特集 2026年10月6日

ヒップホップは生まれた日と場所が特定できている 〜二十三夜待・第二夜〜

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壱岐のお盆行事

吉村:「で、これを調べに行った時期が、ちょうど8月のお盆の時期でした。そうしたら、島じゅうがお盆だったんです。」

吉村:「これは迎え火ですね。玄関先に木を組んで火をつけて、14日に迎え火をします。

これも島の中全体でやっているわけではなくて、やっている集落もあれば、やっていない集落もあります。組み方も家ごとに全然違うんですね。凝った送り火の組み方をする家もあったりします。

これは民俗学でよく説明されることなんですけど、なんで夏に花火をやるかというと、先祖の霊を迎えて送る送り火・迎え火と慰霊の花火がつながって、全国的に夏に花火をやるようになった、という説明をします。

この勝本の集落も、すごくでかい花火大会をやっています。」

会場:「島の中に花火職人さんが住んでるんですか?」

吉村「いえ、花火職人は外から呼んでいます。この勝本の街中で、各家ごとに玄関先で迎え火をしていて。

迎え火がすんだ後、花火大会が始まります」 

吉村:「もう一つは、この地域、昔から盆の綱引きというのがよくあります。お盆の時期に、例えば海側の村と山側の農村で綱を引っ張り合うんです。

勝った方が豊漁とか豊作とか。結構あるんです。壱岐もやってたらしいです。​​​​​​」

会場:「へー!」

黒川:「僕の実家の千葉県柏市でもあります。盆の綱引き行事は。」

吉村:「柏でも!

壱岐の場合、先ほどの島内新聞では『盆綱引きや花火大会、賑わった今年の盆』と書いてあって、中身を読むと、どうも、「戦前あったものが中止したけど、戦後復活させました」と書いてありました。

それで、今回、『今でも綱引き残ってるかな?残ってたら見たいな』と思って行ったのですが、なんと、すでに2026年現在、盆の綱引きは廃絶していました。」

会場:「あちゃあ、悲しい」

吉村:「ただ唯一、八幡浦のカズラ曳きという、大きい綱を集落でずるずる引っ張り回す行事があって、これは今でも残っていました。

 これがもう一つ面白いんですが、普通綱引きは赤白に分かれて引っ張り合いますよね。でも八幡浦のカズラ曳きは、みんなで一つの方向に綱を引っ張るだけなんです。実は民俗学ではこれが盆の綱引きの原型であるとしています。」

会場:「なんと!」

吉村:「島の人は盆の綱引きとこのカズラ曳きは別物だと考えているんですが、我々研究者は、これが綱引きの原型であると考えています。

地元の人は綱引きはなくなったとする。でも研究者は原型が残ってるじゃんと思う。こういうギャップも面白いです。」

黒川:「山形でもこういう綱を引き回すのをやっていて、そこでは、盆のときに来た無縁仏を綱に吸着させて村の境まで送り出す、という説明をします。」

吉村:「壱岐のも、まさしくそれです。壱岐の場合、中にはロープとか色々、縄の軸が入ってるんですけど、その周りをハマゴウという緑の植物で包み、頭は蛇みたいな大きい綱を作ります。」

会場:「すごい!」

吉村:「これを集落の中で引き回す。一応説明としては、この場合は先祖と言ってましたね。これに乗って先祖が帰ってくる。盆の終わりにまた引っ張り回して、これに乗って旅立っていく。これがあるから綱を引く。それがだんだん競技としての綱引きになった、みたいな説明を民俗学的にはします。」

会場:「へー!」

会場2:「楽しい方がいいってなったんですね。ゲーム性がついて。」

吉村:「はい。縄を曳くだけから、だんだんゲームへ発展したのだと思います。ただ、それが今は人が少ないので、縄を曳くのも途中までは軽トラで。」

吉村:「ずっと引っ張って、子供が上に乗っていきます。」

会場:「かわいい!」

吉村:「道が黒くなっているのは、引いているときに水をざんざんかけるからです。」

黒川:「東京都大田区の水止舞(みずどめのまい)と一緒ですね」

吉村:「はい、水止舞と一緒です。

水止舞は雨乞いと雨止めですが、盆行事では、死者は水を好むので、水をよく使うといわれます。先祖供養でお墓参りに、お墓に水をかけるのも、水が死者の癒しになるからだとされます。

このあと綱は水を鬼のようにかけられます。実は私もこの後、綱に乗るんですけど…全身びちょびちょになりました…電動水鉄砲なんかはかわいいもんで、みなさんバケツやホースで水をかけるので…」(会場笑)

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精霊流し

吉村:「あともう一つは、さだまさしの『精霊流し』で有名な、精霊船ですね。

これもいろんなパターンがあって、3つぐらいの集落で今でも行われていて、一つは各家で小さい船を出して、自分のご先祖を送り出していくと」

会場:「長崎の精霊流しと違って、水に浮かべるんですね」

吉村:「そうですね、長崎の場合、今は船を作って町中を練り歩くのがメインですが、ここはもう、行列なしで港に浮かべて、紐で引っ張って港の中を動かします」

会場:「昔って(紐じゃなくて本当に)流しませんでした?」

吉村:「はい、昔は流しました。でも、昔はこんな立派な船じゃなくて、藁で編んだようなのを本当に流していました。だんだん『海が汚れちゃうので回収しなきゃいけない』となって、今は、縄で船を動かしたのち回収することに」

会場:「なるほど。精霊船って長崎も有名ですよね」

吉村:「長崎は豪華な精霊船になってます。壱岐の場合、元々は藁船みたいな小さいのを流していたんですけど、だんだん回収しなきゃいけないとなりました。

で、回収して使い回すならいい船にしよう、と立派になってきたようです」(会場笑)

黒川:「全国的に一緒なんですよ。山形だと、精霊馬も藁で作っていたものを、出来合いのブリキの車にして軒先に吊るすんですよ。精霊カーって呼ばれて。」(会場爆笑)

会場:「ははははは」

黒川:「精霊馬もイオンとかで盆の時期に売られ始めて、どんどん立派になっていきます。」

吉村:「あと、この恵比寿漁港では、お盆のイベントで、港の上に高さ5メートルぐらいのロープを張って、そこにぶら下がって港を渡るイベントがありました。渡りきった人はいないんですけど…渡れる人は最大20メートルぐらいまで行ってるのかな。

で、私もやることになりまして。研究者として体を張って」

会場:「すごい、すごい。」

吉村:「すぐ落ちました(会場笑)

今回は1.5メートルでしたけど、来年は4メートルぐらい行きたいです。

なかなかこの恵比寿漁港の調査では、精霊船に積まれたロケット花火がこっちに飛んできて逃げまどったり、ロープで懸垂して港を渡ることになったりと、大変でした」

吉村:「今度は別の港です。さっきのは家単位のものだったのが、公民館とか町単位になります。これは石橋町ですね。

ちょっと立派になって、電飾もついています。船の数は町の数だから、7隻とか8、9隻だったかな。」

黒川:「西方丸、浄土に行こうとしてますね」(会場笑)

吉村:「じつは全部『西方丸』という名前です(笑)

電飾とかは地域によって違っていて、中にはLEDのものもあります。」

会場:「これって動力とかついてるんですか?」

吉村:「これも綱で引く感じです。電源はランプ用だけです。

この後、浮かべて、これを見ながら花火が打ち上がるという。」

吉村:「まとめると、壱岐は今でも盆行事がかなり濃いと。一方で、さっきの綱引きみたいに、もうなくなっちゃった行事も少なくない。

でも、島内新聞を調べたら、いつ、どこで、どんな行事が行われたかもたどれるんじゃないかと。

今後やりたいのは、新聞と現地調査を組み合わせて、島の記憶を残していきたい、ということです。

あと、やっぱり盆行事の調査はたまんねえぜ、ということです」

会場:「楽しそう。」

ここまでで2時間半経っている。あと1時間半あるが、ぜんぜん短く感じる。飲み物も食べ物もどんどん来る。二十三夜待、昔の人もこんな感じだったのだろうか。 


つぎで終わります

ここまで4人の方に話してもらっている。あと3人でもみんなのお話も終わり、記事も次回で終わります。果たして月は出るのか?

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編集部からのみどころ
ヒップホップからローカル新聞までという話題のふり幅が最高でした。そしてそういうのが一緒に出てくる雑多な場というのが、すごくお楽しみ会的でいいですよね。これが二十三夜待ちの醍醐味か!と思いました(本当にそうかは不明)
次回も熱量変わらず来週掲載です!(石川)

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