春のはじめを見られてラッキー
寒さのピークは過ぎたとはいえ、まだまだ空気がキリッと冷たかった春のはじめのモンゴル。しかし動物たちがかわいいし、仕事をしていれば体もあたたまってちょうどよかった。
冬のまっただなかに来ていたら、ゲルの中でおとなしくしているしかなかったかもしれない。そう思うとやはり暖かくなったタイミングで来られたのはラッキーだったのだ。
ウシが水にありついたのを見届けると、手招きされてボヤントフトフくんのゲルへ。ゴンゴルさんが牛革のヒモをつくっているところを見せてくれるらしい。
ゲルに入ると、牛革をなめして作ったロープが吊るされていた。夏に乗馬の道具にするため、冬のあいだに作りためておくのだ。
これのねじれを取る作業を見せてくれるという。どんな作業かというと、
ロープがぐるぐる回って楽しげな雰囲気だが、ゴンゴル氏の顔はマジである。しばらくやってはゼエゼエ言っている。そのあいだ息子ボヤントフトフはウロウロしている。
お前もやるか、といわれて交代してみると、これはたしかにしんどい。
手だけでやるとしんどいので体全体を動かすのがコツか、というところでなんとなく馴染みがある気がしてきたが、これはスクワットだ。
ジムとかでみんながやっているスクワットと同じ動きである。みんなジムで運動エネルギーを発散していないで、牛革のヒモを作ってください。
最後の仕事として、牧草を取りにいく。何百頭もいる家畜たちのエサである。夏はそのへんにたくさん草が生えているのを食べさせればよいが、冬は備蓄している牧草を与えるのである。
めっちゃでかい牧草置き場があって、いくつかの家族で一緒に使っている様子だ。今日はこの牧草を各家庭に配るのだ。
みんなで牧草の山に登って、頂上から順番に、ひと抱え10キロくらいはありそうな牧草のかたまりを荷台へ放り込んでいく。
登って、運んで、投げる。登って、運んで、投げる。
繰り返しているとめっちゃ大変だが、質量のある物体が宙を舞っていると興奮してくる。日本の建設現場でこれをやったら即労働災害発生だが、牧草だからケガもしづらい。みんなで牧草のくずにまみれながら投げまくる。
炎天下のバイトだったら倒れてしまうところだったが、気温も0度とかなので働きやすい。
遊牧民の仕事は大変だけど、1日入門するくらいなら全体的にわいわいしていて楽しいのだ。行く先々に動物の赤ちゃんがいるのも癒やされる。襟裳の春はなにもない春らしいが、モンゴルの春にはいろいろあったのだった。
寒さのピークは過ぎたとはいえ、まだまだ空気がキリッと冷たかった春のはじめのモンゴル。しかし動物たちがかわいいし、仕事をしていれば体もあたたまってちょうどよかった。
冬のまっただなかに来ていたら、ゲルの中でおとなしくしているしかなかったかもしれない。そう思うとやはり暖かくなったタイミングで来られたのはラッキーだったのだ。
ここ数年何度も訪れているモンゴルについて、写真とエッセイの本を作りました。
この記事にも登場したボヤントフトフくんをはじめ、モンゴルの景色を多数収録しています。
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