放蕩した
ごはんを食べたあとに寝たので逆流性食道炎のようになって少し胸焼けした。それもまた二度寝のいい代償である。飲酒のあとの二日酔いのようなものだ。
でも飲酒しなくてもこんなに放蕩できるとは思わなかった。
北海道には朝食にいくらが出るホテルがある。こんどはそこで二度寝しよう。考えただけでぞくぞくする。
むかし、ホテルで朝食を食べたあとに部屋に戻り、寝てしまったことがある。
あれは気持ちよかった。
人生最高の二度寝だった。
ホテルの朝食、快適な部屋、柔らかい布団。
あの二度寝をもういちど味わいたい。二度寝のための旅をすることにした。
旅の目的は二度寝。つまり、朝食のあとにまた寝るためにホテルに泊まる。
条件は朝食が美味しくて、チェックアウトが遅いホテル。せっかくなので東京から少し離れている方がいい。2時間ぐらいで行けるところ。
条件を組み合わせた結果、浜松になった。
二度寝の旅と思って浜松駅の写真をちゃんと撮ってなかったので、駅前広場のスケボー禁止のピクトグラムで代用した。珍しさで撮ったが「浜松市」の文字が入ってて良かった。
夜は特にやることがない。本屋やコンビニをうろうろして、スタバでお茶を飲んだ。いつも通りである。
裏がトッピングのサービス券になっていた。その精巧さにきっと浜松の人は興奮するだろう。固有名詞には心当たりがないのにざわつく気持ちとかリアリティだけ分かる。
駅ビルのスタバはすいていて快適だった。デートしている若者がいたり、テレビ会議している会社員がいたり自由に過ごしていて、まさにサードプレイス(自宅でも会社でもない場所。スターバックスはそれを目指すと言っている)だった。
渋谷のスターバックスは年末のアメ横ぐらいぎゅうぎゅうプレイスだけど。
ホテルに戻ってからはNetflixでいちど見たドラマをまた見た。二度寝の旅だからひとつも生産的なことをしない。
眠れないけど平気だ。明日は朝ごはんを食べたらまた寝られるのだから。二度寝旅はいい。まだ二度寝してないけど。
2時間ぐらいしか寝てないが朝食の時間だ。
これが出張だったとしたらけっこう辛い。具合悪いとか仮病を使ってごはん食べたあと寝てしまおうかと思うだろう。だけど、今日は最初からその予定だ。
あとで嬉しくなるように『このあと仕事だ』って思っちゃったりして!
そう思ったが朝食会場に入った瞬間に忘れた。
浜松名物の餃子やわさび、静岡おでんなどのホテルの郷土料理があった。ホテルの朝食ってこういった郷土料理とウインナーのせめぎあいですよね。
そして筑前煮ってホテルの朝食バイキングでしか食べたことがないことに気づいた。「筑前煮の名店を探す」とスマホのメモに書いた。
朝7時でも朝食会場は混んでいてみんなもりもり食べている。これから仕事に向かうのだろう。だが、私は寝る。そういうバケーションだ。
朝食を腹10.5分目ぐらいに食べて部屋に戻った。寝不足で軽く頭が重いがちょうどいい。
窓の外には馴染みのない町が見える。
この旅のメインイベント、二度寝だ。
寝不足+満腹+肌触りの良いふとん+静かなホテル、そして背徳感。
寝るのは快楽のひとつだけど、寝てしまうので楽しさを伝えられない正体が分からない快楽である。いつか食レポのように「寝レポ」を書きたい。
少なくともベッドに入って寝るまでのわずかな時間はとても心地よかった。毛細血管のひとつひとつに血が通ってひんやりしたシーツとの温度差が心地よい。思わず寝そうになった(寝た)。
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11時ごろ起きた。3時間二度寝した。一瞬で3時間がすぎた。夜の2時間と合計するとあまり寝てないが頭がすっきりしている。いい二度寝だった。
いい二度寝だった。良かったので2回書いた。
これぐらい何もしないことがしたかった。
旅の目的が二度寝だったので、このあとも特に用事がない。
うなぎパイの店(春華堂)でなんとなく買ったお菓子が美味しかった。
ピントが合ってなかったときはこのフレーズでごまかすといいですよ。美味しかったのは「大地のパイ・パイナップル味」です。
まだ時間があったので帰りに熱海に寄ってみることにした。そのようすはべつやくさんの記事で。
ごはんを食べたあとに寝たので逆流性食道炎のようになって少し胸焼けした。それもまた二度寝のいい代償である。飲酒のあとの二日酔いのようなものだ。
でも飲酒しなくてもこんなに放蕩できるとは思わなかった。
北海道には朝食にいくらが出るホテルがある。こんどはそこで二度寝しよう。考えただけでぞくぞくする。
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