ドイツにまた行きたい
ドイツに初めて行ったのだけれど、本当にいいところだった。物価が高いのは仕方ないとして、それでも本当にいいところで、治安もいいし、優しい人が多かった。街も美しく、ニベアにもなれる。日本のニベアにもそういうサービスあるのかな。シール貼るだけなんだけどね。
ドイツという国がある。中央ヨーロッパ西部に位置する国で、村上春樹の小説「ノルウェイの森」の主人公が冒頭で降り立ったのもドイツだった。その主人公はドイツで何をしたのかはわからない。書かれていないからだ。
時代こそ違えど、私はノルウェイの森の主人公と同じ年齢、同じ季節にドイツを訪れた。そこで主人公が何をしていたのか考えながらドイツを歩いてみたいと思う。彼がどんなことをしていたか見えてくるかもしれない。
小説「ノルウェイの森」は37歳の主人公がドイツのハンブルク空港に降り立つところから始まる。ただ冒頭の20ページほどでその話は終わり、主人公がなんのためにドイツに来たのか、ドイツで何をしたのかはわからない。一切語られないのだ。
そこで考えてみた。主人公はドイツで何をしていたのだろうと。もちろん私はノルウェイの森の主人公ではないので、正解はわからない。彼だったら何をするか、を考えたのだ。その結果、まず一つは下記の写真になると思う。
ドイツにはいろいろな発祥のものがある。ハリボーもドイツだし、ベンツやBMWもドイツだ。ケルヒャーもドイツだし、アディダスもドイツだ。そして、我々の手に潤いを与えてくれるニベアもまたドイツなのだ。
ドイツのいくつかの街にニベアのお店がある。その街の写真を使ったニベアが並んでいたりもする。もちろんハンブルクの写真が使われたニベアも売られていた。
私がノルウェイの森の主人公なら、ニベアハウスに行くな、と思ったのだ。潤いが欲しいから。そして、さらに何をするか、と考えるとやっぱりニベアの缶に自分がなりたいと思うはずなのだ。お店ではそのようなサービスをやっている。
ノルウェイの森が出版された当時にこのサービスがあったかはわからないけれど、誰もがニベアの缶になりたいのだ。かなり満足だった。なんで真顔なのかはわからないけれど、満足している。ちなみに私はベルリンのニベアハウスで作った。ハンブルクのニベアハウスでもできたけれど、時間の関係でベルリンで缶になった。
ハンブルクは古くからの港町だ。港町と聞くと海を想像してしまうけれど、川に港がある街だ。その川の名前は「エルベ川」で、大型船やコンテナ船などが行き来していた。主人公もこの景色を見たのではないだろうか。
このエルベ川には川底トンネルが存在する。1911年に開通したトンネルで全長は約430メートル、水深24メートルの場所にある。車幅は1.92メートルで当時の馬車の幅に合わせて作られた。
私は川底トンネルや海底トンネルが好きだ。水の下を歩くことに感動を覚える。しかも、開通は1911年。どれくらい昔かは日本で考えると実にわかりやすい。とても大きな出来事があったのだ。大分市市制施行の年だ。
このトンネルを通ったとて、対岸のシュタインヴェーダーに特別に有名な観光施設があるわけではない。でも、多くの観光客で賑わっていた。みんな歩きたいのだ、川底を。ということは、ノルウェイの森の主人公も歩いたのではないだろうか。
主人公はもちろんドイツで食事をしたはずだ。ドイツと言えば、ソーセージ、ビール、ポテトなどが有名だろう。私もぜひ食べたいと思い、適当にお店に入ってメニューを見た。全部ドイツ語だった。なんとなくこれ、と指を差して頼んだ。主人公はドイツ語ができるはずだけど、私は全然できないのだ。
これなんですか? 今もわからない。これを頼んだ時に店員さんに英語で「これ時間かかるけどいい? 魚のゼリーみたいな感じだよ」と言われた。英語は理解できたのだけれど、料理そのものは理解できなかった。そして、出てきたのがこれなのだ。
フォークが一緒に出てくるのはわかる。ただ最初から魚のゼリーのようなものに刺さって出てきた。豪快だ。食べてみると美味しかった。たぶん魚はニシンだと思う。ポテトと一緒に食べると美味しかった。ただ料理名が一切わからない。これなんだろう。今も疑問で夜しか眠れない。
食事をもう少し紹介したい。主人公がドイツに来た当時はおそらくそうでもなかったと思うけれど、いまドイツでは、特にベルリンなのかな、ケバブが流行っている。中でもムスタファズ・ゲミューゼ・ケバブというお店は長蛇の列だった。
ドイツ最終日にこの列に並んだ。この列に並んだばかりに、帰りの飛行機に乗り遅れそうだった。だって2時間も並んだのだ。ケバブにこんなに並んだのは初めてだ。きっと主人公は並ばないけど、私は最新の流行に敏感だから並んだ。
私の前に並んでいた男性に声をかけられた。英語で少し話をした。彼は会社をクビになって今は一人で旅行をしているそうだ。クビの部分は英語ではなく、ジェスチャーだった。私はそれを見て「僕も同じようなもんだよ」と言った。
いやいや、私がご馳走するよ、と言ったけれど、彼がご馳走してくれた。だって勝手に年上だと思って、年齢を聞いたら私より10歳も若かった。俺がご馳走するから、と言ったけれど、いいから、いいから、と。心温まるエピソードだ。ありがとう。
ビールもたくさん飲んだ。これは主人公も飲んだのではないだろうか。ボルビックを買うよりビールの方が安かった気がする。また物価も高かったので、キッチンのついた部屋を借りて自分でソーセージを焼いて食べていた。
主人公がハンブルク以外の街に行ったかはわからないけれど、せっかくだからと実は行った可能性もある。ということで、私もいくつかの街を訪れた。見たいものがあったのだ。その1つが、マクデブルクの「緑の砦」と呼ばれるフンデルトヴァッサーハウスだ。
オーストリアの建築家「フンデルトヴァッサー」がデザインした集合住宅。今はカフェや雑貨屋、ホテルなどになっている。私の聞いた話では彼の最後の建築物のはずだ。特徴的な見た目だし、実際に歩いてみると迷路のようで楽しかった。
ピンク色をしているけれど、街から特別に浮いている印象は受けない。もはやそこにないとダメな気すらする。そのような建物があるのだ。まさにそれがこれだった。ちなみに「大阪市環境局舞洲工場」も彼の仕事だ。
ノルウェイの森の主人公は画家にインタビューをしていた。このような建物にも興味があったのではないだろうか。私は好きだ。そもそも大きいものが好きなのだ。だから建物はどうしたって好き、ということになる。ここにあるカフェでコーヒーも飲んだ。
別の記事でも書いたけれど、このマクデブルクという街には「マクデブルク大聖堂」があり、本当に素晴らしかった。言葉が浮かばないのだ。中に入ることもできなかったのだけれど、その姿に私の心は震えた。
1209年から300年をかけて建設されたそうだ。確かに大きいのだけれど、大きさから来る迫力だけではないものがあった。どうしても言語化できない。それほどに私の心を震えさせた。マクデブルクにいる間は毎日見に行った。
ベルリンの信号のマークが可愛かった。アンペルマンというキャラクターだそうだ。もともとは東ドイツの信号で使われていたピクトで、一時は使われなくなったけれど、今はまた使われるようになっている。
これがキャラクターとして人気が高くグッズになっている。アンペルマンショップという専門店まである。以前は日本にもあったそうだ。専門店でなくても、ベルリンではアンペルマンの商品を売るお店をよく見かけた。
主人公はおそらくこれを見ていない。主人公がドイツに行った時はまだドイツは東西に分かれていたのだ。東ドイツに行っていれば見たとは思うけれど、それは小説からはわからない。
角度で絵が変わる絵葉書を買った。絶妙に高かったけれど、こういうのは欲しいのだ。悩まずに買った。グミも買ったし、マグカップも買った。欲しかったのだ。かわいいし、カッコいいと思ったから。
ノルウェイの森の主人公もそれなりにドイツを楽しんだのではないだろうか。私は本当に楽しかった。人は優しいし、見所は多いし、ビールも美味しいし。主人公もぜひ楽しんでいて欲しい。そうであって欲しいと思う。最後はめちゃくちゃカッコよかったので、ベルリン中央駅の写真を載せます。
ドイツに初めて行ったのだけれど、本当にいいところだった。物価が高いのは仕方ないとして、それでも本当にいいところで、治安もいいし、優しい人が多かった。街も美しく、ニベアにもなれる。日本のニベアにもそういうサービスあるのかな。シール貼るだけなんだけどね。
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