5月24日、東京都内新宿でのレンタル会議室にて「"新しい生活様式"での小人物体験会」は行われました。参加者は俳優の八木光太郎さんとデイリーポータルZの記者である筆者です。二人とも口癖がヤンスであるような小人物、小者です。
ごますりについて
まず新しい生活様式下でのごますりについて検討と体験が行われました。
たとえば従来の私たちなら↑の写真のような距離感でのごますりを行ってきました。これにウイルス対策をしてみます。
特に何かをさわるわけではありませんがふだんの手もみもアルコールをつけてもみこみます。それによって目上のごますられ側で体験した筆者の印象はだいぶ変わりました。意識の高さのようなものがごますりから感じられたのです。
このような感染対策をしたうえで、さらにソーシャルディスタンスとして2m離れます。
マスクやフェイスシールドをしているので2mも必要ないとも考えられますが、特にごますり対象へのアピールとして距離をとっています。
しかしここで問題が起きます。やはり遠いことによって「すり寄る」という印象が薄れるのです。これはごますりにとってもよくありません。
そこで身体的パフォーマンスにも定評のある八木さんと相談した結果、「ここに壁があります」というパントマイムが導入されました。
動画にするとリアリティが感じられます
肩もみも変わる
ごますりにつづいて肩もみに関する体験と考察も行われました。
ごますりとちがって肩もみには肩という絶対的な対象があります。ソーシャルディスタンスをとりつつどうやって肩をもむのか。今回私たちが用意したのは鶏肉と醤油と片栗粉でした。
肩をもめないにしても何かをもむことで代わりになるのではないでしょうか。
今回は唐揚げの準備として鶏肉をもみこみました。(肩を揉まれて気持ちいい)という利益と同じように(唐揚げを食べられる)という利益を与えるわけです。
ところがこちらは肩もみと比べてかなり遠い地点にいってしまいました。スキンシップは身体の触覚によるものが大きいのでしょう。鶏肉ではどちらかというと味覚に訴えかけるものです。
小人物にとっての新しい生活様式の難しさを感じます。
タバコに火をつけるかわりにアルコール消毒
また、タバコにさっと火を付けるようなちょっとしたサービスはどうでしょうか。こちらはいつタバコが出てくるかわからないので相当な対策の難しさがあります。
そこで思い切って火を付けるサービスの代わりに、アルコール消毒を行うことで目上の人のポイントをかせいではいかがでしょうか。
アルコールを懐に入れて人肌で温めてみました。吹きかけられると少しヒンヤリがましになることを狙った、どちらかというと小人物のなかから大人物になる人の行為です。
ところが容器の壁があることからか実際にやってみるとそれほど温度差を感じません。それでも小人物の「やってるアピール」の効果はあります。
新しい生活様式下での土下座
新しい生活様式においては土下座も注意をしないといけません。たとえば頭を地面につけようとするとフェイスシールドが邪魔になってしまいます。
なのでフェイスシールドはその時だけ外す必要があります。土下座を一連の動作にするとこのようになりました。
動画で見てみましょう。新しい土下座は手数がいくつも増えます
密な陰口はどうなる?
私たち小人物のライフワークともいえるのが陰口です。これは耳元でこっそり言うことで大っぴらには言えないということを演出してもいるのです。
新しい生活様式での高笑い
小人物として小悪党側の行為ですが、弱者を見下したときなどに高笑いをすることがあります。意外とこの高笑いにも危険が潜んでいます。
賄賂の送り方
贈り物においても問題がありました。今までのように「相手に押し込む」ということができないのです。
ラジコンが賄賂には有効
新しい生活様式での店員への厳しさ
私たち小人物の大切な生活態度として店員や目下の者に厳しく、上役に甘く、というものがあります。
もちろんマスクをしたままでも定員への態度を強くはできますが、少し弱まります。そこで消毒スプレーを表現手段の一つとして使ってみました。
高笑いでなく低笑い
体験を終えて八木さんは、あきらめかけていた小人物をつづけられそうだ、ということを語尾にヤンスをつけながら言っていました。
筆者も主に目上の役として体験したのですが、新しい生活様式下ではどうしても小人物らしさが薄まってしまうことを感じていました。
これは小人物という概念が高笑いや土下座といった今までの形骸化した様式といったものに支えられているからでしょう。見慣れないフェイスシールドをして高笑いをすると、どうしても新しさを感じてしまい、いつもの様式的な卑屈さを感じ取れないでいます。
しかしそんなことを言っても小人物はやめれません。今私たち小人物に問われているのは工夫と熱意ではないでしょうか。