ボロいガレージを手に入れた
昨年家を建てた。もともとあった建物は壊してもらったが、ガレージを壊すにも結構なお金がかかるとのことで、残すことにした。
数十年前に作られたらしく、ペンキは禿げ落ち、床はクツでこすると無限に砂が出る。
何かに使えないかなと、隠し扉を設置したりしていたのだが、いかんせん当時は電気が通っておらず、そのまま廃墟として放置していた。
そんな折、コロナで外出自粛がはじまった。この機会にガレージのリフォームに着手しなければ、永遠に手付かずのままだろう。素敵なアトリエにすべく、えいやと重い腰をあげた。修繕する上で2つの問題がある。
モノが多すぎる問題
ひとつめのモノが多すぎる問題は、会社の同僚と借りていたアトリエが解散となった折に、残された備品を大量に譲り受けたことに原因があった。
たくさん工具たいただけるのは、ありがたいお話ではあるのだが、カッターやはさみが子供工作教室が開けるくらいある。どう使えばいいのかわからない道具も多い(Y字ドライバーが2本あった時は膝の力が抜けた)
おびただしい量の工具を収納するために、大量の棚も譲り受けたのだが、ガレージのなかの湿気は後述する水漏れのせいで大変なことになっており、1年ほど放置した結果、棚の底にカビが生えてしまった。新たな収納を作る必要がある。そして、一番おおきな問題はこちらである。
深刻な水漏れ問題
ガレージの奥のコンクリート壁がボロボロと崩れるのはこの水漏れが原因だろう。まずは、水漏れをとめないことにはなんともならない。コンクリートが脆い箇所を削り取り、コンクリート用パテで埋めてみたが効果なし。
止まらない浸水
壁と床の境目など、いろんなところにモルタルを塗ってみたが効果なし。1箇所塞いでも別のところから水漏れしてくる。これはもう、局地的な修繕でどうにかなる問題ではない。抜本的な修繕が必要だ。想像しただけで大変なので避けて通ろうとしていたが、もう無理だ。壁面全体をぬりなおそう。
ぬれないモルタル
壁面にそっとモルタルをぬりつけてみる。……が、ボトボトと床に落ちた。何回塗りつけても結果は同じ。これでもかと引力を見せつけてくる。ニュートンだったらそろそろ何かしらの法則を見つけている。どういうことなんだ!
調べてみたところ、一般的なセメントと砂を混ぜ合わせたモルタルでは、重すぎてくっつかないらしい。モルタルの食いつきをよくする「ラス網」という金網をはってそこに塗りつける方法もあるようだが、今回は壁塗り専用のモルタルを使う。コーナンプロなどの本業の方ご用達のお店で調達する。
さすが専用。しかし、塗りやすいとはいえ、私の左官の技術はゼロ。職人であればコテにモルタルをすくい、手首くるっと回転して器用に壁に塗りつけていくところであるが、私が真似してもボトボトと落ちるだけ。
壁ぬりはつらい
あまりにボトボト落ちるので、途中から壁ではなく床を塗っているような気さえしてきた。仕方がないので、モルタルが落ちないようにコテ台を壁にぐいっと押し付け、コテで強引にモルタルを塗りつけていく作戦を採用した。
水漏れにより凄まじい湿度になっている。肺にカビが生えそうだ。サウナのように汗が吹き出す。2時間で体力の限界がきて、腕があがらなくなる。2週分の土日を供物にささげてなんとか全ての壁面をぬり終わった。
全部ぬれました
壁モルタルは下地材なので、本来であればもう一層モルタルを塗り重ねる必要があるらしいが、あんなしんどい作業をもう一回やるなんて正気の沙汰ではない(疲れすぎて翌日寝込んだ日もあったのだ)原因となる水漏れを根本から絶ったわけだからこれで解決だろう。あとは収納を作るだけ。ハードな作業が続いてたので家の中でのんびりと収納の構想を練っていたら、なんかやたら今年は雨が降る。
いくらなんでも、雨ふりすぎだ。いてもたってもいられなくなり、雨が弱まった隙をぬってガレージの状況を見に行った。
あまりの堂々とした水量に、日本最後の清流を思い浮かべてしまった。これだけの労力を注いだのに、このまま廃墟として放置か……。真空波動拳みたいなため息が出る。あぁ………自宅に出現した清流を眺めていると、とある言葉を思い出した。
水と生きよう
いわずとしれたサントリーの企業理念である。そうだ。私も水とともに生きよう。幸い隠し扉を作った際の壁はある。こちらを隔壁として使い、水漏れする地下牢みたいな部屋は捨て、手前の部屋に全てをかけよう。そうと決まったら収納を作る。作るぞ!おらー!
作戦はこちらの3つ!
水没に負けない収納作り
目指すべきテーマは、できる限り収納を床から浮かした「高床式収納」。床にモノがなければ掃除もしやすい。なにより浸水したとしても荷物が無事。いいことしかない。ひとつめの有孔ボードから取り掛かろう。
定番の有孔ボード
木枠を作って有孔ボードを貼り付け、そのまま壁に固定する。壁はコンクリートなので、コンクリートビスで固定する。年季の入った振動ドリルをメルカリで買い(2500円くらい)穴をあけた。これ以上水漏れが増えたら大変なので慎重に穴をあけて取り付ける。
えいや!と気合で買ったので、全然有効ボードと穴の位置があわなかったが、追加で穴をあけ無理やり固定した。定番の収納だが、見える範囲に工具があってすぐに取り出せるのはめちゃくちゃ快適だ。
つづいては、電動工具をかける棚
海外のDIY動画なんかをみていると、この手の電動工具収納がよく出てくる。とてもうらやましかったのだ。作り方は普通の棚を作るのと大きく変わらない。棚板だけちょっと特殊で、ホールソーで穴をあけてから直線に切り込みを入れて加工する必要がある。
さいごは、2×4の突っ張り収納
有孔ボードの固定方法とおなじく、コンクリートビスでL字金具を固定してそこに棚板を取り付けるのでもよかったのだが、壁にボコボコと穴をあけるのも水漏れ的にやばい気がして、突っ張り棒方式とした。人気のラブリコなどの突っ張り棒を使ってもよいのだが、いかんせん高い。調べていたら、ボルトとワッシャーとナットだけでなんとかなるらしい。材料を揃えよう。
完成した突っ張り棒を天井に押し当て、スパナ2本で締め上げる。材料でいえば、ひとセット100円もしない(座ぐりビットは700円くらいするが)。安いし見た目もシンプル。とてもおすすめである。
突っ張り棒の応用
作っている途中で、これ、2×4材である必要もないのでは?と気づき、家に欲しかった棚を杉板で作った。2×4材は家の中に置くのちょっと気がひけるが、杉材だと気にならない。
棚板自体が構造材を兼ねているのもいい。ゲーム機やPC本体などわりと重めのものを置いても今のところ大丈夫そう。
ガレージをしあげるぞ
この突っ張り方式、安くて気兼ねなく量産できるのがとてもいい。あとは収納箱(キャスターをつけたら便利)を作ったり、スプレー棚を作ったり、細々と収納を増やしていった。
黙々と収納を増やし続けた結果、大きな失敗もなくアトリエらしきものになった。完成した姿がこちらである。
会社に入社したとき、将来のビジョンを聞かれ、アトリエがほしいと答えたら、人事の人が悲しそうな顔をしていたが、ついに夢がかなった。
嬉しい反面、頭の片隅に水浸しの地下牢がよぎる。が、これはこれでいいのだ。人生30も過ぎれば、ダメなところも全部ふくめて楽しく生きていくしかないのだから!おらー!
念願のガレージだ!
コンクリートの打ちっぱなしや配管まるだしのインダストリアル的なデザインはブルックリンスタイルなんて呼ばれて人気である。我が家に完成したガレージに関して言えば、おしゃれ……というよりは、今にも謎のジジィが「抱けェ!抱けェ!」と言ってきそうな佇まいである。でも、いいのだ。夢がかなったのだから。これでいいのだ。いいんですよ……
(先ほど偉そうなことを書きましたが、水漏れをとめる方法をご存知の方がいらっしゃいましたら、こちらまでお教えいただけますと幸いです……なにとぞよろしくお願いいたします)