特集 2025年2月5日

餅寿司~餅をネタにすしを握る~

会社の昼休憩、お弁当として白米のみを持ってきていたわたしはおかずを買いに出かけた。

売り場の餅を見てふと思ったのだ、「餅と白米って合うのか?」と。試してみよう。餅丼?餅がゆ?いや、餅寿司だ!!!

1999年生まれの人類。記事を書いたり短い動画を作ったりしている。
室内用サインプレートと国語辞典、絵本が大好き。酒が苦手。
飲み会でオレンジジュースを6杯飲み、同僚に心配されたことがある(果糖の過剰摂取を)。

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”炭水化物寿司被り”というレアケース

そろそろ餅寿司を握るか~、と思っていたところに、林編集長からこんな連絡が。

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世界一面白い業務連絡

少し前に公開されたパリッコさんの「パン寿司」と企画の趣旨が絶妙に被ってしまったのだ。パン寿司と餅寿司が同居するのはレアなので、少なくとも2025年では一番面白い業務連絡だった。

パン寿司はパンに刺身を乗せるタイプのお寿司だったが、わたしの餅寿司は餅がネタになるタイプのお寿司なので少しちがう。パリッコさんの記事ほどうまくレポートできるかはわからないものの、わたしなりの食レポを記すので味を想像してみてください。

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せっかくなので酢飯から仕込む

自分で酢飯を作るのはおそらく人生で初めてだ。
親がかき混ぜる酢飯をうちわであおぐお手伝いをした日を最後に、酢飯と触れ合う機会のない人生を送ってきた。

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炊きたてご飯の美しさよ

酢飯用のお米は少なめの水で炊くのが鉄則らしいので守ったつもりだったが、いざ炊きあがってみると結構やわらかめに仕上がっていてびっくりした。加減が難しすぎる。

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寿司酢と混ぜ合わせる時点でだいぶ米が潰れてしまい、こっちも餅になるのではないかとヒヤヒヤした
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あおげるような大きさの綺麗な紙が健康診断の結果しかなかった

ちなみに途中で「右手でかき混ぜて左手であおぐ」という技を試みたのだが、下手なお好み焼き職人のようなコミカルな動きになるだけで全くはかどらなかった。酢飯作りはどうやらひとりでは難しいらしい(扇風機を出すという考えはすっかり抜け落ちていた)。

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ネタを仕込む

寿司ネタ用に、いろいろな大きさに切った餅を用意してみた。

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板状のはノーマル寿司ネタ用、細かいのが軍艦用、細長いのが手巻き用、キューブ状のはとりあえずの余り
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細かいし薄いのでレンジですぐにやわらかくなる

レンジが不安そうに「様子を見ながら加熱してください」と警告してきたのでちゃんと守った。張り付きで様子を見ていたが、細かく切ったものほどすぐに膨らむので救出のタイミングが難しい。

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寿司を握る

シャリもネタも揃ったので、見よう見まねで握ってみる。
米も餅もすぐに硬くなるのでスピードが大事だ。この時点でもう両方とも表面が硬くなっていてかなり焦った。餅には刺身とはまた違う「鮮度」が求められる。

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急げ急げ急げ急げ!!!!餅が餅が固まる固まる固まる!!!!!
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ペタペタペタ………
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餅をのせてちょっと握れば
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ヘイお待ち!!!餅だよ!!!

見た目があまりにもイカで驚いた。すごく肉厚でおいしそうなイカに見える。
それなのにホカホカと温かいもんだから脳がなかなか混乱した。

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海苔を巻いたバージョンもおまけで作成
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刻んだ餅を乗せれば軍艦!
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細長い餅は手巻きにした
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暴力的なまでの炭水化物

イカやホタテなどの白い刺身に見えるが、実際は餅である。密度の高い炭水化物の塊が炭水化物に乗っているさまは、見ているだけで眠くなってくる。

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餅と酢飯は合うのか?

もっともスタンダードな餅寿司から食べてみよう!

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重い!!寿司では感じることのない重さ!!いただきます
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…米はや!!餅おそ!!

口に入れた瞬間の感想は「米はや!!餅おそ!!」だった。
米が一瞬で解散してしまった一方、餅だけがずっと口の中に残って主張し続ける。

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米は一瞬でいなくなり、餅は主張を増していく

そして酢飯が一瞬めでたく香るので、すごい速さで正月が横切る気配もあった。「春の海」の幻聴にもドップラー効果がかかっていた。

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一瞬で脳を横切っていく門松

味としての違和感はないしまずくもない、むしろ美味しいとも思ったが、なんせ米と餅のスピードが違いすぎる。合うか合わないかで言えば合わない。スピード感が。

ここに海苔が加わる軍艦も食べてみよう。

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こちらもとても重い…どれどれ…?
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海苔と餅が結合して酢飯が追い出された!!

海苔と餅が一瞬にして「いそべ餅」を形成し、酢飯がはじき出された。海苔の香りと餅の食感が確実にいそべ餅なのだが、端っこのほうに居心地の悪そうな酢飯がいる。

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楽しそうないそべ餅、溶け込めない酢飯

海苔×餅×酢飯の三者のコラボは叶わず、いそべ餅×酢飯の二者になってしまった。
味だけでいうと特別まずくはないのだが、これも合うか合わないかで言ったら合わない。
ノリが。(海苔だけに)
ちなみに手巻き寿司もまったく同じ感想になった。

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餅をシャリにするタイプも試す

最後に、餅に刺身を乗せるタイプの餅寿司も試してみた。
口に近づけた時に温かい餅と魚の匂いからなぜか一瞬「鍋」を連想してしまい、「鍋に入れた魚に火が通っていないまま食べてしまった」味がして不安になった。
ぬるいと不安になる刺身と冷やすと硬くなる餅は合わないようだ。温度感が。

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米の味はするのに酢飯の味がしないことも不安を掻き立てる

結局、餅と酢飯はスピード感が、海苔と餅と酢飯はノリが、刺身と餅は温度感が微妙に合わなかった。
皆様にはぜひ、酢飯の速さと餅の遅さを体感していただきたい。脳内の速度計がカンストすることでしょう。


おにぎりの具にもしてみた

後日、酢飯ではない普通の白米を使って餅を具にした「餅おにぎり」も食べてみた。

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すごくわかりづらいが、赤枠のあたりに餅


白すぎて具が溶け込んでしまった。目を凝らすと真ん中のほうに質感の異なる白が見える。それが餅です。

これに関しては、見た目と同じく味も見分けが(味分けが?)つかなかった。餅の量が少なく、かつ酢の主張がないために「米」の味に集約されてしまっている。
米をかきわけて餅を味わう感覚は、触感をたよりに揃えるルービックキューブのようだった。

編集部からのみどころを読む

編集部からのみどころ
なんで炭水化物に炭水化物をのせると面白いんでしょうね。 そんななか、餅を乗せた酢飯を「酢飯が一瞬めでたく香る」と表現したのは、ばかな試みのなかでのポエジーとして注目して欲しい一文です。
パリッコさんの記事は気にしないで進行してくださいの連絡は、書き始めたばかりのライターでもベテランに気を使わないでくれという配慮でしたが改めて見るとおかしいですね。(林)

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