀「味の個性がつぶされてくるというか。甘い、より冷たいが先に来ちゃう」
石川「食後のデザートにはいいかもしれないですね」
石川「うん、皮がかたい」
古賀「テクスチャが全部かたい。どんどんね、味は羊羹に近づいていると思うんですよ。こっちは冷たいのが合うなー」
石川「あずきバーじゃないですか、凍ってないあずきバー」
あずきバーという感想に、あーと共感の声が挙がった。
食べる度に記憶の中の小豆を巡る旅に出ている。
冷やしたものは藤戸饅頭の方が合うという声が多かった。
小豆推しの藤戸饅頭に比べて大手饅頭は薄皮の甘酒の風味が強いので、そこが抑えられてしまう冷やしバージョンは向いてないかもしれない。
温める、冷やすといった気軽なアレンジ方法以外にちょっと変わり種の方法があるので試してみたい。
それが先ほどの紙にも書いてあった「湯を注ぎ汁粉にする」だ。
大手饅頭が言うには、「焼いたおまんぢゅう二個位をお椀にとり、少量の塩を入れ熱湯を注いでいただきますと即席汁粉ができ上がります。」とのことだ。
ものすごく気になるのでこれもやってみよう。
大手饅頭と藤戸饅頭、どちらもかき混ぜるとお汁粉のようになった。
まずは大手饅頭汁粉からいってみよう。
古賀「あー、お汁粉だ!まごうことなきお汁粉だ!」
爲房「甘酒感来ません?」
古賀「来ます来ます。おいし〜」
石川「これでも藤戸饅頭の方と違いが出ますかねー?」
レンチンしたとき以上に甘酒の風味がやってくる。お汁粉と甘酒を8:2で混ぜたような味だ。
普通のお汁粉にない風味でうまい。
さて藤戸饅頭汁粉はどうか?
古賀「こっちの方がお汁粉っぽい!」
石川「ほんとだ…!」
古賀「全然違う、すごい。なんでだろう?饅頭で食べたときと全然印象が違う」
やはり小豆推しだからか、ちょっといいお汁粉な味になった。こりゃうまい。
餅を入れて食べたくなるやつだ。
王道を行っているのは藤戸饅頭汁粉だ。大手饅頭汁粉はお汁粉の王道とは違うが、これはこれでおいしい飲み物だ。
お湯で溶いただけですごく違いが感じられて面白い。
最後は大手饅頭のサイトにあったレシピを試したい。
古賀「丁寧なレシピだなぁこりゃ」
橋田「もう饅頭じゃなくてあんこですよね?」
古賀「あんパンは饅頭の皮をパンにしたわけじゃん?皮の役割をパンにやってもらおうってこと?」
饅頭のアイデンティティを放棄するようなレシピに一同衝撃を受ける。
大手饅頭は心が広いのかもしれない。藤戸饅頭でこれをやるのはちょっと気が引けた。
ツイッターでバイトがふざけたみたいな見た目になった。大丈夫だろうか。
こういうあんこがパンパンに詰まったタイプのあんパン、あるな。
橋田「おいしかろうねぇこれは」
石川「まぁおいしいですよね」
古賀「うん…おいしいよ。ずるいよ」
「あんこ」と「マーガリン」と「温め」の間違いない三重奏から、怒られるレベルの当然のおいしさが誕生した。
ただ、ちょっともったいない。饅頭そのものがおいしいので、どうしても余ったときにやってみるのがいいかもしれない。
両方とも本当においしいのでみんな買ってほしい。
入手難易度はなかなか高いが、まずは大手饅頭のネット通販あたりからが手を出しやすそうだ。
もしこの記事がきっかけで饅頭が売れても僕には一銭も入ってこないが、みんな甘さにふるえてほしいのだ。
岡山に行くことがあったら、きびだんごは別の機会に取っておいてこちらの饅頭を買って帰ろう。ちょっと通っぽく見えるし。
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