先生に見てもらおう
さて、ここまで読者の皆さんからいただいた自由研究を紹介してきたが、自由研究といえば最後は先生に提出するもの。
しかし考えてみると、先生たちがそれをどう思って見ているのかはベールに包まれている。
そこで今回、実際に小学校で先生をされていた方に、この自由研究を見てもらうことにした。
協力してくれたのは、過去に都立の小学校で5年間教えていた、ありさん先生(※ハンドルネーム)。
現在はユニセフの職員としてフィジーに駐在し、フィジーを含む太平洋の14カ国の教育課題解決をサポートしている。
フィジーは300以上の島からなる南太平洋の国。先生がいるのはその中のビティレブ島の東側、首都のスバという街だ。
自由研究は好きなことをやっていけば花丸
高瀬:自由研究ってそもそもどういう目的なんですか?
ありさん:子どもたちが興味をもったことを自由に探究して、好奇心をさらに伸ばすことですね。
高瀬:ダメなテーマとか内容はあるんでしょうか?
ありさん:ないです!自由研究はとにかく好きなことをやってきてほしいです。
ありさん:だから皆さんの自由研究、どれも素晴らしかったです。私が先生だったらぜんぶ花丸です。
高瀬:やった!大人になってから花丸もらうのうれしいですね。
ありさん先生が選んだ面白かったテーマ
赤ちゃんだった弟の行動研究
赤ちゃんがどんな行動や反応をするのかに興味をもち、弟をセミと初対面させてギャン泣きさせてしまった。
弟に当時のことを聞いたら「あーだから俺セミ苦手なんや!」と言っていて、軽い好奇心が一人の男の人生を狂わせていた。すまん。
(しろくま/小1~3/自分)
ありさん:まず本当の赤ちゃんで実験してるのがすごいなと思ったのと、
高瀬:小学生じゃないとできない大胆さですよね。
ありさん:あと道徳の授業で「命の不思議」という内容があって。赤ちゃんを通じて命の不思議さを知ったりやさしさを育てるというものなんですけど。
高瀬・石川:へー
ありさん:でもこの自由研究はもっとダイレクトに赤ちゃんの生態を調べていて、こういう視点の学びもあるんだなと思いました。
高瀬:科学的なアプローチをしてますよね。
ありさん:最近赤ちゃんの研究って進んでて。当時の経験が人生にどう影響するかとか、そういう最先端の研究ともつながっていて面白かったです。
石川:セミとの対面はだいぶ影響してそうですもんね…。
ありさん:そうですね。だからこれを止めなかった親御さんにも感動しました。
教科と関係ある自由研究は先生にとって興味深い
ありさん:もう1つ面白かったのはこれです。
教科書にのっている詩を各地の方言で朗読
「屋久島の杉の木」という国語の教科書にのっている詩を、各地の方言で読んでもらって録音しました。親の人脈を駆使して、釧路から島原まで全国各地の本気の方言が集まりました。
先生方にすごくウケたのを覚えています。
(ようたろう/小4~6/自分)
ありさん:これはもう国語の教材になると思いました。詩を授業でやった後に、この自由研究を使って方言についても学べそう。
高瀬:釧路から島原までってかなり幅広いですもんね。
ありさん:ここまでやった親御さんもすごいです。
高瀬:先生にもすごいウケたって書いてありますね。さっきの赤ちゃんのもそうですけど、先生たちはこういう教科に関するものに興味をひかれるんでしょうか。
ありさん:個人的な関心という意味で、それはありますね。
職員室で話題になるのは笑えるやつ
高瀬:生徒の自由研究が職員室で話題になることもありますか?
ありさん:あります!この2つはきっとすごい盛りあがりますよ。
お風呂でおならをすると臭いのはなぜか
湯船で温められた空気が上にいく流れに、おならのガスが乗って鼻まわりに来る。みたいな結論が出ていました。(路傍/小1~3/友人)
食べてすぐ寝ると牛になるのか
生徒が夏休み中の10日間、昼と夜のごはんを食べた後すぐに横になって過ごしていました。結果はなんと牛にはならなかったそうな!(にむー/小4~6/教え子)
ありさん:単純に笑えるやつが職員室では話題になりますね。おならのやつは子どもどうしでも盛りあがってるので。
高瀬:おなら好きそうですもんね、子どもたち。
石川:でもこれ、ちゃんと科学的な答えが出てるのがすごいですよね。
ありさん:あとこの牛のやつも「食べてすぐ寝ると牛になるからダメ」って親に言われたんだと思うんですよ。
石川:ありそうなシーンですね。
ありさん:でもそれを鵜呑みにしないで、ちゃんと実験して牛にならないことを確かめてるのが面白いです。批判的に考えるってこういうことですよね。