ついでに人口重心も求めた
CADで日本の人口重心も求めてみた。これは、国民1人1人が同じ体重だと仮定して、重さが無視できる日本列島の上で生活するときの重心のことである。例えば、東京にはたくさんの人が住んでいるので重い。
国民一人一人の住所が分からないので正確な人口重心は計算できないが、CADで各都道府県の県庁所在地にその都道府県の人口に応じた長さの棒を乗せていけば、けっこううまく近似できるんじゃないか。
ある日突然、日本の重心を求めたくなった。そんな瞬間があるとは思ってもいなかったので、びっくりしている。せっかくなので3Dプリンタを使って求めることにした。
あんまり共感してもらえないかもしれないが、僕は日本の形がけっこう好きだ。どれくらい好きかというと、日本の形を描くゲームを作ったぐらいである。
いとおしいポイントを図で説明すると、
と、きりがない。(本当はもっとある。) そんな中、疑問を持ってしまった。日本の重心はどこにあるのだろう。Googleで「日本の重心」と検索したらすぐに答えが出ると思う。でもここは自分の手で調べたい。
国から10万円が給付されるということで、勢い余って3Dプリンタを買った。まだ申請用紙すら家に届いていないけど。
簡単に「設計して作った」と書いたが、本当に簡単なのである。設計はCADというものを使う。CADを使うのはこれが初めてだったが、Fusion 360というCADソフトはけっこう直感的な基本操作が可能だ。先ほどの椅子はソフトの使い方を一切見ないで作れてしまった。すごい。
いよいよ日本の重心を求める。といっても、日本は大きく分けて北海道・本州・四国・九州の4つの島からなる。(小さい島も入れると6852個もあるらしいのですが、きりがないので4つの島に限定させてください。) 4つに分かれているなかで、日本全体の重心はどう求めればいいのだろうか。
たどりついたのは、モビールだ。てこの原理を使います。
さっそく作り始める。まずは3Dプリンタで北海道を印刷する。そのためには北海道の白地図の画像をSVG形式にしてCADに取り込み、2mm押し出す。
これを3Dプリンタで印刷する。
いよいよ、印刷開始!
こうして北海道が完成した。
さて、いよいよ、北海道の重心を探す。
思い通りに事が進んでいる。続いて、本州も印刷する。
あとから調べたら、ここは「本州のへそ」と呼ばれており、付近には「本州の重心地」モニュメントが存在するらしい。
日本列島が印刷できたので、あとはモビールを組み立てるだけだ。改めてちゃんと説明すると、てこの原理を使います。
てこの原理は中学入試の頻出項目であるが、まさか自分が本当に「おもりを吊るした棒の重心の位置」を求めることになるとは思いもしなかった。あと、重さが無視できる棒ってなんだ。そんなものはこの世に存在しない。
重さが無視できる棒は存在しないので、限りなく軽い棒を使うことにする。3Dプリンタの出番だ。紙に写した重心同士の距離を測り、棒の長さを決める。そして、吊るせるように穴を空ける。これらはCADで設計する。
簡単にできたように書いてますが、めちゃくちゃ不器用なのでビーズの取り付け作業に実はとんでもなく時間がかかっています。
いよいよ、最後のステップ。本州と北海道を合わせた棒と、四国と九州を合わせた棒を、さらに棒に吊るす。トーナメント表でいうと決勝戦の部分だ。
こうして完成した。日本列島モビール。
重心を軸として好き勝手に回転するので、いつもと違う日本の姿が見られる。これはこれでおもしろい。大陸移動説の話のようだ。
さて、そもそも重心の位置を調べるんだった。分かりやすいように紙に重心をプロットするとこうなった。
この見た目でまさか日本海に重心があるとは思ってもみなかった。もっと長野県にありそうなイメージだった。しかし、本州の重心が長野県の北部にある以上、日本全体の重心は、大きい北海道に引っ張られてさらに北となってしまう。そこにあるのは日本海だ。
ここまでGoogleに頼らずに重心を求めたが、答え合わせのためにGoogleで日本の重心を検索した。すると、能登半島より少し東にあるようだ。
ずれた原因はいくつかある。棒を軽くするために充填率を下げたら棒が若干しなってしまったこと。いくら軽くしたとしても棒にもわずかながら重さがあったこと。接着剤もビーズも糸も重さはゼロではない。こういったひとつひとつが誤差の原因である。
そして、おそらく一番大きな原因は、日本を4つの島で表したことだ。本来、日本には6852の島がある。特に瀬戸内や九州には大きい島が多く、それらを無視しなかったらもう少し南西に重心が来ていたはずだ。さらに、沖縄本島をはじめとする沖縄の島々はかなり南西に位置するため、結果に大きく作用する。力のモーメントでいうところの、「力の大きさ」×「支点からの距離」 の「支点からの距離」の部分で影響が大きい。
逆に、択捉島などは北東側に作用するため沖縄の誤差を打ち消すかと思ったが、打ち消しきれなかったようだ。
日本の重心が求まってやれやれといったところだが、調べてみるといろんな重心がある。今回は日本列島を重さが均一な平面と見立てたときの重心を求めた。いわゆる、面積重心だ。
しかし、せっかく3Dプリンタがあるので、山などの高低も考慮した重心も求めたい。体積重心だ。国土地理院では、日本列島の3Dモデルを公開している。これを使えばいけそうだ。今回はやらないが、興味のある人はやってみるとおもしろいと思います。ただ、日本一標高の高い富士山でさえ3776mと、4kmにも満たない。北海道北端から鹿児島南端までが1900km弱であるのに対してかなり小さい。正直、結果にはあまり影響しないと思う。(やってみたら結構変わるかもしれませんが…)
そして、もっとちゃんと重心を求めるなら、鉱物や地質によっても重さは違うはずだし、そもそも日本列島は全部がぷかぷかと海に浮いているわけではない。海底資源も含めた重心とかを考えると、もう何が何だか分からなくなってくる。
CADで日本の人口重心も求めてみた。これは、国民1人1人が同じ体重だと仮定して、重さが無視できる日本列島の上で生活するときの重心のことである。例えば、東京にはたくさんの人が住んでいるので重い。
国民一人一人の住所が分からないので正確な人口重心は計算できないが、CADで各都道府県の県庁所在地にその都道府県の人口に応じた長さの棒を乗せていけば、けっこううまく近似できるんじゃないか。
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