メキシコのスイーツ
遠出するとその地域で食べられているものを食べる。それはB級グルメと呼ばれるものかもしれないし、海外だとその国の名前がつく料理かもしれない。ドイツ料理や、メキシコ料理のように。それが旅の醍醐味だ。
メキシコに出かけた。そこでいろいろなものを食べたのだけれど、「フラン」というスイーツに出会った。プリンみたいな見た目なのだけれど、日本のプリンとはどこか違い、めちゃくちゃ美味しくて、餌を求める池の鯉のようにパクパク食べた。
プリンのように見えるけど、プルプルはしていない。滑らかでありながら、プリンと比べれば硬く、ちょっとエキゾチックな感じもする。それがフランだ。本当に美味しくて、フランを見つけては食べた。通いすぎて店に入った瞬間店員さんに「今日はフランないよ」と言われたほどだ。
日本でも売っているかもしれないが、あまり見かけない。でも、食べたい。ポイントはプリンに似ているという点。作るにしてもそんなには手間がかからないはずなのだ。そこでスイーツ作りのプロ「パティシエ」に再現してもらうことにした。
感想だけで再現できるの?
作るのが簡単であれば、家で作ることができる。プリンに似ているから簡単な気もする。そこでパティシエなのだ。彼の勤める会社の都合で顔を写すことができないのだけれど、私のよく知っている、腕は確かなパティシエだ。
フランを食べての感想を伝える。「滑らかだけど硬い」「全然プルンプンしていない」「どこかエキゾチック」ということを伝えた。あと上記の写真も見せた。パティシエはなるほどね、簡単だね、と言っている。すごいな。
「硬い」ということは「卵が多い」ということで、「滑らか」という点から「生クリーム」を導き出せる。「エキゾチック」ということは「乳酸発酵している少し酸味があるということでクリームチーズではないか」ということらしい。
またフランの写真を見ると「す(ボコボコしている穴みたいなの)」が入っている。このことからしっかり蒸し混んでいる、と。すごい、お前は探偵か! と思うような推理をして、すぐにレシピにしてしまった。やっぱりプロはすごい。
普通のプリンであれば、砂糖、牛乳、卵で作れる。そこがフランとの違いだ。またプリンなら30分でいい蒸し時間を50分にするらしい。私の「滑らか」という感想から卵黄だけで作るブリュレと思ったけれど、「硬い」という感想から全卵を選んだ。卵黄だけでは硬くならないそうだ。
瞬殺らしい
私の食レポとしては最低レベルの感想で、それだけを読み取るパティシエはすごい。エキゾチックからクリームチーズを導くあたりに驚く。問題はそれが正解か、ということだ。パティシエによれば、すぐに作れるらしい。
オーブンに入れるまではあっという間だった。15分もかかってない気がする。それもすごいけど、私の感想で迷いなく作ってしまうところもすごい。オーブンで焼いた後は粗熱をとって、冷蔵庫で5時間ほど冷やせば完成だ。
すっごい美味しい!
完成したフランは輝いていた。よく見ると「す」もキチンと入っている。プリンや茶碗蒸しに「す」が入っているのは本来あまりよくないイメージだけれど、このフランに限ればむしろいいのだ。だって全部の店のフランに入っていたもの。スプーンを入れた時の滑らかさ、メキシコのフランと一緒だ。
騒いだ。血潮が騒いだ。メキシコのフランが目の前にあるのだ。見た目だけで言えば、メキシコのフランより美しい。これは期待できるのではないだろうか。再現できているのではないだろうか。
すっごい美味しい。甘さの中に滑らかさと硬さとエキゾチックが共存している。メキシコでフランを食べてからしばらく経っていたので、、自信を持ってこれだ! とは言えないけれど、これが間違いなく美味しいので、これなのだと思う。本気で美味しかった。