特集 2019年12月19日

昔のCGっぽい写真を撮る

市松模様の床の上で、ピカピカの球がその模様を反射している真っ暗な空間。1980年代のコンピューターグラフィックス(CG)ではそういう画像をよく見かけ、とてもかっこよかったのを覚えている。

あの謎の空間に似せた実物を作ることはできないだろうか。CGっぽいけど実物、みたいな写真を撮りたい。

1976年茨城県生まれ。地図好き。好きな川跡は藍染川です。(動画インタビュー)

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任天堂から初代ファミリーコンピューターが発売されたのが1983年。そのころに最新のコンピューターグラフィックスとしてよく見かけたのが、こんな画像だ。

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色とりどりの球が、浮いていたりする。レイトレーシング(光線追跡法)と呼ばれる新しい技術では、こんなリアルなグラフィックが描けるんです、というような紹介のされ方だったと記憶している。

子どもながらにかっこいいなあと思いながら見ていたが、今になって改めて考えると、この空間いろいろと謎である。

謎その1:市松模様の床が無限に続いている

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ここ、いったいどこなんだろうか? 空間は暗闇で、床には市松模様がはるか彼方まで続いている。床はたぶん固い。

もしも自分がこの空間に飛ばされたら、ということを想像してしまう。暗いし、歩いても歩いてもおそらく景色は変わらなさそうである。もう絶望…という感じだ。

謎その2:唐突に球が出現する

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そしてそこに球が唐突に出現する。それはたいていピカピカである。さっきこの世界に迷い込んだ自分のことを想像したが、それでいうと球はこの世界の住人だ。もともとここにいましたという風格がある。

よく見ると床もピカピカで、球が反射している。昔のCGあるあるで、かっこいい。

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球はたいていカラフルで、お互いに映り込んだりする。詳しくないけど、レイトレーシングが発明されるまではこんなふうに光を反射するものを描くのは大変だったんだと思う。だからすくなくとも初期のレイトレ画像は、それができるよという意味でピカピカのものだらけになったんじゃないだろうか。

しかしこの1980年代っぽい感じ、いま見るとやっぱりかっこいい。この記事のサンプル画像はぜんぶ編集部の石川さんに教えてもらった POV-Ray というソフトでたどたどしく作っているんだけど、むやみにワクワクする。

こういう実物をつくりたい

ところで、現実世界にこれと似たような場所を用意したら、それはCGっぽい景色になるんだろうか。現実なのにCGっぽい写真を撮ってみたい、とふと思った。

そのために、まずは床を作ろう。床は市松模様でピカピカなものにしたい。でも、そんなものあるだろうか。

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探してみると、ダイソーに白黒のガラスタイルという商品があった。インテリアに使うもののようだが、ピカピカでいい感じだ。

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これを透明のアクリル板の上に敷き詰めて、真っ暗な部屋に置いてみる。

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これは…。CGとはやっぱり趣が違うけど、これはこれで質感が面白い。なんか妙な空間なのは確かだ。CGと比較してみよう。

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改めて書くまでもないけど、左がCG、右が実物だ。ちょっと小さくしたほうがそれっぽい。謎の市松模様の世界が部屋の中にやってきたぞ、という感じだ。

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球を置いてみる

ではピカピカの球を置いてみよう。東急ハンズで買ってきたステンレス球である。

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なるほどね。こうなるのね、という感じだ。

これは、実物感がすごい。昔のCGの無機的なかっこよさとは違い、現にピカピカの球がそこにありますね、という感じ。

球に写り込んでいる四角い照明はスマホの画面である。真っ暗な部屋の中でスマホの灯りだけをつけて、自分が写り込まないように気をつけながら撮ったのだ。むちゃくちゃ一生懸命でした。

CGと並べてみよう。

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こうやって小さくなるとちょっといい感じにみえる。こまかく言えば違うところだらけだけど、球の下側に市松模様が反射する感じは同じだ、というのはちょっと嬉しい。

とはいえ、それっぽい舞台を用意して写真を撮っても、そう簡単に「現実なのに昔のCGっぽい写真」にはならないぞということが分かってきた。現実はリアルだ。

(ただ、最近のCGであれば右側の感じが出せるんだろうとも思う)

ティーポットを置く

昔のCGにはティーポットが置かれがちだった。こんなの見たことないだろうか。

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これは「ユタ・ティーポット」と呼ばれている。1970年代にユタ大学で作られた3Dモデルだからだそうだ。

で、このモデルをもとに作られた物理的なティーポットが「Utah Teapot」としてドイツで売られている、ということを知った。見てみると、送料込みで約6,000円である。

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上のとは形が違うが、当時のモデルの採寸に使われたもともとの実物を買ったよ、という方もいた(もともとこのツイートで知りました)。

これは、欲しい。思わず注文してしまった。

そして待つこと数週間。 届きました、ドイツからティーポットが。

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これだ! 見たことあるー!

で、目的はこれを例の空間に連れていくことだ。さっそく置いてみた。

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はいはい、なるほどね。またそういう感じね。「CGに似せようとして市松模様の上にティーポットを置きました」っていうまんまの感じのやつね。

そうかー、やっぱりそうなるか。でも気を取り直してCGと比べてみよう。

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あれ、こうやってみるといい感じだ。やっぱりちょっと小さくすることが大事なのか。

こうやって比較するとCGっぽい感じもあり、嬉しい。ポットの底面に市松模様が写り込んでいるのも一緒だ。ポットの下側の影になってるところの具合が、実物はやっぱりリアルだなあと感じる。

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いろいろと撮ってみる

ピカピカの球とティーポットを撮ってだいたい満足したので、あとはいろいろとCGっぽいモチーフを100均で探してきて撮ってみた。

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ピカピカのベル。複雑な曲面に床の模様が映っていていい感じ。

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ピカピカの球が二つ。奥のやつに手前のが写り込んでる。そういう様式はCGっぽいんだけど、景色が圧倒的に実物だ。

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色とりどりの球。映り込みはいい感じ。でもプラスチックの質感がリアルすぎてCGには見えない。さっきから全部そうだけど。

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まんなかだけピカピカというパターン。両隣の緑と赤が映り込んでいる。こういうのもあるよねーという感じだ。

でもやっぱりちょっと小さくして遠目にみるくらいがいいみたいだ。

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うん。この絵はちょっと面白いと思う。

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舞台裏はこんなですけどね。

 


それっぽくはできた

昔話みたいなものなので若い方にはなんのこっちゃだったかもしれない。ごめんなさい。でもあの謎の空間を再現してみたかったのだ。

昔みたグラフィックって、実際にああなるのかな?と思っていた。そしてそれは、一部はそうだと分かった。だいたい似てるから。でも、やっぱり非現実的だからこそかっこいい部分もあるんだなということを改めて思った。

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