特集 2021年1月28日

nano-ナノ-、@ peps!…懐かしいガラケー時代の「ホムペ」文化を振り返る

今から約10年前、筆者(93年生まれ)がまだ高校生だった頃のこと。中高生を中心とした若者の間で、個人のホームページを作ることが流行した時期があった。

リアタイ、リンク、隠しページ…独自の文化を生み出した「ホムペ」群は、スマートフォンの台頭とともに忽然と姿を消した。私たちはそこでいったい何をしていたのだろう。2021年、今こそあの文化を振り返りたい。

日本ソムリエ協会認定ワインエキスパートの花屋。花を売った金で酒を買っている。

前の記事:いつ無人島で遭難してもいいように蒸留器を自作したら、ノンアルコールジンができた

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懐かしきガラケーの「ホムペ 」

突然だが、こちらをご覧いただきたい。

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こちらも。心当たりがないだろうか?

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そして、こちら。

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懐かしさに胸がざわついた方は、もしかしたら筆者と同世代かもしれない。これはガラケーの全盛期に存在していたホームページ、私の周囲では「ホムペ」と呼ばれていたものだ。

約10年前、筆者がまだ瞳に輝きあふれる高校生だったときのこと。当時はクラスメイトの多くがこういった「ホムペ」を作成し、運用していた。

ドメインを取得したりサーバーを借りたりして、一から作っていたわけではない。当時は無料のホームページの作成サービスがいくつも存在していて、服を選ぶような気軽さでサービスの機能やデザインを選び、コンテンツを作って遊ぶことができた。

この記事では、あの頃筆者の周囲に存在していたホムペ文化を、記憶を頼りに再現した画像と共に紹介させていただきたい。

新年早々、ガラケー時代のアンケート

とは言え、肝心のホムペもスマートフォンの普及と共にめっきり見なくなってしまい、2021年のいま生き残っている作成サービスは少ない。おそらくサービスと共に星の数ほどのホムペが消えたのだろう。

せめて当時の記憶を持つ方々からエピソードを集めようと、今回はアンケートを実施してみた。

誰かホムペを、あいつのことを覚えていますか?と、一人だけ改変後の世界線に飛んでしまったキャラクターのような気持ちで募集を開始。すると、ものの数分で証言が集まり始めた。

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集計期間は2021年1月1日〜5日、お正月の黒豆をつまみにウイスキーを煽りながらアンケートの回答が増えていく様を眺める。高校生時代の私がこの姿を見たらどう思うだろうか。

アンケート内容はざっくりと下記のようなものだ。

・ホムペを作成、運営していたときの西暦
・当時何歳だったか
・利用していたホームページ作成サービス
・ホームページの用途
・よく使用していた機能
・思い出深いエピソードや「あるある」など

集まった回答は180件。1つ1つの内容にあまりにも心当たりがあり、読み進めるたびに心の中の体力ゲージが減っていく。正月早々から青春時代を思い出して瀕死になるなんて……

さっそく上3つの結果をご覧いただきたい。

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※「2005年以降」等の回答は2005年で1カウントとする
※「2008年〜2010年」等の回答は該当期間をそれぞれ1カウントとする

年代については、筆者の記憶にあるのも2007年〜2012年頃だ。総務省の資料によると、スマートフォンの個人保有率が50%を超えたのが2015年。ガラケーの機能が進化しまくっていた時代に流行し、スマートフォンの普及と共にSNSに取って代わられてしまったのではないだろうか。

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続いて当時の年齢。中高生が全体の8割を占める。西暦から逆算すると(自分に刺さるから逆算したくないが)今では20代半ば〜30歳前後の方が多いはずである。
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私はこのサービス名の羅列だけで懐かしさに卒倒しそうです。

nano-ナノ-に続いてモバスペ、フォレストページ、@peps!が人気だが、それぞれの機能に応じて使い分けていたという回答も寄せられた。ちなみに筆者はnano-ナノ-派。理由は「なんかオシャレっぽかった」から。

「思い出深いエピソード」については、これからホムペ文化の解説とともに、回答の一部を紹介させていただきたい。

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これは筆者が中高生時代に住んでいた家の裏山。人よりたぬきが多い土地だがホムペはあった。
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目の前の友人と繋がる、近距離インターネット

筆者も例に漏れずホムペを持っていた。しかも2つ!

1つはクラスの友人たちと交流するための、ブログを中心としたもの。もう1つは当時どハマりしていたゲームのプレイ日記を書き、たまにささやかなファンアートを掲載するためのものだ。

アンケート結果を見る限り、同じ用途で作成していた方が多いようだ。

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※「個人ブログとして、二次創作のため」のような回答は『個人的なブログなど』と『二次創作』の両方にカウント
※「夢小説」とあっても二次創作かどうかの区別がつかないものは『一次創作』としてカウント
※「個人用」の回答で、友人との交流が目的か区別がつかないものは『個人的なブログなど』としてカウント

クラス内では「友人との交流」用に使っている人が圧倒的に多い印象だった。個人的なブログと違い、友人と交流している様子を他の友人に見せるためのものなのだから、目立って当然といえば当然である。

交流用のホームページとは具体的に何をするのか、クラス内にいるのだから直接会話すればいいのではないかと思われるだろう。そこで下記の画像をご覧いただきたい。

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当時自分が持っていたホムペの雰囲気を思い出して作ったイメージ

自己紹介、リアルタイム、日記、写真ライブラリ、bbs、リンク。当時筆者の周囲で使用されていた機能は主にこの6つ。このくらいであればホームページ作成サービスのテンプレートを使用して、1時間ほどで完成させることができた。順に解説していこう。

まず、自己紹介機能とはその名の通り、プロフィールを作れる機能のことだ。だいたいサービス側で「好きな食べ物は?」「最近のマイブームは?」などの質問が設定してあり、それに回答するだけでページを作成することができた。また、当時流行していた前略プロフィール(自己紹介を掲載、公開できるサービス)へのリンクを貼ることが多かった。

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ストレートに「女です!」って書くの、ちょっと気恥ずかしかったもんね。

日記とリアルタイムは、今で言うブログとツイートだ。日記には休日に仲の良い友達と遊びに行った旨などを書き込み、プリクラを貼る。リアルタイムには「○○ちゃんとデート」のような一言にデコメ絵文字(懐かしい!)をこれでもかと盛って、さらに友達の手が見切れたパフェなどの写真を添えて一日に何回も投稿していた。

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専用のアドレスにメールを送るとpostできるシステムだった

写真ライブラリ機能は、私の周辺では「インターネットプリクラ帳」に名前を変えた方がいいのではないかというくらい皆プリクラを貼りまくっていた。そもそも筆者が中高生時代に住んでいたのは東北の山の中だ。当時の我々にとってイオンはまるで文明の象徴。そしてイオンに行けばプリクラがあった。

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「高校生時代を思い出してプリクラを撮りたい」と言ったら優しい友人が付き合ってくれた。周囲で流行していた「あいまいなピース」、当時の気持ちが一切思い出せない動揺とどうしてもマッチしてしまう。

「2娘イチ(にこいち)」「仲仔(なかよし)」などは当時の落書きの鉄板だった。そのうち「仲よし仔(なかよしこ)」「双仔(ふたご)」など派生語が増えていった。

ほぼ個人で完結するホムペの、数少ない交流ツールの一つがbbsだ。クラスメイトのホムペに初めてアクセスしたらbbsにコメントを残すのが暗黙のマナー。なぜか携帯電話の機種名や識別番号が記録されるサービスが多かったため、コメントを残さずにいると使っている携帯から個人を特定され、新しいホムペを教えてもらえないことすらあった。

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機種を探っていると悟られないように、こっそり調べるドキドキ。

学校生活でホムペを運用するにあたって、醍醐味は最後のリンク機能。なんてことはない、友人のホムペのリンクを掲載してついでに一言添えてやる程度のものなのだが、当時筆者の学校では「リンク数が多い=友達が多い、すごい」という謎の文化があった。仲の良い友達にはホムペを作るよう誘い、出来上がったら即リンク。ホムペが流行していた理由のひとつがこれだ。

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筆者には、隣のクラスのイケてる子に「ホムペリンクしたよ〜」と言われて小躍りしながら見に行ったらURLに添えて「絡みなぃケドぃぃ仔⭐︎」(訳:そんな仲良くありませんが学校にはこういう人もいます)というコメントがついていた甘酸っぱい思い出がある。

リンクにもレア度があり、他校の友人や先輩のホムペをリンクできたら高ポイントだった。一体なんのポイントだったのか今となっては全くわからない。

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友人たちに当時使っていたガラケーを掘り起こして、写真を送ってもらった。たたずまいに趣がありすぎる。中にはまだ動くものもあり、筆者が写り込んだプリクラなどが出てきて「何で動くんだよ!!!」と理不尽な悲鳴をあげてしまった。
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ホムペの「改造」と「素材屋さん」

テンプレートだけでもホムペを完成させることはできたのだが、なにせオシャレに敏感な中高生である。携帯はデコり、まつ毛は盛り、ホムペはカスタマイズの限りを尽くす。当時のホームページ作成サービスには詳細編集モードがあり、それぞれのページをhtmlで好きなように記述することができた。

つまり、100%自分好みのホムペを作るには、htmlを勉強しなければならなかったのである。筆者も独学でhtmlを学んだ中高生の一人で、なんだかよくわからんが<br>と打つと改行できるらしい、というようなレベルから、気づけばまっさらなページを好き放題にカスタマイズするようになっていた。

 

しかし、htmlを操るだけではオシャレなホムペを作るのには限界がある。そこで登場するのが「素材屋さん」だ。

素材屋さんとは、ホムペで使用できる小さいサイズのフリー素材を提供してくれるサイトの通称である。当時は様々なジャンルの素材屋さんが存在していて、素材屋さんのサイトを集めたリンク集やランキングサービスから探すことができた。

いかに素敵な素材を獲得するかでページのカッコよさが変わる。まるでDJやスタイリストのように、既存の素材を組み合わせることで自分の個性を表現することができたのだ。

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素材の一例。筆者の手描きとフリー素材の加工で、記憶を頼りに再現してみた。クラスメイトのホムペには歌手の写真に歌詞を合成した「歌詞画」や、どう見ても版権のキャラクターが描かれた素材がたびたび登場し、局所的に無法地帯だった。
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アンケートの回答者さんの中にも、お世話になっていた素材屋さんがいるかもしれない。

パスワードと秘密の部屋

先ほどのイメージ画像をご覧いただいた際、もしかしたら「あるもの」に気がついた方がいらっしゃるかもしれない。

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ページ下部の謎の点。こういったものはだいたい、「隠しページの入り口」である。

人によって白背景に白文字で書いたり、ダミーの入り口を作成したりとテクニックは多岐にわたったが、ガラケーの仕様(下ボタンで次のリンクに移動する)により哀しくもすぐ発見されてしまうものだった。

 

しかし、発見できたからといって中身が見られるわけではない。

ホムペの機能の一つに、コンテンツに鍵をかけられるというものがあった。内容は概ね秘密にしている恋の話や、部活の愚痴などである。

友人からパスワードを教えてもらったら、それはつまり「お前には心を許した、深淵を覗いても構わない。」のサインであり、秘密を共有する仲になれたことにひっそりと優越感を抱いていた。

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青春時代の光と影

キリ番、web拍手、相互リンク…創作ホムペ文化

さて、アンケートでも回答数が多かった「二次創作」「一次創作」用ホムペ文化についても簡単に紹介させていただこう。

こちらは仲の良い友人と交流するためのホムペとはやや文化が異なっていた。アンケート回答内の頻出ワードをご覧いただきたい。

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キリ番はホムペ流行以前からあったネット文化で、アクセスカウンターの「1,000」や「7,777」など、「キリがいい番号」の略である。管理人さんの中には、キリ番を踏んだら創作物のお題をリクエストをしてもいいというルールを設けていた方もいた。

通常はキリ番を踏んだらラッキーなのだが、中にはこんな意見も。

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キリ番を踏んで欲しくて、333とか567とか、かなり小刻みに設定してスルーされまくった悲しい記憶がある

また、寄せられたエピソードの中で筆者が思わず「あー!あったあった!」と叫んでしまったのが、「クッションページ」の存在。

メインコンテンツの前に説明や免責事項(?)を表示するためのページを設け、精神的な事故を防ぐためのものだったが、注意書きをちゃんと読んでもらうためにダミーの入り口を作ることもあった。

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この場合の入り口はENTERでなく「Y」。何も読まずにENTERをクリックしてもアクセスできないどころか、「ちゃんと読みましたか?」的なことを言われて叱られることさえある。
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創作サイトの中には、世界観をすぐ理解してもらうために導入としてこのようなクッションページを設けるケースも。

創作をメインにしたホムペにもリンクの文化はあった。

管理人さんがリンクフリーを公表している場合、面識や交流がなくても自分のリンクページに紹介と共にリンクを貼ることができたのだが、場合によってはリンクした旨をbbsに報告する必要があった。リンク用のバナーを配布されていることもあり、「直リンク禁止」の意味がわからず必死に調べたのも懐かしい思い出である。

その他にも良すぎるエピソードがわんさか寄せられたので、ごく一部だが紹介させていただきたい。

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繋がれない、けど確かに誰かいる

以前、現役高校生の方に「みんなSNSどうやって使ってるの?」と訊いたところ、「だいたいは人と繋がるためにやってる」という回答が返ってきた。確かにフォローやいいね、ハッシュタグなどはガラケー時代にはなかった文化だ。当時よりもずっと相手が見えやすく、自分も誰かに見られやすい。

 

ホムペを通した繋がりは今よりももっと不明瞭で、例えるならメッセージボトルを拾ったり、遠くの人から葉書をもらったりするような感覚に近かった。

当時の我々とって、いわばホムペとは自分好みにカスタマイズしたインターネット上の部屋で、アクセスユーザは姿の見えない来客だったように思う。お互い少しずつ歩み寄ってみて、だんだんと相手がどんな人なのか分かってくる感覚は、当時ならではのかけがえのないものだった。

 

2021年1月現在、まだいくつかのホームページ作成サービスは現存している。インターネットの奥底にわずかに生き残ったホムペを探索するのは、まるで遺跡の発掘のようで楽しいが、いつ自分が過去に作ったページが発見されてしまうかと思うと不安で仕方がない。黒歴史とまでは言わないが、恥ずかしい思い出の刺身だ。

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人と繋がれすぎるSNSよりも、あの頃のホムペの方が一人で打ち込めて自分に向いていたのではないかと思うことがある。また個人でホームページを作成するブームが到来しないだろうか。

当時ホムペを作成していた方は、たまにその存在を思い出して懐かしい気持ちになったり、恥ずかしさに頭を抱えたりするのもまた一興と思う。ホムペという存在を初めて知った方は、10年ほど前にこんな不思議な文化があったことだけでも面白がっていただけたら幸いである。

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