特集 2019年3月14日

ほぼあんこの岡山土産饅頭を食べ比べて甘さにふるえよう

岡山銘菓にほとんどあんこの饅頭がある。食べ比べよう。甘さにふるえよう。

岡山のお土産といえば、なんだろうか。
きびだんごという意見が多いかもしれない。

だが、僕が推したい岡山土産は他にある。
薄皮で包んだほとんどあんこの饅頭を知っているだろうか。

しかも岡山市と倉敷市とでそれぞれ別の似た饅頭があるのだ。
両方推したいので食べ比べてみました。

1987年兵庫生まれ。会社員のかたわら、むだなものを作る活動をしています。難しい名字のせいで、家族が偽名で飲食店の予約をするのが悩みです。(動画インタビュー

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きみは大手饅頭を知っているか

父の実家が岡山の牛窓というところにある。「日本のエーゲ海」という、そりゃずいぶん思い切ったねぇと思ってしまうキャッチフレーズで売っている町だ。
祖父母に会いに行くときに良くもらって喜んで食べていた饅頭がある。

それが大手饅頭だ。

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こんな箱に入っている。かわいい。

この饅頭、あんこが透けて見えるほど薄皮でめちゃめちゃに甘くておいしいのだ。
(どんな見た目かはこのあと出てくるので少し待ってほしい!)

甘いものが好きなので、僕の中での饅頭ランキングで1位を獲得するくらい好きだ。
それに、岡山県民がお土産に持っていくランキングでも上位に入ってくるのではと思うくらい、地元の人に愛されているのではと感じる。

当サイトのライターで現役岡山県民のオカモトラボさんに聞いてみたら、なんとたまたまデイリーの企画会議に参加する日でお土産に持ってきているという。

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こんな偶然ってあるのか。
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せっかくなので記念撮影しました。

しかしおいしい割りに、岡山以外ではなかなか見かけない。
それも地方のお土産っぽさが出ていて好きなのだが、おいしいので気軽に手に入れたいものだ。
そう思っていたら、たまたま立ち寄った日本橋高島屋で売られているのを見つけて小躍りした。


嬉しさのあまりTwitterに書いたら、さらに薄皮の饅頭があるという情報を教えてもらった。

倉敷にある藤戸饅頭というのがそれだ。
なんだそれは。どこで売ってるんだ。

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きみは藤戸饅頭を知っているか(僕は知りませんでした)

父の故郷である牛窓は兵庫寄りの岡山に位置しているのもあり、倉敷には一度くらいしか行ったことがない。
なので藤戸饅頭も知らなかった。これを読んでいる倉敷市民の皆さんすいません。

きっとこれもおいしいに違いない。そう思い東京でも買えないか調べてみると、藤戸饅頭のサイトにこう書いてあった。

▷新宿髙島屋[第4木曜日のみ販売]
▷とっとり・おかやま新橋館 [金・土曜日のみ販売]

見た瞬間、手に入れるチャンスの少なさに笑ってしまった。
新宿高島屋は月イチしか買えない。これ以外の販売店は全部岡山である。

ちなみに大手饅頭は大阪などの百貨店でも買えるし、なんならネットでも買える。うれしい。流通万歳だ。

新橋にある鳥取県と岡山県のアンテナショップ、「とっとり・おかやま新橋館」なら両方買うことが出来そうだ。

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ということで金曜日に仕事を早々に切り上げてやってきた。

ふたつの県がひとつのアンテナショップに共存しているのはここだけだ。
JR新橋駅から徒歩1分くらいのところにあってすごい。
時刻は18時である。店内のお客さんもまばらだし、サッと買ってしまおう。

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店員さん「藤戸饅頭は今日は売り切れですねー」

まじか。

お昼にまとめ買いしたお客さんもいたらしく、売り切れていた。そんなに人気なの…?
泣く泣く次の日の土曜日に買い直しに行くことになった。

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さすがに開店と同時に入店したら購入成功!

購入した段階で満足度がものすごい。

が、もちろん食べてみなければ。
果たしてどんな味がするのだろうか。

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お待たせしました、食べ比べです

いよいよ食べ比べてみる。

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パッケージはこんな感じ。左が藤戸饅頭、右が大手饅頭だ。

藤戸饅頭は5個入りなのもあって竹皮で包まれているのが渋くてかっこいい。
大手饅頭は先ほども写真を載せたが、箱がきれいでいいところのお菓子、といった感じがする。

包みを開けてみる。

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大手饅頭はこんな見た目です。
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一方の藤戸饅頭はこんな感じ。

どちらもかなり似ていて、薄皮の饅頭だ。
果たして味に違いはあるのだろうか。

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編集部から甘いもの大好き古賀さん、食べ物にもおもしろさを追求する石川さんが参加。

 

1、そのまま食べる・大手饅頭

まずは大手饅頭からだ。

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古賀「饅頭っていうよりきんつばみたいだね〜。(しげしげ見て)え、なに?なんだろうなって感じ。石?」

石ではありません。
甘酒と小麦粉で作った薄皮でこしあんを包んでいるのだ。

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切ってみると薄皮っぷりがわかる。

石川「あ、でも持ってみると思ったより皮の存在感を感じますね。白い部分が厚いのかなと思ったけど、透明な部分もしっかりと皮だ」

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食べてみる。「……甘いね!」

古賀「甘酒が効いているから、甘さが鋭角だね」

爲房「甘さがガーンと来ますよね」

古賀「酒という乗り物に乗ったあんこの甘さがグン、てきますね」

石川「甘さが扉開けてきちゃうんですね」

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特急あまざけ号に乗ってあんこが猛スピードでやってくる図。

そう、甘いのだ。薄皮が甘酒の風味を漂わせつつ、あんこが甘さをどかっと持ってくる。
そしてこれがどうにもおいしいのである。

1、そのまま食べる・藤戸饅頭
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さて一方の藤戸饅頭である。

パッと見は大手饅頭と似ている。が、こちらの方が薄皮だ。
大手饅頭は断面の95%くらいがあんこだったが、藤戸饅頭は98%があんこで出来ているんじゃないか。

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石川「薄すぎて細胞膜みたいになってますね」

食べてみる。

古賀「あ、(大手饅頭と)味違うね」

石川「違う違う」

古賀「こっちの方がさっぱりしてる」

藤戸饅頭の方が甘酒の風味が控えめで、小豆の味が強く出ているように感じる。
僕もこちらの方は初めて食べたのだが、思ったよりも味に違いがあって驚いた。そしてこちらもとてもおいしい。

賞味期限にも違いがあって、大手饅頭は7日だが藤戸饅頭は3日しか保たない。
藤戸饅頭の方が短いのは、大手饅頭よりも砂糖が少なくてさっぱりしている味わいだからかもしれない。

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こんな食べ方もある

大手饅頭の箱には歴史なんかが書かれた紙が入っていて、そこにはオススメの食べ方も書いてある。

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レンジで温める、冷蔵庫で冷やす、湯を注ぎ汁粉にする(!)

そんなに色々あるのか。これはぜひ両方の饅頭で試してみたいぞ。

ところで藤戸饅頭はこのような能書きは一切なかった。
なので、実は藤戸饅頭派からしたら邪道なのかもしれない。
岡山県内の戦争を引き起こしてしまうかもしれないが、県外の民の好奇心ゆえの食べ比べなのでどうか刀を鞘にお収めください。

2、レンチン・大手饅頭

さてまずはレンチンで温めたバージョンである。
そのまま入れて、500ワットで30秒温めてみる。
温め時間は、レンチン会で様々な食べ物をレンジにかけ過ぎている古賀さんが算出した。経験に裏打ちされている。

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レンジにちょこんとたたずむ大手饅頭がかわいい。
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30秒後。ビニールを剥がすのが熱い!
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カットすると、先ほどよりかなりやわらかくなっている。

古賀「あ、香りがすごい、ほら」

温めることで甘酒のいい香りが増強されている。
これは食べる前からおいしいとわかるやつだ。

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食べる。おいしい!そして熱い!

古賀「あーこれはおいしい」

石川「全然これじゃないですか」

爲房「これ正解ですね」

古賀「甘さより思いのほか熱さが来るね」

温めすぎたかもしれない。
しかし普通に食べるのと比べると、あんこの甘さの角が取れるというのか、口に入れてすぐやってくる甘さが抑えられている。

石川「あんこと皮の食感が近づいて、馴染むようになってますね」

古賀「出来立てはこうだったんでしょうね」

2、レンチン・藤戸饅頭

一方藤戸饅頭はどうか。

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温めたのを食べて違いを探す面々

古賀「なんかこっちの方が小豆の味が強く出ますね」

爲房「あんこの味と言うよりは小豆の味がしますね。最初の風味が大手饅頭と全然違う」

古賀「この饅頭はやっぱり小豆重視の味なんですかねぇ」

石川「小豆茶っていうお茶が好きで、甘くはないんですけど小豆の甘みがするお茶で。それをちょっと思い出させる味です」

こちらは小豆感が強くなるという感想が多く出た。この辺りは両者の特徴の違いが表れているだろう。

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甘いものが苦手な編集部橋田さん。「おー甘いな!これなんだっけ……甘いのあるよね……あんまんだ!」溜めた割りに普通の例えが飛び出した。

それでは冷やして食べるのはどうだろうか。

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保冷剤が捨てられなくて、家にあったのをたくさん入れて冷やしてきた。
 3、冷やす・大手饅頭
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まずは大手饅頭から。断面がきれい。

爲房「切ったら羊羹っぽくなってきました」

古賀「皮とあんこが乖離してきてますね(食べる)これね…冷たいよ!」

石川「いやーこれでもいいんじゃないですか」

古賀「これでもいい?わたし常温の方が好きだったな」

爲房「冷やしたら、薄皮の甘酒の風味が抑えられてますね」

古賀「味の個性がつぶされてくるというか。甘い、より冷たいが先に来ちゃう」

石川「食後のデザートにはいいかもしれないですね」

3、冷やす・藤戸饅頭
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一方の藤戸饅頭。いよいよ皮とあんこが乖離している。

石川「うん、皮がかたい」

古賀「テクスチャが全部かたい。どんどんね、味は羊羹に近づいていると思うんですよ。こっちは冷たいのが合うなー」

石川「あずきバーじゃないですか、凍ってないあずきバー」

あずきバーという感想に、あーと共感の声が挙がった。
食べる度に記憶の中の小豆を巡る旅に出ている。

冷やしたものは藤戸饅頭の方が合うという声が多かった。
小豆推しの藤戸饅頭に比べて大手饅頭は薄皮の甘酒の風味が強いので、そこが抑えられてしまう冷やしバージョンは向いてないかもしれない。

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変わり種の食べ方もやってみる

温める、冷やすといった気軽なアレンジ方法以外にちょっと変わり種の方法があるので試してみたい。
それが先ほどの紙にも書いてあった「湯を注ぎ汁粉にする」だ。

大手饅頭が言うには、「焼いたおまんぢゅう二個位をお椀にとり、少量の塩を入れ熱湯を注いでいただきますと即席汁粉ができ上がります。」とのことだ。
ものすごく気になるのでこれもやってみよう。

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あらかじめ家で焼いておいた。皮が薄いので、ものすごく弱火にしないと焦げてしまうので注意。
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お椀に二個とり、熱湯を注ぐ。お湯の量は饅頭の8割がかぶるくらい。
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かき混ぜると……ああ、お汁粉っぽいぞ。

大手饅頭と藤戸饅頭、どちらもかき混ぜるとお汁粉のようになった。

4、お汁粉・大手饅頭

まずは大手饅頭汁粉からいってみよう。

古賀「あー、お汁粉だ!まごうことなきお汁粉だ!」

爲房「甘酒感来ません?」

古賀「来ます来ます。おいし〜」

石川「これでも藤戸饅頭の方と違いが出ますかねー?」

レンチンしたとき以上に甘酒の風味がやってくる。お汁粉と甘酒を8:2で混ぜたような味だ。
普通のお汁粉にない風味でうまい。

4、お汁粉・藤戸饅頭

さて藤戸饅頭汁粉はどうか?

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古賀「ありゃ!全然味が違う!」

古賀「こっちの方がお汁粉っぽい!」

石川「ほんとだ…!」

古賀「全然違う、すごい。なんでだろう?饅頭で食べたときと全然印象が違う」

やはり小豆推しだからか、ちょっといいお汁粉な味になった。こりゃうまい。
餅を入れて食べたくなるやつだ。

王道を行っているのは藤戸饅頭汁粉だ。大手饅頭汁粉はお汁粉の王道とは違うが、これはこれでおいしい飲み物だ。
お湯で溶いただけですごく違いが感じられて面白い。

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さらに冒険の味へ

最後は大手饅頭のサイトにあったレシピを試したい。

ロールパンに半分切れ目を入れてマーガリン又はバターを塗ってまんぢゅう一個を挟み、電子レンジで10秒~15秒温めるとおいしいです。

古賀「丁寧なレシピだなぁこりゃ」

橋田「もう饅頭じゃなくてあんこですよね?」

古賀「あんパンは饅頭の皮をパンにしたわけじゃん?皮の役割をパンにやってもらおうってこと?」

饅頭のアイデンティティを放棄するようなレシピに一同衝撃を受ける。
大手饅頭は心が広いのかもしれない。藤戸饅頭でこれをやるのはちょっと気が引けた。

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大手饅頭だけで試してみる。

ツイッターでバイトがふざけたみたいな見た目になった。大丈夫だろうか。

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半分に切ってみる。マーガリンと饅頭の境目のところのうまそうさよ!

こういうあんこがパンパンに詰まったタイプのあんパン、あるな。

橋田「おいしかろうねぇこれは」

石川「まぁおいしいですよね」

古賀「うん…おいしいよ。ずるいよ」

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そりゃそうだよねというおいしさ。

「あんこ」と「マーガリン」と「温め」の間違いない三重奏から、怒られるレベルの当然のおいしさが誕生した。
ただ、ちょっともったいない。饅頭そのものがおいしいので、どうしても余ったときにやってみるのがいいかもしれない。

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4人で13個の饅頭を食べて、みんな甘さにふるえた。

両方買ってほしい

両方とも本当においしいのでみんな買ってほしい。
入手難易度はなかなか高いが、まずは大手饅頭のネット通販あたりからが手を出しやすそうだ。

もしこの記事がきっかけで饅頭が売れても僕には一銭も入ってこないが、みんな甘さにふるえてほしいのだ。
岡山に行くことがあったら、きびだんごは別の機会に取っておいてこちらの饅頭を買って帰ろう。ちょっと通っぽく見えるし。

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甘いものが苦手な橋田さんの、お汁粉の感想は「甘い汁…!」だった。
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