特集 2020年5月26日

三密を避けたごますりとは? “新しい生活様式”で小人物はどう生きるべきか

新しい生活様式で私たち小人物はどうごまをすればいいのか!?

コロナ禍以降、新しい生活様式を送る必要があります。これは私たち小人物も例外ではありません。今までのように密になって陰口を言うのも禁止ですし、ゴマをするにも1.8m程度距離をとらないといけません。

小人物としてどのような新しい生活を送るべきか。私たちは体験会を開いて実証してみることにしました。

2006年より参加。興味対象がユーモアにあり動画を作ったり明日のアーという舞台を作ったり。

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> 個人サイト Twitter(@ohkitashigeto) 明日のアー

5月24日、東京都内新宿でのレンタル会議室にて「"新しい生活様式"での小人物体験会」は行われました。参加者は俳優の八木光太郎さんとデイリーポータルZの記者である筆者です。二人とも口癖がヤンスであるような小人物、小者です。

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ごますりについて

まず新しい生活様式下でのごますりについて検討と体験が行われました。

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俳優の八木光太郎さんが参加してくれました。私生活でもヤンスが口癖の八木さんが考える新しい生活様式での小人物とは?

たとえば従来の私たちなら↑の写真のような距離感でのごますりを行ってきました。これにウイルス対策をしてみます。

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フェイスシールドとマスクを着用しました。つづいて手もみについてです

 

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手をもみこむにしても新しい生活様式ではウイルスの心配がありますので消毒用アルコールをつけてもみこみます。

特に何かをさわるわけではありませんがふだんの手もみもアルコールをつけてもみこみます。それによって目上のごますられ側で体験した筆者の印象はだいぶ変わりました。意識の高さのようなものがごますりから感じられたのです。

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アルコールをつけることで「この人はちゃんとしたごますりだな」という印象を持ちました

このような感染対策をしたうえで、さらにソーシャルディスタンスとして2m離れます。

マスクやフェイスシールドをしているので2mも必要ないとも考えられますが、特にごますり対象へのアピールとして距離をとっています。 

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そして対人距離として2mを保ちます。この状態で八木さんの「おねげえ(がい)しますよ」が聞こえてきますが…

しかしここで問題が起きます。やはり遠いことによって「すり寄る」という印象が薄れるのです。これはごますりにとってもよくありません。

そこで身体的パフォーマンスにも定評のある八木さんと相談した結果、「ここに壁があります」というパントマイムが導入されました。

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(ここに壁があってそちらには行けないのですができるだけ近くに行きたいのです)という意思がとれました。
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そのうえでのごますり。ただ2m離れるよりは積極性を感じました。

動画にするとリアリティが感じられます

 

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どうしても対人距離を縮めたいときはベランダに出るのも有効でしょう
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こうした窓ごしのごますりは安全ですし、対人距離も縮められることがわかりました
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肩もみも変わる

ごますりにつづいて肩もみに関する体験と考察も行われました。 

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つづいての小人物の行為がすりよりとしての肩もみです。こちらも新しい生活様式下での肩もみを考えてみましょう

 ごますりとちがって肩もみには肩という絶対的な対象があります。ソーシャルディスタンスをとりつつどうやって肩をもむのか。今回私たちが用意したのは鶏肉と醤油と片栗粉でした。

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問題となるのは肩をもめないことです。そこで私たちは鶏肉と片栗粉と醤油を用意しました。

肩をもめないにしても何かをもむことで代わりになるのではないでしょうか。

今回は唐揚げの準備として鶏肉をもみこみました。(肩を揉まれて気持ちいい)という利益と同じように(唐揚げを食べられる)という利益を与えるわけです。 

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2m離れたうえで鶏肉と醤油と片栗粉を揉み込みます。唐揚げの準備です。「社長、よろしくお願いしますよ」という参加者八木さんの声が静かに響きます

ところがこちらは肩もみと比べてかなり遠い地点にいってしまいました。スキンシップは身体の触覚によるものが大きいのでしょう。鶏肉ではどちらかというと味覚に訴えかけるものです。

小人物にとっての新しい生活様式の難しさを感じます。

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タバコに火をつけるかわりにアルコール消毒

また、タバコにさっと火を付けるようなちょっとしたサービスはどうでしょうか。こちらはいつタバコが出てくるかわからないので相当な対策の難しさがあります。

そこで思い切って火を付けるサービスの代わりに、アルコール消毒を行うことで目上の人のポイントをかせいではいかがでしょうか。

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目上の人がさっと手を出すと
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すぐにプシュッと吹き出します。ここでもう一つポイントがあります。
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それは懐でアルコールを温めておくこと。これは木下藤吉郎が織田信長の草履をふところで温めていた逸話が元になっています。

アルコールを懐に入れて人肌で温めてみました。吹きかけられると少しヒンヤリがましになることを狙った、どちらかというと小人物のなかから大人物になる人の行為です。

ところが容器の壁があることからか実際にやってみるとそれほど温度差を感じません。それでも小人物の「やってるアピール」の効果はあります。

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アルコールを温めていたことによりそれほどヒヤッとはさせません
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新しい生活様式下での土下座

新しい生活様式においては土下座も注意をしないといけません。たとえば頭を地面につけようとするとフェイスシールドが邪魔になってしまいます。

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土下座をしようとすると
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フェイスシールドが邪魔をして地面におでこがついていません。これは誠意が足らないと思われるかもしれません

なのでフェイスシールドはその時だけ外す必要があります。土下座を一連の動作にするとこのようになりました。 

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まず地面を消毒する
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消毒したところに膝を付ける
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フェイスシールドをとる
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そして手と頭をつけるところも見定めてもう一度消毒
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ここまでやって初めて土下座が成立します。手順が増えるわけです。

動画で見てみましょう。新しい土下座は手数がいくつも増えます 

 

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密な陰口はどうなる?

 私たち小人物のライフワークともいえるのが陰口です。これは耳元でこっそり言うことで大っぴらには言えないということを演出してもいるのです。

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耳元でこっそり言うことが陰口の大事なところ「藤原さん、大北さんのこと悪く言ってましたよ…」ここだけの話はやはり耳元で言う必要があります
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そこでフェイスシールドやマスクで対策をほどこすのですが十分とは言えません
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そこで提案したいのが除菌シートごしに陰口を言う、です。ウイルス的にはクリーンに、モラル的には陰惨な陰口を言えます。

新しい生活様式での高笑い 

小人物として小悪党側の行為ですが、弱者を見下したときなどに高笑いをすることがあります。意外とこの高笑いにも危険が潜んでいます。 

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フェイスシールドが上がることで飛沫が前方に飛んでいます
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なので新しい高笑いはこれくらいの角度で「ハッハッハッ」と笑ってください。高笑い感はどうしても薄れてしまいます。

 

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高笑いと同じように人を見下す小人物として「鼻で笑う」というものがありますが、これもマスクをしているとわかりづらくなり、見下し効果が薄れます
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なので新しい生活様式下では一度マスクを下げてから鼻で笑ってください

賄賂の送り方

 贈り物においても問題がありました。今までのように「相手に押し込む」ということができないのです。

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「おい、君それはなんだね!」と言われると距離があるので「いいから受け取ってください」とムリに押し込むことができません
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そこで八木さんはラジコンを使って賄賂を送ることにしました
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こうして人の手を介さずに賄賂を送ることでソーシャルディスタンスを守ります

ラジコンが賄賂には有効 

 

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これが賄賂のソーシャルディスタンスです

新しい生活様式での店員への厳しさ

 私たち小人物の大切な生活態度として店員や目下の者に厳しく、上役に甘く、というものがあります。

もちろんマスクをしたままでも定員への態度を強くはできますが、少し弱まります。そこで消毒スプレーを表現手段の一つとして使ってみました。

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キャプション画面左の人物が店員だとして八木さんは「注文が遅い」と怒りながらスプレーをむやみやたらに吹きます
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そして目上の人への気遣いとして自分の手にアルコールを手に取り
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ごまをすります。下の者には上から、上の者には下から。この相互往復こそが小人物の醍醐味です。ここではアルコールを使うことでより強調することができました
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また、マスクに「ヤンス」と書くことでより小人物らしさを高めようと試みましたがこちらはまだまだ改良の余地がありそうです。

 


高笑いでなく低笑い

体験を終えて八木さんは、あきらめかけていた小人物をつづけられそうだ、ということを語尾にヤンスをつけながら言っていました。

筆者も主に目上の役として体験したのですが、新しい生活様式下ではどうしても小人物らしさが薄まってしまうことを感じていました。

これは小人物という概念が高笑いや土下座といった今までの形骸化した様式といったものに支えられているからでしょう。見慣れないフェイスシールドをして高笑いをすると、どうしても新しさを感じてしまい、いつもの様式的な卑屈さを感じ取れないでいます。

しかしそんなことを言っても小人物はやめれません。今私たち小人物に問われているのは工夫と熱意ではないでしょうか。

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