特集 2026年10月6日

ヒップホップは生まれた日と場所が特定できている 〜二十三夜待・第二夜〜

HIP HOP は文化

小金井:「ヒップホップって何ですかと言われたときに、音楽のジャンルだよと思われがちなんですけど、ヒップホップをかじった人は超ドヤ顔で『ヒップホップは文化だから』って言うんです。」(会場笑)

小金井:「貧しい若者たちのいろんな活動をがっつりまとめてヒップホップと呼びましょう、ということになって、今は音楽ジャンルが目立ってるんですけど。」 

小金井:「もうちょっと解像度を上げると、4大要素と言われていて、さっきのDJと、MC(ラップ)と、ブレイクダンスと、あとグラフィティです。」

左:Hip-hop at 50: How graffiti has evolved from 1980s through today
右:The New York Times: Taki 183' Spawns Pen Pals

小金井:「グラフィティは今はヒップホップとしてあまり意識されていないと思うんですけど、若者がどれだけ遠いところに自分の名前を書いたか、みたいな文化があって、これも当時流行っていたので、ヒップホップの4大要素の一つになっています。」

小金井:「私が面白いなと思うのは、エピソードがだいぶ無茶なんですよ。伝説になってます。」

小金井:「77年にニューヨークで大停電が起こります。真っ暗になっちゃって、いろんな店がこんな感じで略奪に遭って。」

会場:「聞いたことある!」

小金井:「で、その翌日、なぜか大量のDJが生まれた。」(会場爆笑)

会場:「レコードとか機材を盗んだってことですか。」

小金井:「そういうことです。クール・ハークさんとかに憧れていた若者たちが、よっしゃ今じゃね、って。これがあったから、機材を買えない人たちにも広まった」

会場:「火事場泥棒から生まれたんだ」

Red side-A label variant of the 1979 US 12-inch single not crediting Chic's song Public Domain

小金井:「さっき見たみたいにヒップホップはパーティ文化で、その場で煽るもので決まった曲っていう形じゃなかったんですよ」

会場:「即興性があったんだ」

小金井:「なんですけど、1979年にヒップホップのレコードがリリースされます。シュガーヒル・ギャングの Rapper's Delight っていう曲で、これは初めてヒットしたヒップホップの曲だと言われて、いまでは伝説みたいになってる超すごい曲なんですけど。」

Sylvia Robinson at at her desk in her Englewood, NJ office (1982). Public Domain

小金井:「これが何で生まれたかったていうと、このシルヴィア・ロビンソンっていうおばちゃん、この方は旦那さんと一緒にレーベルとかをやっているんですが、姪っ子だったかにクラブに連れて行かれて、MC、ラッパーが客を熱狂させてるのを見てこれは売れるぞと。

で、有名なラッパーを探すのではなく、息子さんに『ラップってのが流行ってるらしいんだけど、あんたの知り合いにラップできる人いないの?』って声をかけて、息子に集めさせて。

ニュージャージーのピザ屋でラップしていた人を発見してオーディションして、それを見かけた人が『俺もできるんだけど』って入ってきて、みたいな感じで集めて、17分とかそれぐらいでラップして出したレコードがバカ売れしちゃって。」

会場:「すごい! 面白い時代ですね。」

小金井:「今のがヒップホップ初めての曲、レコードと言われていて、伝説の一つなんですけど。

ちなみに、さっきの『Rapper's Delight』という曲は色々とパクリで、演奏はChicがやっていた曲をそのままコピーして伴奏にして、ラップの内容も人の歌詞ノートを借りてきて、それをそのままラップしたところ、大変売れてしまったという、Wパクリ作品です。

この後、著作権で揉めます。」(会場笑)

右上:Grandmaster Flash and the Furious Five: The Message

小金井:「伝説その2が、それまでパーティーのものだったラップで、黒人の生活のきつさとか辛さを訴える曲が初めて出たんです。

最初はそういう曲じゃなかったんですけど、歌詞の内容として、自分の生活をそのまんま赤裸々に話すような。それで世間が衝撃を受けて、ニューヨークってそんなことになってるの、みたいなことになった。すごく代表的な、重要な曲なんですけどね。」

小金井:「スタッフが持ち込んだ歌詞を見て、シルヴィアさんが『これはいける』と言って、グループのメンバーに『これやって』と言ったら、『こんな辛気臭いのやだよ、パーティーソングやらせてよ』みたいな感じで逃げられちゃったのを頑張って口説き落として、やってもらったと。
嫌がっていた他の3人は、最後の最後のガヤだけ出るみたいな感じで、無理やり録って出したら、めちゃくちゃ売れたという。」

会場:「シルヴィアさんすごい。」

小金井:「だからヒップホップの母でもあるんだけれども、その後も色々お金で揉めたりしているので、一概に持ち上げられないところはありますね。

こういう感じでヒップホップが始まって、色々な人がいろんな曲を出すようになりました。」 

Straight Outta Compton by the artist N.W.A Album Cover art and design by Helane Freeman. Fair Use.

小金井:「これも無茶なエピソードなんですけど、N.W.Aというグループがいて、その人たちが出すラップの曲があまりにも治安が悪くて、『Fuck tha Police』という曲があったんです。

それに対して、FBIの広報担当次官の方が、すごく真面目な方だったんでしょうね、正式に抗議文を送りつけた。

『暴力と法執行官への軽視を助長する曲で、我々はこういうのを看過しない』みたいなのを送りつけたら、もうレーベルは大喜びです。」

会場:「そうなるよね。」

小金井:「FBIにこんなことまで言わせるこいつらどんだけやばいんだよ、ということで注目を集めて、バカ売れしてしまったというエピソードがあったり。」

右上:https://rappers.fandom.com/wiki/Vanilla_Ice
右下:Suge Knight in 2007 by Nick Leisure. cc-by-sa-2.0

小金井:「もうちょっと時代が下るんですけど、ヴァニラ・アイスさんって超有名な人で、一発屋とも言われているんですけど、『Ice Ice Baby』という曲は超大ヒットして、日本にも多分来てますよね。

超大ヒットして大金を得たんですが、共作者への未払い印税問題が発生していたので、シュグ・ナイトという人がその回収の代理人になってやるよ、と言っていました。」

整理するとこういうことだ。
・ヴァニラ・アイス:大金を得た
・共作者のマリオ・ジョンソン:お金もらえてない
・シュグ・ナイト:代理でヴァニラから回収しようとする

小金井:「以降、ヴァニラさんが高級レストランに入ると、なんか怖い集団がいて、こっちを見てる。でも特に何もしない。何あいつら怖い、ということがありました。

数ヶ月後、別の店に入るとまた同じ奴らがいる、ということが何度かあって。最終的に、ビバリーヒルズのホテルにいたときに、そのよく見かけていた怖い集団が押しかけてきて、ヴァニラ・アイス側もボディーガードをつけていたんですけど、平手打ちをして、ボディーガードを叩きのめした上で、ヴァニラ・アイスさん本人を15階のバルコニーに連れて行って、特に何もしないんですけど、下を見せて『高いね』って。」

会場:「ひえええええ」

小金井:「そのバルコニーで何があったかは、いろんな人がいろんな説を言ってるんですけど、結果的に、なぜかシュグ・ナイトさんがデス・ロウ・レコーズというでっかいレーベルを立ち上げて、その後スヌープ・ドッグとか、いろんなラッパーが所属する一大レコード会社になったよ、という。」 

会場:「すごい」

小金井:「ヒップホップを聞いていると、アメリカの司法制度にもちょっと明るくなるし、ドラッグ関係の話も多いので、ドラッグの種類にもちょっと詳しくなるのが面白いよ、というところです。

これ、資料の半分も行ってないんです。まだ音楽の話までたどり着いてないので。どうしましょうかね。」

会場:「じゃあ続きは次回ということで。」

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