特集 2024年2月20日

オランダの運河には小舟のお家がたくさん浮かんでいる

狭さを愛でよう

こんな様子で、美しいハウスボートは運河沿いに延々と、本当に延々と連なっている。

 

現在アムステルダム市内で、正式に行政から許可を受けて停泊しているハウスボートは2500艘あるらしい。時間が許せば何日でもかけて、そのすべてを眺め歩きたい。

運河というか住宅街の様子

もはやボートハウスはオランダの立派な文化遺産であり、その文化を伝導するための博物館まである。

ハウスボートミュージアム

外から見ることはできても、内部までは伺い知ることが難しいハウスボートである。このような博物館の存在は観光客には非常にありがたい。

ハウスボートとして使われていた船が、そっくりそのまま博物館になっている

この記事の筆者は、狭い寝床に興奮するというヘキがある。経験上、泊まれるタイプの乗り物、キャンピングカーとか夜行列車とかそういうやつには常軌を逸した狭い寝床がついていることがあり、ハウスボートも心地よい狭さを満喫できる乗り物ではないかと楽しみにしていたのだ。

余談ながら付記しておくと、AirBnBなどの民泊サービスを使えば観光客もハウスボートに宿泊することもできる。一応値段を調べてみたら、一泊400〜650ユーロという値段が弾き出されそっとスマホのブラウザを閉じた。
(直前予約だしそもそも価格設定が複数人で宿泊する前提というのもある。あるのだが、円安おまえというやつは本当に…)

 

さて博物館内であるが、期待通りに狭苦しく、そして期待を遥かに超える居心地のよさであった。

1畳ほどのままごとのようなキッチン

 

リビングルーム。天井の高さが絶妙だけど、平均身長182cmのオランダ人男性はこの空間で立てるのだろうか

 

座ったら最後、籠もり感が気持ち良すぎて立てなくなってしまいそうだ

 

あちこちに天窓があるおかげで、ひどい圧迫感は感じない

日本語に、狭くて心地が良い身体感覚を表現する語彙がないことが悔やまれる(広くて心地よいは「ゆったり」だ)。これは狭い部屋好きとしては、最高峰の部類の部屋かもしれない。

このときたまたま館内にほかの客がおらず、受け付け係の男性がリアルなハウスボートのコストについて語ってくれた。

・もともとは都市部の住宅不足解消のために間に合わせで供給された住宅なので家賃は安かった
・しかしいまやハウスボートに住むのはいけてるライフスタイルでステータス、金銭的なハードルはかなり高い
・とはいえ家賃そのものは大きな問題ではない
・高いのは維持費で係留費、船体の修繕費、ユーティリティのメンテナンスコスト、高額な保険料、税金…ばかばかしい!

館内にあった広告。売り家(売り船)のお値段は拡大して確認してみよう

 

博物館の母体であるヘンドリカ・マリア号の歴史も紹介されている。1914年に建造。貨物船でありながら船長一家4人の自宅としても活躍。1967年にハウスボートに。1997年に廃船同然になりながらも2008年に博物館として復元。数奇な運命である

 

期待通り、狭さを極めた寝床もあった。貨物船時代、船長の家族が眠っていた穴倉。膝を抱えて丸くなって寝てみたい

水の循環に加わりたいだけなのに

運河を散歩中、実はずっとトイレに行きたかった。アムステルダムあるあるらしいのだが、ヨーロッパの都市の中でもひときわ、トイレ事情の悪い都市らしく、街中では飲食店以外にはほぼトイレがない。

 

さすがに博物館ならと思いハウスボート博物館で尋ねたら、「トイレはあるけど下水につなぐのにめちゃ金かかるんよ、ごめんけど使わせられん…」。出張の初日に大破する訳にもいかず、博物館の滞在は10分ほどで切り上げざるを得なかった。

 

ようやくショッピングモールで1ユーロ払って排尿。しかしこの尿ももともとは3ユーロで買ったペットボトルの水である。ただ体内に水を循環させるのに4ユーロ、600円を支払った計算だ。円安おまえというやつは本当にもう。

 

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