カビもフィルターと思えばエモい
外が曇っていて暗いため、適宜ストロボを使用する。
ズームレンズレンズについては、それぞれのレンズで最も広角(広い範囲が写る)の焦点距離に合わせて撮影していきたい。
また、絞り(レンズの羽根をどのくらい開けて撮るか)の表示が「F--」の表示になっているが、こちらも手動で調整する。
正直このあたりの露出調整はよく分からないので、ほとんどストロボ頼り。
TAMRON AF 28-200mm f/3.8-5.6をZ fcに装着して、おそるおそるお花にレンズを向けてみると……
後ろの戸棚はきれいに写っているのに、手前の花にはどう頑張ってもピントが合わない。
この文字の意味は、「被写体から最低2.1m離れないとピンボケしますよ」と捉えていい。つまりものすごく引かないと撮れない。ふだん16cmまで寄れるマクロレンズを使ってる筆者からすると、衝撃的な数字だ。
だって一般家庭のリビングで2.1mって、なかなかの距離ですよ。周囲を片付けつつ、三脚を移動させて再挑戦。
お祖父さん、撮れましたよ!!
現代のレンズのような、伊藤さんの言を借りるなら「カリッとした」写りではないが、フィルターをかけたかのようなロマンチックな写真ではないだろうか。
夕方に撮っているのに、朝靄に包まれたような、不思議な空気感がある。ひんやり。
宝石職人さんが、「クラック(亀裂)やインクルージョン(不純物)もその石の個性」と言っていたのを思い出す。カビすらもレンズの個性として受け入れるべきなのかもしれない。
こんなレンズ、いったい何に使ってたんだ
ピントが合う範囲がシビアだが、マウントアダプター側の目盛りをがっつり開放に回しているのでそのせいだと思う。
マニュアルフォーカスにさえ慣れればふつうに使えそうだし、ちょっと褪せた感じの色味もかわいい。
このレンズはテーブルフォトからポートレート、ちょっとした風景撮影までカバーできるズームレンズだから、お祖父さんが持っていた時代も出番は多かったはずだ。彼が一体何を撮っていたのか知りたい。
これは焦点距離が100mmに固定されていて(Z fcのセンサーはAPS-Cなので実際はその1.5倍)、要はズームできない。まあまあ望遠だけれど35cmまで寄れる。
100mmくらいの中望遠レンズは、ポートレート撮影によく使われるらしい。孫が生まれてから買ったのだろうか。
背後がよくボケて、ピントが合っている付近はみずみずしい不思議な写りだ。筆者はテーブルフォトばかり撮っている人なので、100mmの中望遠レンズは正直あまり使い道がないのだが、筋トレがてら外に持ち出してみてもいいかもしれない(レンズだけで550gくらいあるから)。
安藤さんたちが「でかいわりに軽い」とか言っていたがマジで重い(1.1キロオーバー)。これを持って外に行くなんて苦行以外のなにものでもなくないか。写真を仕事にしている人に、ガタイのいい人が多い理由がわかってきた。
お祖父さんは骸骨のように痩せた人だったと聞いている。もしこのレンズを持って外出していたなら、腕と肩の筋肉だけはムキムキだったに違いない。
顔も知らぬお祖父さん、いかがでしょう。あなたの孫の配偶者ですが、一応撮影できました。天国にインターネットあるかな。あるといいな。デイリーポータルZなんてゆるいウェブメディアに載せて恐縮ですが、喜んで頂けたら嬉しいです。
美談なんかじゃ終わらせないぞ
中高生時代に買ったトイカメラに興味を持って、レンズの構造を学ぶためメガネ屋さんでバイトをしていたことがある。だから筆者のレンズ好きは、正直、今に始まったことではない。
お祖父さんのレンズを掃除しながらも、「このレンズ、分解したら面白そうだな……。」という考えが頭を離れなかった。
Youtubeでレンズの分解清掃動画を見ていたら、材料さえあれば自分にもできる気がしてきたのだ(夫も楽天的な人間なので「やっちゃいなよ〜」とニコニコしている)。
とはいえド素人なので、バラしてから元に戻せなくなったり、大事なパーツを壊したりするのは容易に想像できる。
つまり、筆者が持てる選択肢は下記の2つ。
①プロにお金を払って清掃してもらう
②同じ型のジャンクレンズを買って練習しまくる
常識的に考えたら①を選ぶべきだ。たとえ1台の清掃に数万円かかろうとも、レンズとお祖父さんのためになると言える。
だから、分解清掃を頼める業者さんを探しつつ、ジャンクレンズもゆるく捜索してみることにした。物事の論点を分けて考えられて偉い(?)。
もし何か分解してみて、うまく清掃できたら、そのときはまた記事にしたいと思う。